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法律連載
第二弾
   借地借家法から借地に関して

 不動産等の貸し借りはその状況から見て、圧倒的に貸す方が有利であります。例えば、借りる方は生活の観点から貸し手の無茶な注文にも応じなくてはいけないことになってしまいます。それでは、あまりにも借り手が可哀想なので、借り手に有利な保護を与えるため、借地借家法が定められています。今回は借地借家法の借地に関しての規定を見ていこうと思います。


第一回目
 まず、実際の中身に入る前に借地借家法の適用範囲を見ておく必要があります。
他人の所有する土地や建物を利用するための権利は民法上にいくつか定められています。
 @地上権・・工作物・竹木を所有するために、他人の土地を使用する権利。物権の一つ。
 A永小作権・・小作料を支払って、他人の土地で耕作又は牧畜をする権利。物権の一つ。現在はほとんど使われていません。
 B地役権・・自己の土地の便益のために、他人の土地を利用する権利。物権の一つ。例えば、自己の持ち物の畑への引水のために、他人の持ち物の池を利用すること。
 C使用貸借・・債権。無償で他人の物を使用・収益するための契約。
 D賃貸借・・債権。賃料を支払って、他人の物を使用・収益するための契約。

 このうち、借地借家法が適用されるのは、@地上権とD賃貸借で、建物を所有する目的での地上権と土地賃借権、建物賃借権に限定して適用されることになっています。(法律用語で借地借家法は民法の特別法になる)

 今回は借地に関してなので、借地の場合の適用範囲としてもう少し細かく見ておきます。
 借地の場合で借地借家法が適用されるのは(借地借家法が適用されない場合は民法を適用)、「建物を所有する」ことを目的とした借地の場合だけです。つまり、住宅、店舗、工場などの建物を所有するために借地権を設定した場合にこの法律が適用され、その他、駐車場、グランドとして利用するために他人の土地を借りた場合は借地借家法は適用されないのです。
「借地権」の定義として、法律で次のように定められています。今まで書いてきたことをまとめたものです。
「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。」

 もう一つ、借地借家法の内容に入る前に、基礎知識として民法の賃貸借について見ておこうと思います。
 賃貸借とは、賃貸人(貸す人)がある物を使用・収益させることを約し、賃借人(借りる人)がこれに対し賃料を支払うことを約することにより成立する契約のことです。口約束でも成立する契約で(土地建物の賃貸借の場合は契約時に契約書を作成することが多い)、その物を渡してから契約が成立するわけではありません。(法律用語で諾成契約という。反対語は要物契約・お金を借りるときなどの消費貸借は要物契約。)
 賃貸借の契約が成立しますと、賃貸人及び賃借人に民法上一定の義務が発生します。
 賃貸人の義務として
  @目的物引渡義務・・当たり前ですが、貸し手は借り手にその貸す物を引き渡さなければなりません。
  A賃借人の使用、収益を妨げない義務・・不法な方法での妨げは責任を負うことになります。
  B妨害排除義務・・全く関係のない第三者が賃借人への物の使用収益を妨害している場合は、賃貸人はこれを排除する義務があります。
  C修繕義務・・賃借物の使用収益に必要な範囲で修繕する義務があります。例えば、建物を借りたときに既に窓ガラスが割れてなかった場合などのときは、貸し手に修繕する義務があります。
  Dその他、費用償還義務があります。賃借物の保存の必要費は賃貸人が払うことになっています。

  賃借人の義務としては
   @賃料支払義務・・当たり前ですが、契約どおり借り手は賃料を支払う義務があります。
   A用法遵守義務・・借り手は契約またはその賃借物の性質によって定まる用法に従ってその物を使用収益する義務があります。例えば、借りた部屋を必要もなく破壊したり、全く掃除せずその部屋に悪影響を与えてしまう場合などはこの義務に違反することになります。
   B賃借物保管義務・・借り手は善良なる管理者の注意をもって目的物を管理する義務があります。これは、自己の持ち物以上にさらに注意してその物を管理しなくてはいけないということです。これに関連して、借りた物に修繕が必要なとき、また、その物について他に権利を主張する者がいるときには遅滞なく、賃貸人に通知しなければいけません。また、賃貸人が修繕など目的物の保存に必要な行為をするときは、賃借人はこれを拒むことは出来ないことになっています。
   C目的物返還義務・・契約終了後、賃借人は借りたときの状態に戻して、返還する義務があります。
 その他、賃借人は賃貸人の承諾がなければ、賃借物を第三者に譲渡、また転貸(又貸し)できません。
 
 このような賃貸人・賃借人の義務は借地また借家の賃貸借にも当然、当てはまります。
 次回からは、実際、借地借家法の中身に入っていきます。
(*2003年5月2日)
<ちょっとした話>
 民法上、土地と建物は別個の不動産となっています。建物を借りるときは、その建物のある土地が自分の物でない限り、一緒に土地も借りることになるのです。土地があっての建物で、空中に建物が浮かんでいるということはまずありませんから。

第二回目
 借地借家法上の用語として借地権者(いわゆる借主です)と借地権設定者(いわゆる貸主です)を知っておいてください。これからはこの用語を使って説明していこうと思っています。
 また、一つだけ注意しておいてほしいのは、借地借家法が施行される前に締結された借地・借家に関しては借地借家法ではなく旧借地法及び旧借家法を原則適用することになっています。ちなみに現借地借家法が施行されたのは平成4年8月1日です。
 
 では、中身に入っていきます。
 借地の期間は自由に決めても良いのかという問題があります。
 そこで、法三条に最低の借地期間が定められています。ここでは、最初の借地権の存続期間は30年とされています。つまり、契約書で借地期間を10年と定めたとしてもそれは無効となり、借地期間は30年とされるのです。旧借家法も含めて借地期間の比較を表にしておきます。

借地期間の比較 期間の定めがある場合
  最短  ・  最長
期間の定めがない場合
旧借家法(堅固建物)
      (非堅固建物)
  30年  ・ 無制限
  20年  ・ 無制限
60年
30年
借地借家法   30年  ・ 無制限 30年

 旧借家法では堅固建物(コンクリート造りなど)と非堅固建物(木造など)で分かれていましたが、借地借家法ではこの区別はなくなりました。

 次に最初の借地期間が過ぎた後はどうなるのかという問題が出てきます。貸主借主の話し合いによって契約の更新を決めるのが普通なのでしょうが、借主は借地上に建物があるときに限り、更新の請求ができます。また、更新の請求をしなくても、借地権者(借主のこと)の継続使用に関し、借地権設定者(貸主のこと)が遅滞なく異議を述べなかったときも、更新したこととみなされます。
 ここで大切なのは、借地権設定者は借地権者の更新に対し異議を述べるときには正当事由が必要とされているところです。つまり、正当事由がないと、借地権者の更新に対し、借地権設定者は拒否できません。その正当事由がどういうものかと言いますと、借地権設定者(貸主ですが)がその貸している土地を使用する必要が出てきた場合などです。その土地の使用の必要性ですが、貸主・借主の事情や契約上の義務の履行のなどを考慮して、土地の使用の必要性が正当事由として認められるのか決まります。ただ単にその土地が必要になったというぐらいではここでいう正当事由とはされないのです。

 更新しますと、その後の借地期間はどうなるのでしょうか?これも、法律で決まっています。これも旧借地法も含めて表にしておきます。

更新後の借地期間の比較 更新後の借地期間
旧借地法(堅固建物)
      (非堅固建物)
30年
20年
借地借家法(最初の更新)
        (二回目以降)
20年
10年

 契約で上記表より長い期間を定めたときはその期間になりますが、それ以外は法定の期間になります。


 借地期間中に借地上の建物が災害などで無くなってしまったときは、借地関係はどうなるのでしょうか?実は、最初の借地期間と更新後とでは、この場合の扱いが少々異なっています。
 最初の借地期間中に建物がなくなった場合でも、借地権は消滅しません。したがって、借地権者は建物を再築することができます。しかし、建物再築後の借地期間は原則、借地期間の残存期間とされており、場合によっては、損をすることもあります。そのために法律では、借地権設定者の承諾を得ることによって借地期間を承諾の日(建物再築の日と比べて早い方)から20年とすることが出来るようになっています。承諾を得られなかった場合は、その後の借地期間は残存期間になります。
 更新後に建物がなくなった場合は、借地権者は地上権の放棄・賃貸借の解約を申し入れをすることができることが法定されています。また、借地権者は建物の再築をすることもでき、その場合の借地期間も原則、残存期間です。また、先ほどと同じく借地権設定者の承諾を得ることによって、借地期間を承諾の日(以下同じ)から20年とできることになっています。しかし、承諾を得ずに残存期間を超える建物を再築したとき、更新後の場合は違った扱いをしています。つまり、承諾を得ずに残存期間を超える建物を再築した場合、借地権設定者は借地権者に対して地上権の消滅の請求、賃貸借の解約を申し入れをすることができ、その申し入れがあるとその日から3ヵ月後に借地権は消滅することになっています。ただ、この借地権設定者の権利を悪用されないために、理由もなく借地権設定者が承諾しない場合は、借地権設定者の承諾に変わる裁判所の許可の申し立てができ、裁判所が許可しますと、借地権設定者の承諾を得たのと同じような結果を得ることができることになっています。
(*2003年5月9日)

第三回目
 土地を借りて、その上に家を建て住んでいたところ、いきなりその土地の所有者が別の人(第三者)に土地を売った場合で、その第三者から土地の引渡しを請求された場合、土地を借りている人は土地を引き渡さなくてはならないのでしょうか?もしそうなれば、土地を借りている人は家も手放すことになり、明日からの住む家にも困ることになります。このような第三者にも権利を主張できることを「対抗力」といいますが、対抗力があると、急な土地の引渡しにも権利を主張して拒むことが出来ます。
そこで・・・土地の賃貸借にはこの「対抗力」はあるのでしょうか?が問題になります。地上権による借地の場合は問題ありません。難しいかもしれませんが、地上権は物権で排他性(その物から他人を排除して物権者の独占支配を許す性質)がありますから、借地権者(借主)は急な土地の引渡しに対抗できます。
しかし、賃貸借による場合はこうはいきません。賃貸借は債権で排他性がありません。つまり、第三者からの引渡しには、なにかの要件がないと対抗できないことになります。過去は、借地権者が住んでいる土地が第三者に売り渡され、その新所有者から立ち退きを請求された場合、借地権者は建物を取り壊して土地を引き渡さなくてはいけませんでした。いわゆる「売買は賃貸借を破る」というものです。これでは、借地権者(借主)は堪ったものではありません。そのために、借地借家法では借地権の対抗力についてある定めがしてあります。
その前に、民法上にも賃貸借の対抗力についての定めがあります。それは、不動産賃借権を登記すれば、以後その不動産について権利を取得した者に対し賃借権を対抗できるというものです。しかし、この不動産賃借権の登記をする時には相手側(貸主)の協力が必要で、貸主が登記の協力を反対したら、借主はどうしようもありません。こういうこともあり、この民法の規定はあまり使われていません。
そこで、借地借家法ですが、法10条に借地権の対抗力について定められています。どういうものかと言いますと、「借地権はその登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これを持って第三者に対抗することができる」・・・つまり、賃貸借の登記がなくても、借地権者(借主)の所有の建物に登記があれば、借地権者は借地権の対抗力を持つことが出来るということです。
登記されている建物を所有することで、第三者による突然の土地の引渡しにも、借主は拒むことが出来ます。
 もうひとつこの10条には、借地権者の住む建物が火事などにより滅失した場合、借地権者がその建物を特定するために必要な事項、建物が滅失した日付及び建物を再築する旨を記載した立て札をその土地の見やすい場所に掲示すれば、二年以内に新しい建物を再築し登記する間、借地権者は借地権を第三者に対抗できる旨が規定されています。


 次は、地代についての話に入ります。
借地権者は、借地を利用する対価として地代(賃貸借の場合は土地の借賃ともいいます)を支払わなければなりません。しかし、その時の景気や付近の地代との比較からして契約中、ずっと同じ金額を支払うのは、おかしいと言うべきでしょう。そのために借地借家法では一定の事情がある場合は、地代等の増額請求、また減額請求を出来る旨が定められています。
 一定の事情とは
 1.土地に対する租税その他の公課の増減
  →固定資産税などの金額の変化のこと
 2.土地の価格の上昇、低下、その他の経済状況の変化
 3.近所の類似の土地の地代等に比較して不相当と考えられる場合
・・のことでこういった事情があれば、契約書の定め如何に問わず、借主・貸主とも地代の増減請求ができることになっています。
 例えば、AさんはBさんからバブル期に月10万円の地代で土地を借りたとします。しかし、現在不景気で10万では割に合わないということで、上記一定の事情の2を主張することでAさんはBさんに地代の減額請求ができます。
この請求権は相手側が承諾していなくても効果が発生する強力な権利です。ただし、この効果が発生するのは妥当な範囲のことで、その額について当事者で話し合いがつかない場合は裁判で決めることになります。地代等の増減請求の裁判は調停前置主義がとられ訴訟の前に必ず調停を申し込まなければならないことになっています。
 例の話でAさんは地代を月7万円にしてくれとBさんに請求しました。しかし、Bさんは月8万円が妥当だということで話し合いがつかず、裁判所への調停へと話が進みました。しかし、裁判が確定するのは相当の日数がかかります。その間はAさんはBさんが妥当だといった額月8万円を支払わなければなりません。その後、裁判が確定してAさんの月7万円となりました。その場合はBさんはその間の地代の超過分に年一割の利息をつけてAさんに返還しなくてはなりません。Aさんが3ヶ月の間、月8万円払っていたとしたら、Bさんは超過分・・つまり3万円に年一割の利息をつけてAさんに返還しなくてはならないということです。

 もう一つ、例として固定資産税の増加によりCさんはDさんに地代の増額を請求しました。現在、月5万円の地代を7万円にするという請求です。しかし、Dさんはそれは高いじゃないかということで6万円が相当だということで、話し合いがつかず裁判所へと持ち込まれたとします。その間、Dさんは自分が相当と思った額6万円を支払えば、債務不履行にはあたりません。Cさんが受け取らない場合は供託すればいいわけです。その後、Cさんの月7万円のほうに決まりました。その時はDさんは不足額に年一割の利息をつけてCさんに支払わなければならないことになっています。
 (*2003年5月16日)

 第四回目
 建物買取請求権。
借地期間が満了した後、借地の更新が為されない場合の規定です。
 もし借地の更新がされない場合、借地権者(借主)は、その土地の利用権がなくなりますので、はっきり言いますと、その土地を不法に占拠していることになります。なので、その土地の所有者から、土地の明渡しを請求されたら、借地権者は建物を取り壊し(賃借人の目的物返還義務・・原状に戻して返還する)、更地にして土地を渡さなければなりません。
しかし、建物を取り壊すことは、なにかと経済的損失をこうむります。また、多額の金額で建築した建物を何の救済もなく簡単に壊すのも、借地権者から見れば納得いかないでしょう。
そのために借地借家法では、借地の更新がなかった場合、借地権者(借主)は借地権設定者(貸主)に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に付属させた物を時価で買い取ることを請求できるとしています。
この請求権を借地権者が行使しますと、借地権設定者の承諾がなくても当事者間に建物等の売買契約が成立したのと同一の効果が発生します。
 例えば、借地権者Aさんが30年前、Bさんから30年の期間で土地を借り、その土地に一億円の建物を建築しました。このとき、30年後借地期間の満了の時、更新されなかった場合、Aさんはその建物を時価2000万円(とします)で買い取ることをBさんに請求できるというものです。これによって売買契約が成立したのと同一の効果が発生しますので、Aさんは建物の引渡し義務及び登記移転義務を負い、Bさんは代金の支払い義務を負うことになります。
 ただし、当事者が借地契約を合意解除した場合や借地権者の債務不履行により契約を解除された場合は、この建物買取請求権は行使できないことになっていますので注意してください。

 第三者の建物買取請求権
ある人(第三者)が借地権者から建物等を購入した場合において、借地権設定者がその土地の賃借権の譲渡または転貸を承諾しないときに第三者が行使できる権利です。
 他人の土地を借りている借地権者が第三者に譲渡する場合は、譲り受けた者の土地利用権を確保するために建物の譲渡にあわせて、土地賃借権を譲渡または転貸しなければならないことになっています。そうしないと、たとえ建物を購入したといっても第三者は、その建物がある土地を使用することに関し、何の権限もありません。よって、土地の所有者から土地の明渡しを請求された場合は、その第三者はせっかく買った建物を取り壊し、その土地を引き渡さなくてはならなくなります。また、土地賃借権の譲渡または転貸は土地所有者(貸主)の承諾を得なければなりません(またはそれに代わる裁判所の許可)。借地権者は無断で土地賃借権の譲渡または転貸をすることが出来ないということです。
したがって、貸主が土地賃借権・・・借地権の譲渡等を承諾すれば何の問題もないのですが、承諾しないときは、借地権上の建物を購入した第三者から見れば建物を使うことも出来ず、さらに土地の引渡しを請求されたら、建物を壊さなくてはならなくなり、大損です(もちろん、その建物を売った借地権者には第三者がその建物を利用できるようにする義務がありますので、第三者は借地権者に対しその売買契約の解除、損害賠償の請求等ができる場合があります)。
 借地借家法では、こういう場合の譲受人(第三者)が借地権者設定者(貸主)に対し、建物等を時価で買い取ることを請求できるとしています。先ほどと同じように、第三者がこの請求権を行使しますと、当事者の間で売買契約が成立したのと同じ効果が発生します。
 (*2003年5月23日)

 第五回目
 契約書に定められたことは、当事者の協議によって変更することは可能です。しかし、借主がどうしても必要なのに貸主が何の理由もなく、契約の内容の変更等に応じない場合は、借主からすれば泣き寝入りする場合も出てきます。
例えば、借地の契約に借地上の建物の増改築禁止の特約があったとします。この特約は借地権設定者(貸主)の承諾がなければ建物の増改築はできないという内容です。この場合に、借地権者(借主)が増改築の必要が出てきたので、借地権設定者に増改築の承諾を求めたところ、借地権設定者は認めようとしなく、どうしてもというのなら非常に高額の承諾料を払えと言ったとします。こうなると借地権者はたまったものではありません。承諾を得ずに勝手に増改築を行うと、場合によっては契約違反・・債務不履行ということで契約を解除されかねませんし、多額の承諾料を支払うのも割に合わず、借地権者は結局、泣き寝入りすることになります。
しかし、法律ではこういう場合に対する備えが定められています。上記の例のように当事者の協議が調わないときは、裁判所は申し立てにより、借地権設定者に代わる許可を与えることができる、という定めがあります。この裁判者の許可を得ますと借地権者も問題なく増改築ができ、一方的に泣き寝入りすることもありません。
借地借家法上、上記の増改築禁止の特約など、ある一定の場合における協議が調わないときに裁判所に許可等を得ることができる規定があります。
上記の増改築禁止特約の場合もそうですが、申し立てがあったとしても、裁判所は必ず許可を出すわけではなく、色々な事情を考慮した上、許可を出すかどうかを決めることになっていることには、注意しておいてください。借地借家法に定められている裁判所の許可等に関連する事柄は次のとおりです。

1.借地条件の変更
2.増改築禁止特約がある場合の借地権設定者の承諾に代わる許可
3.借地契約更新後の建物の再築における借地権設定者の承諾に代わる許可
4.土地の賃借権の譲渡又は転貸における借地権設定者の承諾に代わる許可
5.建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡における借地権設定者に代わる許可

先ほども書きましたがそれぞれ、色々な事情を考慮した上で裁判所は許可等を決めることになっています。



最後に強行規定について見ておこうと思います。
強行規定とは、ある法律に定めに反するものは無効というもので、例えば、借地期間を5年とする借地契約は借地期間は最低30年とする強行規定に反し無効になります。
借地借家法には、一部の規定を強行規定としており、その規定に反する特約で借地権者(また借家人)に不利なものは無効としています。ただ、この場合はその特約だけが無効となり、契約全体が無効となるわけではないことに注意してください。強行規定により無効となる特約を一部挙げておきます。

○最初の借地期間を30年未満とする特約・更新後の借地期間を10年(一回目は20年)未満とする特約。
○借地権者が死亡したときは、借地を明渡さなければならないとする特約。
○借地権設定者が解約を申し入れれば、一定期間の経過により借地権が当然に消滅するという特約
○更新を認めない特約
○合意更新以外は認めない特約
○借地借家法上の借地権の対抗力を排除する特約
○借地借家法上の建物買取請求権を排除する特約
○増改築禁止特約がある場合の借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可を申し立てないとする特約
 など。



  あとがき
 借地借家法は借り手に有利な保護をたくさん与えています。しかし、法律を知らないために結局損をすることもあるでしょう。難しい用語も使い、分かりづらいところもあると思いますが、今回の内容によりこれからは、「損を得に変える」ことが出来れば嬉しい限りです。
 機会がありましたら、借家に関することも書こうと思います。その時は、またよろしくお願いします。

               2003年5月30日

 ○追加
 *定期借地権
 定期借地権とは、一定の借地期間が満了すれば、更新されずに必ず土地が土地所有者に返還される借地権のことです。
 この定期借地権には三つの種類があります。

存続期間 利用目的 特約事項(但し、期間は除く) 契約方式 借地の終了
長期定期借地権 50年以上 制限なし 更新・再築による期間延長・建物買取請求権に関する各規定の適用排除 公正証書などの書面 期間の満了
建物譲渡特約付借地権 30年以上 制限なし 30年以上経過後に借地権設定者に相当の対価で建物を譲渡すること 制限なし 建物の譲渡
事業用借地権 10年以上20年以下 事業用建物の所有 期間以外に特になし 公正証書 期間の満了

 *一時使用目的の借地権
 短期間の一時使用のための借地権の場合と認められるときは、借地期間の強行規定など借地借家法の幾つかの規定が適用されないことになっています。
 この一時使用目的、と判断されるか否かは、期間の長短のほか、目的、態様等その他の事情によって判断されることとされています。
 例として、短期間の使用となる選挙事務所、博覧会などの建物所有の借地権が一時使用の借地権に当てはまると思います。



                  (完)

           


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