●扶養 (民法877条〜881条)


 ○扶養の考え方
 ・私的扶養が公的扶養に優先する。
⇒人は自らを養うのがたてまえであり、自らを養うことができないときは、まずは民法上の扶養義務によって解決し、それでも解決できないときは、公的扶助により解決なされることになります。


 ・扶養する義務は、生活に余裕のある限りにおいて(生活扶助義務)。
⇒夫婦、未成熟の子に対する(一杯のご飯をも分かち合う義務)つまり、「生活保持義務」とは違い、子の老親に対する扶養義務、兄弟姉妹間の扶養義務は、余力のある程度ですれば足りることになっています。


 ○扶養義務者
 直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養をする義務があります。
また、それ以外の3親等内の親族間で、特段の事情があるとして、家庭裁判所より扶養の義務があるとされた者も、扶養の義務を負うことになります。

 ○扶養の順位
 扶養のする義務がある者が数人いる場合において、扶養すべき者の順序は、まず当事者間の話し合いで決めることになりますが、話し合いがつかないとき、できないときは、家庭裁判所が定めることになります(←家庭裁判所に請求)。

 ○扶養の程度・方法
 扶養の順位と同様、まずは、当事者間の話し合いで、決めることになり、話し合いができないときは、家庭裁判所に決めてもらいます。

扶養の順位・程度・方法について、当事者間の協議の後、また家庭裁判所の審判の後、事情の変更が生じた場合は、家庭裁判所はその協議または審判の変更または取消しをすることができます。

扶養の方法は、原則、金銭給付でありますが、現物給付や引取扶養という方法もあります。
しかし、要義務者から引取扶養を無理やり請求することはできないと考えられており、家庭裁判所の審判でも、引取扶養を嫌がっている人に、それを無理やりさせることはできないとされています。

立替扶養料の請求
一つの判例を掲げておきます。
「扶養義務者の一人が、他の扶養義務者に対し、自己の負担した過去の扶養料について求償する場合でも、各自の分担額は、協議が調わない限り、家庭裁判所の審判によって定めるべきであり、通常裁判所が判決手続で判定することは許されない。」
 ⇒立替扶養料の請求も認められる余地があります。
また、この場合、特別寄与として、相続のときに過分にもらうという考え方もあります。

扶養する義務は、一身専属のもので、処分することはできません。
(扶養する権利は、強制執行において差し押さえを制限または禁止されており、相殺の受動債権とすることもできません。また、通常、相続の対象にもなりません。)


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