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法律連載
第一弾 訪問販売をよく知ろう!

訪問販売で迷惑している人はたくさんいます。確かにセールスの人もノルマとかで大変かもしれませんけど、限度があります。
第一弾では、「特定商取引に関する法律」の観点から訪問販売について見ていこうと思います。

第一回目
 突然訪れる訪問販売。
特定商取引に関する法律はまさに、突然・・「不意打ち」からもたらされる被害を防ぐために訪問販売業者に多くの規制、消費者には幾つかの救済方法が規定されています。
訪問販売とは文字のとおり、売り手が自宅等に突然訪問し、商品等を売るということです。したがって「不意打ち」性の観点から、こちらから自宅での取引を依頼したときは訪問販売における法律の規制から除外されてしまいます(例外あり)。
訪問といっても、自宅での取引だけでなく、相手の営業所以外での場所での取引、また、相手の営業所で取引する場合になった場合でも、法律上、訪問販売とされる場合があります。
例えば、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させたこと。
いわゆるキャッチセールスの場合。外で呼び止められて、営業所等に連れて行かれ、取引をしてしまったときも訪問販売とされます。
次に、商品販売の勧誘をする目的を告げずに営業所等への来訪を要請すること。いわゆるアポイントメントセールスの場合。はがきなどで何の記憶もないのに、抽選でプレゼントが当たりましたので取りに来てください。と書いてあり、呼び出され、いきなりそこで商品の取引をしてしまったときも訪問販売とされます。
もうひとつ、他の者に比して著しく有利な条件で購入できる旨告げて営業所等への来訪を要請すること。これもアポイントメントセールスといわれています。「貴方だけ特別有利に」という文句で、営業所等への来訪を要請し、取引をしたときも訪問販売とされるのです。
これらは全部、消費者にとって「不意打ち」であり、買うつもりがなかった消費者を守るため、訪問販売と規定し、法は幾つかの救済方法を定めているのです。
 ここで注意しなくてはいけないのは、訪問販売で取引されるすべての物(商品)が法律上、救済されることにならないということです。
特定商取引に関する法律では、いわゆる指定商品制*1をとっています。政令で定める物品・権利・役務だけが法規制の対象とし、それ以外は法の適用を除外するというのです。つまり、政令で定めれれていない商品の訪問販売では、普通ならあるクーリング・オフもできないということです。

 (*1 2009年12月からは、指定商品制から、例外を除いて原則すべての商品、サービスが対象となります。権利は従来通り、政令指定。)

第二回目
 それでは、特定商取引に関する法律における消費者保護について書いていこうと思います。
 最初に、訪問販売により契約の申し込みがあったときに事業者には一定の事項を記載した申込書面を消費者に交付する義務があり、それに加えて、契約が締結したときには、事業者は一定の事項を記載した契約書面を交付する義務があります。
 以上のことを踏まえて、消費者保護の第一番、「クーリング・オフ」について説明していこうと思います。
 クーリング・オフは「クーリング・オフが出来る」という内容が記載された契約書面を交付された日から8日間できることになっています。ここで注意するべきなのは、「クーリング・オフが出来る」という内容が契約書面に記載されていなかったら、そのことを書いている契約書面をもらうまで、クーリング・オフはできるということです。つまり、そのことを書かれた契約書面をもらうまでは実際の取引の3ヵ月後だろうとクーリング・オフは出来ることになります。また、事業者側に法定に記載された事項の契約書類を交付する義務を負わせるため、法定事項の記載のない(不備書面)の場合は、きちんとした契約書面をもらうまで、消費者はクーリング・オフをすることが出来ることになっています。
 クーリング・オフは基本的に書面でしなければなりません。ただし、このとき後日紛争が生じないよう内容証明郵便(配達証明付)で相手側に送ることをお勧めします。普通の手紙の場合は、相手側から、そんな手紙とどいてないぞ、と言われたとき、本当に送っていたとしてもそのことを実証できなければ、クーリング・オフをしていないことになり、その間に期間の8日間が過ぎてしまうことがあります。ですから、最低でも送ったことを証明できる方法を用意しておかないと、後々問題となるかもしれないことを知っておいてください。クーリング・オフの効力の発生時期はクーリング・オフの書面を発信したときです(法律用語で発信主義)。つまり、権利行使期間内に発信したことが証明できれば、相手側にその書面が到達した日が9日目以降であっても、クーリング・オフの効力は妨げられないということです。

第三回目
 さて、クーリング・オフをするとどうなるのでしょうか?
申込の撤回の場合は、契約未成立のまま解消することとなり、契約成立後の場合は、消費者は未払い代金を支払う義務がなくなり、支払済みの代金および引渡し済みの商品はそれぞれ返還することとなります。
その他、幾つかの効果も発生するので列挙します。
1.相手側は、消費者に解除等に伴う損害賠償、違約金の支払を請求できない。
2.消費者が受け取った商品等の返還のときの費用は、販売業者が負担する。
3.役務提供契約(例・英会話教室など)については、履行済みの役務の対価やその他の利益を消費者が支払う義務がない。
4.契約に関して支払った金銭は消費者が返還を請求できる。
5.工作物の原状回復費用は事業者が負担する。
・・・以上のようにクーリング・オフは消費者保護を徹底しています。クーリング・オフにより既に支払った金銭は戻ってくるので、消費者が損害を受けることはほとんどありません。うまく利用してください。
 商品を使用・消費するとクーリング・オフができなくなるという話を聞いたことがあるかもしれません。次はそれについて、少し見ていこうと思います。
 使用・消費するとクーリング・オフが出来なくなる商品は政令で指定されています(指定消耗品)。例えば、化粧品、洗剤、壁紙、生理用品などが政令で指定されています。
指定消耗品の使用・消費でクーリング・オフが出来なくなるには、次の条件を満たしたときです。
1.契約のとき交付された書面に「その商品を使用・消費するとクーリング・オフができなくなる」旨を記載されていること。
2.消費者が、実際にその商品を使用し又はその全部若しくは一部を消費したとき。・・・・・このとき注意するべきことは、単に商品の包装を解いた程度では商品の使用とはされません。また、契約の勧誘で販売員が消費者に使用させたような場合もクーリング・オフの権利はなくなりません。
もう一つあまり知られていないことがあります。
それは、商品の使用・消費によりクーリング・オフが出来なく範囲は、購入した商品全部ではなく、当該商品について通常販売されている商品の最小単位が基準になることです。つまり、残りの商品が単品として販売可能なものなら、販売業者がこれをセット商品として扱っていても、クーリング・オフは可能とされています。

第4回目
 クーリング・オフ以外の訪問販売に対する救済について見ておこうと思います。
まず、「特定商取引に関する法律」にある訪問販売の禁止行為に“不実の告知の禁止”があります。
 不実の告知の禁止・・・契約締結の勧誘に際し、または契約解除を妨げるため、消費者の判断に影響を及ぼす重要事項につき不実のことを告げてはならない・・・ということで、具体的には「法律上の設置義務がある(消火器・実際にはない)」とか「アルミ鍋は有害である(ステンレス鍋)」、「通産省が設置するように決めた(ガス漏れ警報機)」などで、これらは真実ではなく、そして、このようなことを聞かなければ契約を締結しなかったような消費者の判断に影響を及ぼす重要事項の場合には次の救済方法が考えられます。
1.消費者契約法4条による取り消し
2.錯誤無効、詐欺の取り消し
3.契約締結上の過失による解除 など

 次に同じ訪問販売の禁止行為に“威迫行為の禁止”があります。
 威迫行為の禁止・・・言語・動作・態度により、相手方に不安・困惑の念を抱かせることをしたはならない・・・ということで、具体例として「買ってもらわないと困ると声を荒げられて、誰もいないのでどうしていいのか分からなくなり、早く帰ってもらいたくて契約した」場合や「ことさらに入れ墨を見せられて、怖くなって契約した」などです。この場合に救済方法として次が考えられます。
1.消費者契約法4条による取り消し
2.強迫の取り消し

 その他“重要事項の不告知”として「消費者の判断に影響を及ぼす重要事項につき、故意に事実を告げないこと」があります。故意にが重点である意味詐欺に近いものです。救済としてそのことにより契約を締結しなかった場合は、消費者契約法により取り消せるし、錯誤無効や詐欺取り消しなども主張できる場合があります。最後に(キャッチセールスなどの)つきまとい行為により無理やり契約を締結させられた場合にそのつきまとい行為が甚だしく違法とされる場合は、公序良俗違反の無効、契約締結上の過失のよる解除、また、不法行為による損害賠償請求などの救済が可能と考えられています。


あとがき
 訪問販売で泣くのは消費者であります。被害を受けても我慢するしかありません。しかし、クーリング・オフ以外にも幾つかの救済方法があり、場合によっては被害を防止できるのです。今回の連載で訪問販売で困っている人の“救済”の糸口になってくれれば幸いです。

      (完)      2003年4月15日


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