●離婚について
離婚協議書
○離婚の成立 T 協議離婚による離婚 U 調停・審判による離婚
V 裁判離婚 (離婚原因)
○離婚に伴う子をめぐる諸問題
T 子供の親権 U 面接交渉権 V 養育費
○離婚に伴う財産上のことに関して
T 財産分与 U 慰謝料
○離婚後の氏
○離婚の成立
大別して、当事者の話し合いで成立させる「協議離婚」と裁判所の手続による「離婚」とに分けれます。
裁判所の手続による「離婚」は、家庭裁判所を利用した「調停離婚」「審判離婚」と「裁判離婚」に分けれます。
T 協議離婚による離婚
離婚の成立要件として、@実質的要件としての離婚意思とA形式的要件としての離婚の届出が必要です。
@離婚意思のない離婚は無効です。ただ、万が一、届出が受理されると、戸籍上の元の夫婦に戻るためには、「協議離婚の無効確認」を求める調停を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
調停で、当事者が離婚の無効を合意し、家庭裁判所が調査をした結果、その合意が正当と認めるときは、合意にしたがった審判がなされます。
調停不成立や、審判告知後2週間以内に異議申立てがあるときは、裁判で決着をつけることになります。
A離婚の届出が受理されて、離婚が成立します。
勝手に離婚届を無断で提出されないための方法として、「不受理の申出」を本籍地または住所地の市役所等の戸籍課に提出するやり方があります。これは、6ヶ月間有効で、それ以降も引き続き効果を持続したい時は、もう一度「不受理の申出」をしなくてはいけません(取り下げ可能)。**6ヶ月間有効⇒平成20年5月1日以降(戸籍法の一部改正)は無期限になっています。詳細は手続先の窓口で確認してください。
⇒関連判例「一方が無断で協議離婚の届出をしたものの、その後、もう一方がそれを認めた場合は、協議離婚を追認したことになる。」
U 調停・審判による離婚
当事者間だけの話し合いで解決しないとき、家庭裁判所を利用して解決を図ります。
調停申立て⇒調停の結果、話し合いがまとまれば裁判所書記官が「調停調書」を作成(調停調書は裁判で判決を受けた場合と同等の効力がある)。
その後当事者はその調書の謄本を添付し、(調停成立の日から10日以内に)離婚届出を市役所に提出します。
(離婚調停の管轄)相手側の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所。
⇒調停不成立。家庭裁判所の職権で、調停に代わる審判の手続に移行します(審判をせず終了することもある)。家庭裁判所は当事者の衡平を考慮して、職権で審判します。審判が下された後、2週間以内に異議の申立てをしなければ、審判は有効なものとなって離婚は成立します。反対に2週間以内に異議の申立てがあれば、審判は無効になり、離婚をするには「裁判離婚」をする必要があります。
V 裁判離婚
当事者の話し合い、また、調停等をしても解決なく、離婚をする場合には、裁判による離婚判決が必要になってきます。
○離婚原因(離婚の訴訟を提起するには、民法770条1項が定める離婚原因がいる)
民法770条1項の離婚原因(1号〜4号までの事由があるときでも、一切の事情を考慮して、婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却できると、770条2項に規定)
1号 配偶者に不貞な行為があったとき
$不貞行為とは、相手側の意思が自由であると否とを問わず、配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と肉体関係を結ぶこと(判例)で、夫婦が負う貞操義務違反です。
*婚姻関係が破綻した後の不貞行為は、その不貞行為そのものが婚姻関係を破綻に導いたものでないので、離婚原因とは認められません(つまり、慰謝料も取れません。)
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき
$夫婦が負う同居協力扶助義務に違反する行為。悪意は遺棄という事実を知っていることではなく、その事実を認容する心理状態を要するとされています。
例として、生活費を渡さない。病気の配偶者を長期間放置する。勝手に別居して、家事等を放棄するなどがあります。
3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
$所在はわからないが、生存はしているらしい程度では駄目で、生存の証明、死亡の証明がどちらもできない状況が必要とされています。
7年以上生死不明の場合は、失踪宣言によって、婚姻は死亡解消したことになりますが、失踪者がその後現れた場合、失踪宣告の取消しにより、再婚していた者は重婚という問題がおきます(再婚当事者が、前配偶者の消息を善意なら、前婚は復活しません。)
4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
$消極的に判断されやすい事項で、判例でも、「病者の今後の療養、生活等につきできる限りの具体的方策を講じ、ある程度その前途に見込みがついた上でなければ、他方から離婚を請求することは許されない。」とされています。
5号 その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
婚姻を継続しがたい重大な事由にあたるかがポイントですが、この事由は、婚姻生活が破綻して回復の見込みが見られないような理由です。
@性的な不満
理由なく、肉体関係の拒否が継続的に長時間続いたことが破綻原因になった場合は、離婚原因となりえます。
A親族との不和
まず、夫婦間で改善の努力、心遣いが大切ですが、それでも一方配偶者を助けず、自分の親族に味方するなどにより、婚姻関係が破綻したような場合は離婚原因と認められる場合もあります。
B暴力、虐待、侮辱
継続的なこれらの行為で婚姻関係が継続しがたい場合は、離婚原因となります。
C性格の不一致
基本的に認められませんが、お互いが努力しても婚姻関係が継続できないほど破綻している状態なら認められることもあるかもしれません。
D過度な宗教活動
夫婦円満のために、宗教活動を自粛する気持ちがなく、夫婦間の協力扶助義務を顧みない状況なら離婚が認められることもあります。
$離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求
原則、認められるべきではない、とされていますが、
その請求が「信義誠実の原則」に反しないと評価できる場合で、夫婦の別居期間が相当長時間継続していること、夫婦間に子の福祉を考慮しなければならない未成熟の子がいないこと、離婚後の無責配偶者が離婚前より精神的・社会的・経済的に極めて厳しい状態に置かれるなど社会的正義に著しく反する結果が生じないこと、のすべての要件が満たされる場合なら、認める余地があるとされています。
(注意!)裁判離婚しかないとお考えの方は、弁護士にご相談してください。
T 子供の親権
夫婦に子供がいる場合、離婚するにあたり、子供の親権者をどちらかの一方に定めないといけません。
それについての説明として、民法819条がちょうどいいので、掲げておきます。
「民法819条
@父母が協議上の離婚をするときには、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
A裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
B子の出生の前に父母が離婚した場合には、親権は、母がこれを行う。但し、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
C父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父がこれを行う。
D第一項、第三項または前項の協議が調わないとき、または協議することができないときは、家庭裁判所は、父または母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
E子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。 」
$ちなみに親権には、身上監護権と財産管理権があり、親権者とは別に、身上監護権を持つ監護者を定めることができます(この場合、親権者は財産管理権だけを持つことになります)。
これは、民法766条に次のように規定されています
「民法766条1項
父母が協議の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護につき必要な事項は、その協議でこれを定める。協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所がこれを定める。」
⇒離婚届の中には、監護者に関する欄がありませんので、監護者を別に定めた時は、書面として残しておいた方がいいでしょう(公正証書にするとなお良い)。
U 面接交渉権
親権者や監護者になれなくても、子供に会う権利はあります。
夫婦の協議で決めますが、協議で定めれば、協議書として書面を作成した方がいいでしょう。
協議で定められないときは、家庭裁判所に「面接交渉を求める申立て(調停)」をすることになります。
家庭裁判所は、子の福祉を考えて、面接方法等取り決めることになります。
V 養育費
親権や監護権のあるなしに関わらず、両親には、子供が経済的な援助を受けずに生活できるまで、子供に対する教育義務があります。この両親の子に対する養育義務は、親と同水準の生活を保証する義務でなければならないとされています。
養育義務の経済的負担である養育費は、父母の資力に応じて、各種の事情を考慮して相互に負担することになります。
(*ちなみに、養育費とは、衣食住費、医療費、保険、学校や予備校の学費などの生活費です。)
$養育費を請求できるのは、監護者だけで、子供自身は親に扶養料を請求する権利があることになります。
$一度定めた養育費でも、支払う方の諸事情や社会上の諸事情によって、養育費の減額、増額請求が可能です。
$養育費の算定方法は、婚姻費用分担額決定方式と同様で、「養育費算定表」が用いられたりします。
T 財産分与
民法768条によると
「@協議上の離婚をした者の一方は、相手側に対して財産の分与を請求できる。
A前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議することができないときは、当事者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りではない。
B前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他の一切の事情を考慮して、分与をさせるかどうか並びに分与の額及ぶ方法を決める。 」
財産分与のイメージは、これだけで十分つかめると思いますが、財産分与の対象となる内容について、見ておきます。
$財産分与の内容
@清算的分与(夫婦共同財産の清算分配)
夫婦で協力して得た財産が対象となる財産で、その中身は、預貯金・各種保険・株券など有価証券、離婚後の退職金(支払いが予定されている場合。高度の蓋然性が認められるときで婚姻期間に対応する部分)、家財道具・自動車・不動産(一方名義になっていても、実質的に金銭を幾らか支出していた場合、住宅の改築増築などの維持に努めた場合も対象となりうる)など。
*財産分与の対象とならない財産―特有財産・・・結婚する前から持っていた財産や、相続財産など一身に専属する財産は原則、対象とならない。
*財産分与の割合―具体的な事案ごとに夫婦が共同財産の形成に寄与した内容を検討し、その具体的寄与分を評価する。寄与の程度が不明のときは、平等としています。
A扶養的分与(離婚後の生計の維持目的)
離婚によって経済的に苦しくなる場合に生計維持のため、夫婦財産の清算(清算的分与)によって得た財産でなお生計を維持するに足りない場合は、これらを補うものとして認められます。ただし、基本的に、一時的な扶養に過ぎません。(*あくまで、支払う側に余力があることと、分与を受ける側に扶養が必要な状態であることが条件になります。諸事情が絡む事項で、必ずしも認められるわけではないところがあります。)
B慰謝料
財産分与の中に含まれる場合もありますが、含まれない場合、また、財産分与の額で足りないときは、別途、慰謝料を請求できるとされています。
C過去の婚姻費用の清算
例えば、夫が生活費を渡さないため、働いて生計を支えた妻が、過当に負担した生活費を、離婚の際に清算し取り戻すものです。また別途に請求が可能とされています。
*/* 「離婚時の厚生年金の分割」については、こちらのリンク先の情報を参考にしてください。
⇒日本年金機構HP内
U 慰謝料
慰謝料とは、離婚原因を作った夫婦の一方から、その精神的苦痛に対する損害賠償として、他方に支払われる賠償金のことです。
慰謝料の金額は、婚姻の継続年数や離婚に至った責任の軽重などを総合的に勘案して事案ごとに決定されるもので、どの程度精神的苦痛を被ったのかが算定の基準になることになる、とされています。一般的に、200万〜300万円が相場といったところでしょうか(婚姻年数、有責性また相手の経済事情によって異なる。)。
慰謝料の請求は、離婚届が受理された後、3年が経つと時効にかかり、請求できなくなります。
*親族等が、本人同士の婚姻継続の意思を妨げて、あえて離婚させてしまったという場合は、不法行為者として、その親族等から慰謝料を取れる場合があります。(当事者が婚姻継続の意思があり、その努力をなしているのにも関わらず、第三者の行為が客観的に見て婚姻を継続し得ないような事態を引き起こした場合は、その第三者に慰謝料請求可能と考えられる。)
○離婚後の氏
婚姻によって、氏を改めた者は離婚によって婚姻前の氏に戻ります。ただし、離婚の日から3ヶ月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができます(民法767条)。
子供の氏は、離婚によって当然に親権者の氏に変更されません。
なので、子が父または母と氏を異にする場合には、家庭裁判所の許可を得て(戸籍法の定めるところによって届け出ることで)、その父または母の氏を称することができます。子が15歳未満の場合は、その法定代理人(親権者)がこの手続の行為ができることとなっています。
離婚するに当たって、取り決めたことは離婚協議書として書面で残しておいた方が後々のためになります。