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 一行政書士から見た相続手続

 個人体験を踏まえて、行政書士の立場から見た相続手続に関する話です。個人主観な内容かもしれませんがあしからず。。

 さて、個人的印象では、比較的易しい相続手続の依頼はほとんどなく、大体は相続人たちだけでするのは難しいと感じさせる内容です。

 比較的易しいと思う相続手続とは、郵便局・金融機関での相続手続(解約等)でしょうか。預金の解約等の場合は、別に遺産分割協議書を作らなくても、相続人間の署名印鑑(実印)があれば手続できるので、ある意味、お金を払って専門家に頼まなくても良いと思うのも頷けます。
他の手続は、それぞれの状況によって独自にできたり、専門家に頼んだ方がいいかもと思うものとにわかれるでしょうが、この場合、頼みたくなる難しいものとは何なのか考えてみます。

 まず、他のページ(相続手続)にあることですが、相続手続の流れは、大体次の通りです。
 「被相続人の死亡 → @相続人を調べる(相続人の確定) A相続財産の把握(財産目録作成) → B相続の承認・放棄 → C遺産分割協議  → D名義変更等の実際の手続 」

 死亡によって相続は開始しますが、相続手続において、相続手続すべき財産の把握のAと相続人の確定の@の作業は必須の作業でしょう。Aに関してですが、同居の家族なら(おおよそは)把握できていると思うので、問題となる場合としては、亡くなった人との関係が遠のいていて財産等の把握が難しい場合などが考えられるでしょうか。
 亡くなった人の遺物の整理等でわかる場合も多くあります。それでもはっきりしない場合に調べることになると思いますが、昨今の個人情報の関連で、相続人といえども、銀行等へ情報開示を請求するのも簡単にはいかず(戸籍等の事前準備が必要)、運が悪いとここで躓いてしまうこともあると思います。

 @の相続人の確定…戸籍等の収集ですが、相続人が配偶者・子供あたりの場合は、取る戸籍の数も少なく役所に聞きながらすれば自分たちでできると思いますが、問題となり易いのは、相続人が兄弟姉妹(甥・姪)までいく場合でしょうか。相続人が兄弟姉妹までいくと、十を越える戸籍を集めなければならないこともしばしばあり、戸籍の読み方や集め方に慣れていないとなかなか難しかったりします。ある程度は集められても、期間が空いているなどの足りない場合もあり、躓き易い場所の一つです。他、認知等の問題で相続人対象者がはっきりしない場合も、躓いてしまう要因に挙げられるでしょうか。例えば、胎児の場合は生まれるまで遺産分割は待つとか、認知に関しても結果が決まるまでは待つというのも必要でしょう。


 さて、@Aの作業をひとまず終えたとして、Bの相続放棄などの必要もない場合(相続放棄の手続き自体はさほど問題になりませんが、相続放棄する場合は遺産には一切触らない等の気をつけなければならない事項が有ります)に、Cの遺産分割協議に入るわけですが、相続人同士が仲が良く、すんなり分割の仕方を決めれる場合はほとんど問題になりませんが、問題になる場合として、相続人がA行方不明、B意思表示ができない場合とC分割協議自体揉めて決まらない場合が考えられるでしょうか。
 この内、Cに関しては、本当に自分たちで決められないのなら、家庭裁判所の調停・審判等をしてもらうしかなく、行政書士としては直接的には関われなくなります。
 Aの場合は、状況によって失踪宣告、不在者財産管理人の選任などで対応することになると思いますが、法律を知らなければ躓いてしまう箇所です。
 Bの場合も同様、意思表示できない理由によって違いがありますが、法律を知らなければ躓いてしまう箇所で、例えば認知症等が原因の場合は、後見人選任の手続をしなければなりません。後見人選任の手続自体はまた別の場所で話できればと思いますが、後見の手続は、後見人となる人のやる気がなければなかなか難しく、用意するべき書類も結構あると易しいものではありません。まあ、その辺フォローしながら進め、後見の手続が終わった後、共同相続人の一人が後見人となる場合は、遺産分割協議は利益相反する行為として、特別代理人の選任が必要となります。この特別代理人ですが、子供が幼い場合のときにも利用されるもので、例えば、不動産の名義変更をもう一方の配偶者にするときなどには、共同相続人の子供は単独では有効な法律行為はできず(行為能力が制限)、代わりとなる親は利益相反者として代理人になれないので特別代理人を付けて、その旨の遺産分割協議を行う必要がでてきます。
 以上、それぞれの事情をクリアして、遺産分割協議を終え、協議の内容を書類にして、やっと各相続手続に入ります。ここで、各手続によって別途必要となる書類も出てきて、相続人間でするのも余裕がなければなかなか大変かもしれません。

 と、躓いてしまうかもしれない場所と、大変・難しいと思われる場所で手助けするのが行政書士の役目となるのでしょうか。状況によっては、他の法律専門家を交えて、相続手続を進めることになるでしょう。

 上記以外にも、躓いてしまう箇所があると思いますが、それぞれの事情を把握すれば、解決の道も見つかります。裁判等必要になる場合は弁護士の出番ですが、(一定の)書類の作成等の場合は、行政書士でできることもあります。
 相続手続というのは幅広く、個人的には、これからも勉強、精進していかなければいけないと思っております。

 困ったこととかありましたら、ご連絡ください ⇒ 

 最後までお読みいただき有難うございました。

(2010年4月10日追加)


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