□親子の法律

●実親子関係(自然血族関係)
養子
親権


●実親子関係(自然血族関係)民法772条〜791条

 *母子の関係 ⇒自然血族上の母子関係の存在は、懐胎(かいたい・胎内に子供を宿すこと)・分娩(ぶんべん・出産すること)という事実から明確にすることができるから、母と嫡出でない子との母子関係は、原則として、母の認知を待たず、分娩の事実により当然に発生するとされています。
 ⇒民法779条には、母の認知に関する規定が存在しますが、これは、棄子や迷子のように、懐胎・分娩の事実の立証が不可能であるときのために存在するものと考えられています。

 ○嫡出の推定
 民法772条によると、
@妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
とあります。
また、
A婚姻成立の日から200日後または、婚姻解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
ことになり、夫の子と推定されます。しかし、このAに関してはあくまで推定規定なので、例えば、婚姻解消の日から300日以内に生まれた子でも、懐胎時期が婚姻解消後であることが立証されるときは、その子について、@の夫の子の推定規定は働きません。

*@の「婚姻中に懐胎した」という言葉に注意。婚姻後に出生した子は、嫡出子でありますが、民法772条に該当しないということであれば、「推定を受けない子」となります。→親子関係の否定の方法が違う。

*また、婚姻中に懐胎した子でも、懐胎期間中に夫と肉体関係をもたなかったことが明らかな場合は、その子は、「推定の及ばない子」となります。


 ○嫡出の否認
 民法774条で、夫が子の父であるという推定(父性推定)を破ることを認めています。

$上記*による、「推定を受けない子」や、「推定の及ばない子」は、嫡出否認の訴えでなく、「親子関係不存在確認の訴え」で父と子の父子関係が存在しないことを確認できます。ということでこの場合は、嫡出否認の訴えと違い、利害関係人は誰でも、また何時でもその嫡出親子関係を覆すことができます。

否認の訴えの要件
 @否認の訴えをできるのは、母の夫だけ。
 A子または親権を行う母に対して訴えます。
 この否認の訴えは、夫が子の出生を知ったときから1年以内に提起しなければなりません。
 B夫が、子の出生後において、嫡出であることを承認したときは、この否認権を失います

 ⇒否認の訴えの原告(夫)は、夫と子の血液型、夫の生殖能力、懐胎期間中における同棲の実情、その他一切の事情からみて、子が夫の子であることの可能性が確実に存じないことを立証しなければならない、とされています。

 ⇒嫡出否認の判決が確定したときは、子は、出生のときから夫の子でなかったことが遡及的に確認されます。


 ○認知
 嫡出でない子、つまり、婚姻していない男女間において生まれた子を、自分の子として認めることです。
 認知は、戸籍法の定めるところにより、役所へ届け出ることにより行います。これは遺言によってもすることができます。

 $認知能力 父または母が未成年または成年被後見人であるときでも、その法定代理人の同意を要しません。
 $成年になった子を認知するのは、その子の承諾が必要です。
  また、胎児も認知できるが、その場合は、母の承諾が必要です。
 さらに、死亡した子でも、その直系卑属(その子の子、孫など)がある場合は、認知できます。でも、その場合は、その直系卑属が成年者であるときは、承諾が必要です。

 $認知の効力
 子の出生の時にさかのぼってその効力を有します。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできません。

 *認知をした父または母は、その認知を取り消すことはできません。
 *子その他利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができます。

 *認知に関して参考となる判例を幾つか掲げておきます。
「認知者の意思に基づかない届出による認知は、認知者と被認知者との間に、親子関係があっても無効である。」
「認知により法律上の親子関係が発生するには、血族関係にある父または母において認知することを要し、血族関係にない者を戸籍上嫡出子として届けても、これによって認知の効果を生じるものではない。」
「嫡出でない子につき、父が嫡出子として、また嫡出でない子として出生届をした場合で、受理されたときは、その届出は認知届としての効力を有する。」


強制認知
 親が認知しないとき、子、その直系卑属またはこれらの法定代理人は、認知の訴を提起することができます。ただし、父または母の死亡の日から3年を経過したときはこの限りではありません。

 ○準正
 嫡出でない子を嫡出子にするための制度です。
 789条により、2つの場合に認められます。
 一つめとして、婚姻していない父が認知した子は、そのままでは嫡出でない子ですが、その後父母が婚姻することで、嫡出子の身分を取得します。
 二つ目として、父母の婚姻中認知した子も嫡出子たる身分を取得します。例えば、婚姻前に生まれた子で、認知していない場合のときで、婚姻後、認知した場合です。


 ○子の氏
 民法790条によりますと、
 嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する(嫡出である子は、父母の氏を称することになる)。
 嫡出でない子は、母の氏を称する。
 ことになります。

 ここで、父母の離婚で、母が前の氏に戻る場合で、子の親権者が母だとしても、その子供の氏は何もしなければ、母の氏(前の氏)に変更されません。その場合は、791条の家庭裁判所の許可を得て、はじめて母の氏を称することができます。

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養子 (民法792条〜817条、特別養子 817条の2〜817条の11)

 △(普通)養子縁組

 ○成立要件
  @当事者間に養子縁組の合意意思があること。
  A法律上の縁組をするに必要な事項に違反していないこと。
  B形式的用件として縁組の届出をする。

 @縁組の合意意思がない場合は、無効です。

 例えば、養親となる方、または、養子となる方の知らないところで、養子関係が成立していた場合です。無効だとしても、戸籍が当然に訂正されるわけではないので、縁組無効の調停・審判などをして、戸籍の訂正をすることになります。

 A縁組をするにあたって必要な事項、禁止事項に違反する場合は、養子縁組届の受理はされません。万が一、受理されて場合は、取消原因となります。

 法律の事項
 T 養子をする能力(養親となれる者)
  「成年に達した者は、養子をすることができる。」
 (*未成年者でも、婚姻すると成年に達したものとみなされるので、養子を取ることができます。}

 ⇒違反した場合、例えば、婚姻したことのない未成年者を養親とする養子縁組をした場合、養親またはその法定代理人から家庭裁判所に取消の請求ができます。ただし、養親が成年に達した後6ヶ月を経過し、また追認したときは、請求できなくなります。


 U 尊属養子・年長者養子の禁止
 「尊属または年長者は、これを養子とすることができない。」

 ⇒違反した場合、例えば、自分より年上の人を養子とした場合は、各当事者またはその親族から、家庭裁判所に取消の請求ができます。


 V 後見人と被後見人の縁組
 「後見人が、被後見人を養子とする場合は、家庭裁判所の許可を得なければならない。(後見人の任務が終了した後、まだ管理の計算が終わらない間も同様。)」
 (*養子が未成年者の場合は、未成年者のとあわせ、2つの許可がいります。)

 ⇒違反する場合、許可を得ていない場合は、養子またはその実方の親族から、家庭裁判所に取消の請求ができます。ただし、管理の計算が終わった後、養子が追認し、または6ヶ月を経過した場合は、請求できなくなります(ここでの追認は、養子が成年に達し、または能力を回復した後でなければ、追認の効力はありません。)


 W 配偶者がある者の養子縁組
 @「配偶者のある者が、未成年者を養子とする場合には、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子にする場合、または配偶者がその意思を表示することができないときは、この限りではない。」

 A「配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合、または配偶者がその意思を表示することができないときは、この限りではない。」
 ⇒Aに違反する場合、同意をしていない者から、家庭裁判所に取消の請求ができます。ただし、縁組を知った後、6ヶ月が経過し、または追認したときは、請求できなくなります。詐欺・脅迫によって同意させられた場合も、一定の間で取消請求できます。

 
 X 代諾養子
 「養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって縁組の承諾をすることができる。」
(*離婚によって、監護者が別にいる場合は、監護者の同意がいります。この監護者の同意がない場合は、取消原因になります。)

 ⇒判例から、「無効な代諾養子でも、養子となる者が満15歳に達した後、明示または黙示の意思表示により追認すれば、有効な縁組となる。」

 Y 未成年者の養子
 「未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りではない。」
 (*代諾養子でも、つまり、養子となる子が15歳未満であるか否かに関わらず、家庭裁判所の許可が必要。)
 (*許可がされるかどうかは、子供の福祉の観点から判断。)

⇒違反する場合、無許可の場合は、養子、その実方の養親または養子に代わって縁組の承諾をした者から、家庭裁判所に取消請求ができます。ただし、養子が成年に達した後6ヶ月を経過し、または追認したときは、請求できなくなります。


 B縁組の届出がなければ、そもそも縁組が発生しません。

                              〜〜〜〜〜〜〜

 ○縁組の効果

 @ 縁組成立の日から、養子は、養親の嫡出子たる身分を取得します。
 A 養子と、養親の血族の間では、養子縁組成立の日から、血族間における同一の親族関係が生じます。
 B 養子と実方の親族の間では、何の影響も受けません(つまり、実方の父母の相続人になれます)。
 C 養子は、養親の氏を称します。ただし、養子となった者が婚姻の際に、配偶者の氏を称すると定めていたときは、その婚姻中は、そのまま配偶者の氏を称します。

                              〜〜〜〜〜〜〜

 ○離縁

 基本的な考え方は、離婚とよく似ています。
 離縁の届出が受理されることで、離縁は成立します。

 @協議離縁
 縁組の当事者は、協議により、離縁をすることができます。
 離婚と同じく、当事者に離縁する意思がない場合は、無効です。
 また、詐欺・脅迫によって離縁させられたときは、取消原因となります。
 
 *養子が15歳未満のときは、その離縁は、養親と、離縁後養子の法定代理人となるべき者のあいだで、協議することになります。

 A調停(審判)による離縁
 当事者の協議ができないときは、家庭裁判所へ請求して、離縁の調停等をいたします。

 B裁判離縁 ←家庭裁判所に訴えを提起。
 当事者の話し合い、また調停等を経ても解決がなく、それでも離縁する場合には、裁判による離縁判決が必要。
 <離縁原因>として
 1、他の一方から悪意で遺棄されたとき。
 2、他の一方の生死が3年以上明らかでないとき。
(1,2.一切の事情を考慮して、縁組の継続が相当と認めるときは、請求を棄却できる。)
 3、その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき。

 $離縁には、離婚のような財産分与の規定はありません。よって、離縁に伴う財産の清算は当然には認められません。相手側に責任(不法行為)があれば、慰謝料は請求可能です。


 ・離縁の効果
 @当然に、養親子関係は終了し、また、養子、その配偶者、直系卑属およびその配偶者と養親およびその血族との親族関係も終了します(民法729条)

 A養子は、離縁によって、縁組前の氏に復します。
  縁組の日から7年を経過した後に、離縁により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から3ヶ月以内に戸籍法の定めるところによって届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができます。

 B祭祀財産の承継者の決定
 養子が承継者になっていた場合は、当事者その他利害関係人の間で承継者を決定しなければなりません。当事者間で決めれないときは、家庭裁判所が決定します。

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 △特別養子縁組

 ○成立の要件  次のすべてに該当すること(および、特別養子縁組の必要性があること*)

 @養親は婚姻しており、夫婦が共に養親となること
 A養親は25歳に達していること(ただし、養親となる夫婦のもう一方は20歳に達していればよい)。
 B養子は6歳未満であること(ただし、養子となる子が8歳未満であって、6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合はこの限りではない)。
 C養子となる者の実父母の同意があること(ただし、父母がその意思の表示をすることができないとき、または父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りではない)。

⇒養親となる者の請求により、家庭裁判所の審判によって成立。
⇒(*)特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難または不適切であることその他特段の事情がある場合において、子の利益のために特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとしています。

$特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を6ヶ月間以上の期間監護した状況を考慮しなければならないことになっています。(この期間は請求の時から起算。ただし、その請求前から監護の状況が明らかである場合は、この限りではない。)


 ○特別養子縁組の効果
  @縁組成立の日から、養子は、養親の嫡出したる身分を取得します。
  A養子と、養親の血族との間では、養子縁組成立の日から、血族間における同一の親族関係が生じます。
  B養子と養子の実方の父母およびその血族との親族関係は終了します(養親の配偶者の嫡出子を養子とする場合は、その配偶者との血族との親族関係はこの限りではない)。
  C養子は、養親の氏を称する。


 ○特別養子の離縁

 原則、認められません。

 ・養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を害する事由があること。
 ・実父母が相当の監護をすることができること。
のいずれにも該当し、養子の利益のために特に必要であると認めるときは、家庭裁判所は離縁させることができることとされています。
⇒離縁した場合は、離縁の日から、養子と実父母およびその血族との親族関係が復活します。


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 ●親権(民法818条〜837条)

 親権を行う者は、子の監護(監督し、保護すること)および教育する権利を有し、義務を負います。
この親権は、親のためでなく、あくまで子のために使われなくてはいけません。

 ○親権に服する子
 
 親権に服する子は、成年に達しない子(未成年)に限られます。
←未成年の者でも、婚姻すると、成年に達した者にみなされるので、この場合は、親権から離脱します。


 ○親権者

 民法818条によりますと、
 @成年に達しない子は、父母の親権に服する。
 A子が養子であるときは、養親の親権に服する。
とあります。
 また、第三項では、親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ことになります(ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方がこれを行います。)

⇒親権者となる者は、積極的に「親たる身分に基づいて子の身の上に支配を及ぼす(監護教育できる)」ことのできる能力をもっていなければならず、したがって、親自身が未成年者や、被後見人・被保佐人の場合は、親権を行う能力がないとされています。
未成年者が親の場合は、規定があり、その未成年者の親が未成年者に代わって、親権を行うことになります(ただ、婚姻すれば、未成年者は成年に達した者にみなされるので、話は変わります)。
被後見人・被保佐人に対しては明文の規定はないですが、親権を行う能力がない(または制限される)と考えられているようです。

*養子縁組すると、親権者は、縁組によって実親から養親に移ることになります。


$上記にもありますが、親権の行使は、父母の婚姻中は、原則父母が共同して行います。(ただし、他の一方が、親権を行うことができないとき、例えば、後見開始の審判を受けた、行方不明、重病・精神病による長期入院、受刑中などのときは、他の一方が親権を行います)
つまり、婚姻中の父母の一方が単独で、子の財産に関してなした行為は無効とされています。

⇒ただ、民法825条によりますと、共同親権者の一方が、共同名義でした行為は、その行為が他の一方の意思に反していた場合も、その効力は妨げられることはない(つまり、無効にならない)とあることに注意です。ただし、この場合でも相手側が悪意のとき、つまり、その行為が他の一方の意思に反していることを知っているとき、この限りではありません。
この例として、親権に服する子供名義の土地を一方の親が勝手に第三者に売ったという場合です。父母の婚姻中は共同親権が原則ですので、一方の単独名義で行った場合は、原則無効です。
共同名義で行ったときは、他の一方の意思に反していても、相手側の第三者がそれを知らなければ、無効とはなりません。つまり、その土地の売却は有効となります。(もちろん、この場合は、勝手に売却した親に対して責任を問えることはできます。)


 $ 親権行使者の決定
 
 ・父母が、協議上の離婚をするときは、その協議で一方を親権者と定めなければなりません。
 ・裁判上の離婚の場合は、裁判所が、父母の一方を親権者と定めます。

 ・子の出生前に、父母が離婚したときは、親権は母が行います。ただし、子の出生後に父母の協議で父を親権者と定めることができます。
 ・父が認知した子に対する親権は、父母の協議で、父が親権者と定めたときに限り、父がこれを行います。

上記のうち、父母の協議で親権者を定めるとき、協議が整わない、できないときは、父または母の請求により、家庭裁判所は協議にかわる審判をすることができます。(当事者間の協議で決めることができないときは、家庭裁判所を利用)

 * 親権行使者の変更
 父母のいずれか一方のみが親権を行使している場合において、子の利益のため必要であると認めるときは、子の親族の請求によって、家庭裁判所は、親権者を他の一方に変更することができます。
 このとき、その子供が15歳以上のときは、必ずその子供の意見を聞かなければいけない扱いになっているようです。

                        〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ○親権の内容

 T 身上監護権(心身の保護・成長に関する、監護の教育)

 @居所指定権
 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければなりません。

 A懲戒権(叱ったり、罰を与えたりできる)
 親権を行う者は、必要な範囲で自らその子を懲戒することができます。(あくまで必要な範囲で。度が過ぎた懲戒は、犯罪になることがあります。)

 B職業許可権
 子は、親権の行う者の許可を得なければ、職業を営むことができません。
(未成年者が、いまだその職業に堪えない事由があるときは、親権者は職業の許可を取り消し、または制限できます。)


 *離婚にあたり、親権者とは別に、監護者を定めることができます。
この場合、権限の範囲は、それぞれ、
 監護者 = 身上監護権(代諾養子の同意権もあり)
 親権者 = 財産管理権(法定代理権・各種同意権)
とされています。
 

 U 財産管理権・法定代理権

 民法824条: 親権を行う者は、子の財産を管理し、またその財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない(例:子供を、他家のお手伝いとする場合)。

$管理の対象となる財産
 子のすべての財産について管理を有するのが原則。
(法定代理人・親権者から)定めた目的の範囲で処分を許された財産や、営業の許可を受けた子が管理する営業財産については、管理権は及びません。
 また、無償で子に財産を与えた第三者が、父または母に管理させない意思表示をした場合も、その財産は父または母の管理に属しません。

 *親権者の注意義務
親権を行う者は、自己のためにすると同一の注意をもって、その管理権を行わなければなりません(民法827条)。


 ・同意権:未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければなりません(ただし、単に権利を得、また義務を免れる法律行為については、この限りではありません。例えば、お年玉のような無償で金銭をもらったり、また借金を免除してもらうことなど)
 ⇒同意のない未成年者の法律行為は取り消すことができます(自由に処分を許された財産や、営業を許された未成年者の営業に関する行為は、取消できません。また、未成年者が、成年者であると信じさせる詐術を用いたときも、取消しできなくなります。)



  V 利益相反行為

 親権を行う父または母と、その子の利益が相反する行為については、親権を行う者はその子について、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません
 利益相反行為とは、例えば、子供の財産を親権者に譲渡する行為や、親権者の債務に子供を連帯債務者とする行為のことで、判例上、親権者の行為の動機を問わないで、その行為の外形によって判断されることになっています。ということで、親権者の債務の弁済として子供の財産を処分する行為が、たとえ養育費に当てるためでも、利益相反行為になります。

 また、親権を行う者が、数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、その一方のために特別代理人の選任をしなければなりません。
例えば、親権者の子供A、B間で遺産分割協議をするとき、親権者が子供Aを代理すれば、もう一方のBには、特別代理人を選任して、分割協議を行う必要がでてきます。

*利益相反行為について、親権者が子を代理した場合は、無権代理行為になり、子が成年に達した後、その追認がなければ本人(その子)に対して効力は及ばないことになっています。

                          〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ○親権の喪失

 @親権喪失の宣告
 父または母が、親権を濫用し、または著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族または検察官(など)の請求によって、その親権の喪失を宣告できます。(民法834条*)

*親権の濫用=子の財産の不当処分、身上監護の懈怠その他親権の行使、不行使により子の福祉、利益を損なうこと。
*著しく不行跡=性的不品行その他操行の不品行によって子の監護・教育に悪影響を及ぼすこと。

→家庭裁判所で親権喪失の宣告があれば、親権者は、身上監護権、財産管理権を失うことになります。
共同親権で一方が親権喪失した場合は、他の一方の単独親権になり、単独親権者が親権を喪失すれば、後見が開始することになります。

*親権喪失制度は様々な事情から用いるのが難しいことがありますので、2年を超えない範囲の「親権停止」制度が(親権停止の審判)が創設されています。


 A管理権喪失の宣告
 親権を行う父または母が、管理が失当であったことによってその子の財産を危うくしたときは、家庭裁判所は、子の親族または検察官の請求によって、その管理権の喪失を宣告することができます。(民法835条)

→財産管理権だけがなくなり、身上監護権は影響なし。


 B失権宣告の取消し
 親権または管理権喪失の原因が止んだときは、家庭裁判所は、本人またはその親族の請求によって、失権の宣告を取り消すことができます。(民法836条)


 C親権を行う父または母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て親権または管理権を辞することができます。事由が消滅したときは、父または母は、家庭裁判所の許可を得て、親権または管理権を回復することができます。(民法837条)

*海外への長期不在などがやむを得ない事由の例。

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