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 相続法改正について(2019年度)

 2019年度の相続法改正についての記述です。法務省サイトの解説も参考にしてください。

 @相続の効力(遺産分割)について。

A 民法899条の2(第三者対抗要件について、法定相続分を超える分については、登記などの対抗要件が必要)。

  民法902条の2(亡くなった人に債権がある人は、例え遺言の指定があっても相続人に対し、法定相続分の請求が可能)。

  民法906条の2(遺産分割協議前に処分された財産を、遺産分割時に存在するものとみなすことができる。原則、共同相続人全員の同意によるが、処分をした当人の同意を必要としない)。

  上記については、当たり前のように見えるものをきちんと条文化して、運用しますということでしょう。遺言がある場合は特にですが、登記などは早めに行っておきましょう。遺産分割については、(亡くなった人)被相続人死亡時の財産(債務を含む)で、協議することになるので、協議前に勝手に使ってしまった人が得をしないよう、条文化した経緯が見えます。なお、一般的に、遺産分割時の評価で財産を評価することになっています。



B 婚姻期間が20年以上の夫婦に対する居住用不動産の贈与遺贈は、特別受益による持戻し免除の意思表示があったものと推定する。(民法903条4項)

 不動産贈与があったとして、それが特別受益に当たる場合の遺産分割において、この4項に該当する場合は、特別受益に含めなくて良いという内容。あくまで推定なので、遺言によって、「(例:)この遺贈を特別受益に含める」という文言があれば、話は別ですが、20年以上の夫婦の住居分の贈与等を、計算に入れなくて良いということなので、実質、その配偶者の取り分は増えることになります。他の相続人からすれば、不利益を受けることになりますが、そこは、遺留分で対応ということになるでしょう。なお、特別受益の財産評価については、相続開始時の評価と考えられています。



C 遺産に属する預貯金債権につき、各相続人は、法定相続分×1/3を限度(最高150万円まで)にして、単独でその権利を行使できる。(民法909条の2)

 一般的に、死亡を伝えたら、預金がストップしてしまって引き出せないことについての救済です。遺産分割手続きが終わるまでの、葬式代、被相続人の財産によって扶養されていた人の生活費として使われることを想定してのようですが、悪用される要素もあるので一長一短な追加ですね。各口座ごと(同じ金融機関に対しては150万円の上限)に請求可能ということらしいので、相続人に該当していても望まない人が勝手に引き出せたりするデメリットもあるので、個人的には疑問を感じる条文だったりします。



 A遺言について。

 民法968条の変更分として、財産目録については、自筆でなくてもよい、という内容の追加。財産が多い人は意義がありますが、自筆証書遺言の場合は、全文を自筆で書くことが要件となっていますので、遺言書内に自筆で記載するのがまあ一般的でしょう。
 なお、法務局で自筆証書遺言を保管する、という制度が出来ます。2020年7月10日施行ということなので、利用してください。検認をしなくてよいというところが大きいですね。でも、遺言執行を考えると、公正証書遺言の方がベターでしょうが。参考法務局サイト

 他、遺言執行者の権限について明文化されていて、遺言執行者を指定しておく意義が大きくなったと思います。




 B遺留分について。

 概ねこれまでと同じなのですが、遺留分は金銭債権とする、というところが大きな変更事項でしょうか。不動産しかない場合で、当然に共有関係となるということを、回避できるところに意義があるのでしょうね。



 C相続人以外の被相続人の親族の特別寄与の創設。

 いわゆる相続人の妻が、その親を介護していた場合に、財産維持などの特別に寄与していた場合、その妻に特別寄与料を請求する権利を与えるというもの。
 個人的には、被相続人が遺言書で遺贈するのが良いでしょうね。よほど皆が仲良くない限り、まず揉めます。貢献度を数値化しづらいし、実質的な額を決めるのも難しい。相続人以外の人を口出しさせないのがこれまででも重要だったのに、相続人以外の人が加われば、収拾がつかなくなるおそれがあります。
 条文では、無償で(!!)療養看護その他の労務の提供(家事手伝いなどが考えられます)した場合となっていますので、何らかの見返りを既に受けている場合はこの権利は無いということでしょう。

 協議できればいいのですが、協議できない場合は、家庭裁判所へ処分の請求をすることになります。この請求の出来る期限が条文に設けられていて、この特別寄与者が相続開始及び相続人を知った日から6ヶ月、相続開始日から1年を経過したときー経過するまでに処分の請求をする必要があります。

 なお、この規定施行日以前については、従前の例によるらしいので、この特別寄与の権利はありません。



 D(2020年4月1日施行)配偶者居住権

 被相続人の配偶者が、被相続人名義の居住建物を無償で使用できる権利の創設。相続開始時に居住していたらの条件付き。
 所有権は子供へ、この配偶者居住権を残された配偶者へという使い方が考えられます。配偶者の他の取り分を増やす目的がありそう。
メリット、デメリットあるので、よく話し合ってきめてください。被相続人名義でも、配偶者以外との共有の場合はこの限りでない、つまり、設定できない可能性があるので注意です。
 通常の必要費は配偶者の負担ということになっています。
 
 また、当該不動産を第三者が取得した場合など、消滅を申し込んだ日から6ヶ月経過するまで、配偶者は無償で使用する権利を有する「配偶者短期居住権」も創設されています。



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 最後までお読みいただき有難うございました。

(2019年7月1日 追加)


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