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  第11回目          使用貸借と賃貸借

 具体的な契約4回目、今回は使用貸借と賃貸借です。
使用貸借は、無料で相手の家を借りてそこに住むというような、賃貸借は賃料を払って相手の家を借りて住むというような場合です。
この二つは、よく似ています。借主は貸主から目的物を借りて、その目的物を使用することは同じなのですが、一番の違いは、それが無料か有料か―つまり賃料を払うか払わないか、です。
 今回は、使用貸借、賃貸借、この二つの違いを重点において話していこうと思います。
 入る前に・・・賃貸借の目的物で多いのは、家や土地です。「賃貸に住む」「借地を借りる」などは、現実的によく行われています。そのときに適用するのが、民法の賃貸借の項目ですが、特に建物所有目的の土地の賃貸借、また、建物の賃貸借は民法より『借地借家法』という法律が優先的に適用されます。
民法の賃貸借の項目では、社会的に弱い立場になる「借主」の保護が不十分なんですね。『売買は賃貸借を破る』『地震売買』というような言葉があるように、「借主」はいきなり、住む所を失うこともあります。民法だけでは不十分なので、「借主」を助けるために、『借地借家法』という法律があるのです。
『借地借家法』―特に借地については、法律連載第2弾を見てください。
今回は、借地借家法には触れません。

 使用貸借については、民法593条にあります。
使用貸借は、当事者の一方が無償にて使用及び収益をした後に、返還をすることを約束して相手側からある物を受け取ることにより、その効力を生ずる
 賃貸借については、民法601条にあります。
賃貸借は、当事者の一方が相手側にある物の使用及び収益を相手にさせることを約束して、相手側がこれに対して賃料を払うことを約束するによって、その効力を生ずる
 2つの条文をみて分かると思いますが、あることを除いてほぼ同じです。
そのあることとは、最初にも言いましたが、賃料を払うか払わないか、です。
 使用貸借は、おわかりになったように賃料が無料であるので、家族・友人など特別な関係において使われ、社会取引では一般的には使われることが少ないでしょう。使用貸借は、「親しい特別な関係」がキーワードになると思います。
 使用貸借、賃貸借両方ともですが、貸主はその目的物を借主に使用させなければなりません。賃貸借契約をしたにもかかわらず、お金だけ取って使用させないということもあるかもしれません。例えば、家を賃貸するときに、貸主は保証金という名目で借主からお金を取ったが、その家を実際は使用させなかった、ということが起こりうります。こうなれば、貸主のあきらかに契約違反です。
 
 さて、まずはじめに使用貸借について見ていこうと思います。
借主には、その目的物の使用・収益できる権利があります。この権利は、当事者の取り決めで、また、その目的物の性質により範囲が決まります。つまり、借主がその権利の範囲外のことの使用をした場合は、解除の原因になります。例えば、一人だけという約束で一室を貸したのに、友達を呼んで数人で住み、使用した。というような場合は、借主の違反となるでしょう。また、借主による無断譲渡も、解除原因に当たります。
 借主には、通常の費用の負担義務があります。
 通常の必要費―固定資産税や建物の敷地の地代などの目的物の保管・保存に必要な費用を、借主は負担しなければなりません。しかし、災害による建物の修繕費などの特別の費用は、貸主に対し費用の償還請求権をもっています。この請求権は、目的物返還後、1年以内にしないといけないことになっています。
 他に、借主には、目的物の保管義務と返還義務があります。
借主は、善良な管理者としての注意を持って目的物を保管しなければいけませんし、使用貸借終了後は、目的物を現状に戻して返還しなければなりません。
この義務違反があると、損害賠償を払わなければいけないこともあるでしょう。
 使用貸借は、期間終了時などの他、借主の死亡によっても終了します。賃貸借は、借主の死亡で終了しない所に違いがあります。
その他、使用貸借は当事者の信頼関係で結ばれることを考慮して、借主がその信頼関係を破壊するようなことをすれば、使用貸借は終了する、という考えもあります。
  
 次は、賃貸借です。
 ○貸主の義務
 借主に目的物を使用・収益させる義務
 上記にもありますが、貸主は借主にその目的物を使用・収益させなければなりません。
 修繕義務
 貸主には、借主の使用収益のため目的物の修繕義務があります。
 費用償還義務
 借主が支出した必要費(畳の修繕、雨漏りの修繕)の返還義務が、貸主にはあります。また、有益費(道路の拡張費など)の償還義務も、一定の場合貸主にはあります。

 ○借主の義務
 賃料支払義務
 当たり前ですが、借主には、賃料を払う義務があります。
 無断譲渡、転貸の制限
 借主は、貸主の承諾を得なければ、目的物の譲渡、転貸をすることができません。無断で譲渡、転貸した場合は、貸主は契約解除ができます。ただし、この貸主の解除権は現在の判例では、借主が貸主との信頼関係を破壊したような場合でないと、認められません。
 目的物の保管義務・返還義務
 使用貸借と同じように借主は、善良なる管理者の注意を持って保管する義務と、返還時に原状に復して返還する義務があります。
 最近、問題となっているのが、この借主の原状返還義務と敷金の問題です。
使用した部屋の清掃・修繕費用として、貸主は敷金からその分を引くことが問題になっています。まったく掃除をしていなかった、窓ガラスなど割れていたのを放っておいたなどを除いて、借主に故意や不注意がない場合は、賃貸借終了後の清掃・修繕の費用を支払う必要はないと思われます。もし、掃除等の必要性があったとしても、きちんと見積もりを出してもらう、高額の場合は特に正当な価格であることを証明してもらいましょう。

 上記以外に賃貸借において、もう一つ重大なのが、「黙示の更新」です。
これは、存続期間経過後、借主がその使用収益を続けていて、それに対し、貸主が知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同じ条件をもって、賃貸借を更新したものと推定されます。ただし、存続期間の定めはないことになります。これは、使用貸借にはありません。

以上、重要な点だけを見ていきました。賃貸借は、細かいことも規定されていますが、現実として重要となるのは、やはり契約内容です。先ほどの、貸主の義務も契約によっては排除されていることもあります。
借りる方としては、なかなか良いようにはいきませんが、契約を結ぶときは有利になるようよく考えましょう。
現実的の賃貸借(動産は除く)は、「借地借家法」が先に適用されることが多いです。借地借家法にない規定は、民法が適用になります。。

 (*2004年3月10日)

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  第12回目           雇用など

 今回の法律連載も最初の目的と違い法律解説?が多くなってきました。しかし、契約をするに当たり法律を知らないと、とんでもないことになる可能性があります。例に取ると、金銭消費貸借契約において、返還約束がないと消費貸借契約とならないおそれが出てきます。この場合、最悪、お金を貸しても帰ってこないという結末が起こりうります。
 民法に定められている具体的な契約は、世間で一般的な契約です。典型契約といいますが、民法では13種類が定められています。贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解の13種類です。また、これ以外の契約ももちろん認められます。契約自由の原則が基本にあるからです。
 今回は、このうち「雇用」に関して少し見ておこうと思います。
「雇用」の意義については、民法623条にあります。
雇用は、当事者の一方が相手側に対して労働に従事することを約束して、相手側がこれに対してその報酬を与えることを約束することによりその効力を生ず。
社会一般的に行われている雇用契約のことで、労働者は労務に服する義務を負い、使用者は賃金の支払義務を負う約束のことです。
会社勤めが典型的な例ですね。
 民法の中で、雇用に関しては623条〜631条に定められています。しかし、使用者と労働者との力関係の違いから、この民法の規定だけでは労働者にとってはどう見ても不利です。低賃金、いつ解雇されるか分からない・・・・・。色々な問題があります。そのあたりを解消する法規定として労働基準法等の労働法規があります。したがって、民法の規定は補充的なものとして考えた方がいいと思います。
 労務を提供し、それに対し賃金を支払う約束があれば、雇用契約が成立します。さて、最近よく話題になることの一つに、残業問題があります。これは、使用者・労働者との立場の違いと、最初の雇用契約時にあいまいな内容で契約をむすんだことにより起こると考えられます。労働基準法では、労働契約時に使用者は賃金、労働時間等を書面で明示する義務がありますが、まずここで賃金についてあいまいであると、きちんと確かめる必要があるでしょう。残業になるとどうなるか、残業手当はつくかどうか・・・そのあたりがあいまいであると、残業代がでない可能性が出てきます(法律上は労働分の対価においては支払う義務があるはずだけど…)。一部企業によっては、やはり力関係―訴えたりするとその会社にいられなくなるという立場の弱さで残業代はもらえないということがあるでしょう。これに関しては、法整備、社会環境の変化を待たざるをえません。しかし、労働者には、契約(また法律)で定められた賃金を受け取る権利があります。
 口約束だけでも、この雇用契約は成立します。しかし、書面がないと、やはり問題がでてきます。
 他の契約でも同じですが、契約を締結するときは書面で行うことが必要でしょう。雇用でも、書面がないと、どういう条件でいくら賃金がもらえるかさっぱりわからなく、裁判するにしても、請求金額に関し、証拠がないと負けるおそれもでてきます。
雇用は重大な契約です。書面で契約を交わすべきでしょう。
 
 少し脱線した感じですが、民法の雇用に関しての規定で大切と思われるところをピックアップしておきます。
624条 報酬の支払時期。約束した労働を終わったあとでなければ、労働者は報酬を請求できない。
期間を持って定めた報酬は(1か月15万円と定めた場合など)、その期間が経過後(労務が終了していなくても)請求できる。

625条 使用者は、労働者の承諾がなければその権利を第三者に譲渡できない。
労働者は、使用者の承諾がなければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。。

627条 期間の定めがない雇用は、各当事者はいつでも解約の申し入れができる。この場合、雇用は解約申し入れ後2週間経過することで終了する。

○報酬は後払いが原則です。労働基準法では毎月1回以上、一定期日に原則として通貨で直接、全額支払わなければならない、ことになっています。

○625条は当たり前ですね。勝手に使用者の都合で、明日から別の会社で働いてくれや、労働者の都合で別の人が変わりに働くから、などを言うことはできません。

○627条での使用者側からの解約に関しては実際は利用されないでしょう。民法と労働法規の違いをわかっていただくために出しました。民法では、期間の定めがない雇用の場合は、いつでも解約できるとあります。つまり、使用者の都合で「解約しよう」といえるわけで、理由もなく解雇されても、労働者は何も言えないわけです。
 しかし、労働基準法18条の2にこういうのがあります。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
つまり、正当な理由のない解雇は無効というわけです。
労働者からの解約(任意退職)は基本的にこの条文通り(民627条。2項、3項の規定に注意)、いつでも解約申し入れができて、この申し入れ後2週間経過すると労働関係は終了することになります。
その他、労働法規には一定条件下の解雇無効の規定が幾つか定められています。

 今回は以上です。今回の「雇用」のように民法以外の別の法律で厚く保護されていることも多く見られます。民法は私人間での一般法で根底にある法律です。具体的には他の特別法で定められていても、民法がやはり重大であることには変わりないと思います。民法の重要性が少しでも分かっていただけたらなあと思います。
しかし、「雇用」に関しては民法より、労働基準法等が大事です。救済を考えるときは、労働基準法を見ましょうネ。

 (*2004年3月31日)

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  第13回目           請負とその効果

 具体的な契約も6回目、今回は「請負」です。
「請負」の意義を見てみますと
 「請負は当事者の一方がある仕事を完成することを約束して、相手側がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束することによって、その効力が生ずる」(民法632条)
というように、請負は仕事の結果―一般的には、仕事の完成により報酬を支払われるところに意味があります。つまり、特約がない場合、仕事が完成するのなら誰がその仕事をしても良い、という見方ができます。ここが、前回の「雇用」と違うところです。
 「請負」で、一番身近なのが、やはり建築―建物請負契約でしょう。家の完成、または増改築など建設関係の契約はほとんどこの請負契約だと思います。建設以外では、服の仕立てや、また音楽の演奏、講演なども請負契約にあたるでしょう。仕事の結果・・・仕事の完成により報酬が支払われるのが請負です。なので、音楽の演奏にしても、演奏の結果、報酬が支払われるということなら、請負になるということです。
 この「請負」契約も、口約束だけで成立します。大体、大工さんを見ていると契約書を交わしている方が珍しいように思えます。今まで、何度も書きましたけど、契約書は後日の紛争を防止するために作られる物です。言った、言わない、約束した、してない、ということで争いを防ぐために契約書は作ります。
個人的には、契約書を作るべきだと思います。建築の場合は、民法関係だけでなく、建設業の許可にあたっても、契約書は、許可要件の証明資料として使われます。建築業許可は場合により、10年分の証明資料が求められます。契約書を作っていれば、ほぼ確実な証明資料として許可が受けやすくなります。民事関係でなく、他の場合にでも利用できるので、契約書は作った方がいいでしょう。
 
 「請負」は、仕事の完成という結果に対して、報酬が支払われるわけですが、ここで、請負人と注文者の義務を見ておきましょう。
 請負人の義務は、もちろん、仕事の完成をすることです。仕事を完成するために、第三者(下請人)を使うのも特約がない限り、別に構いません。しかし、下請人を使った場合は、注文者への責任は請負人が負わなくてはなりません。特約がない限りと書きましたけど、下請負の禁止の約束があっても、請負人が下請負に出した場合、請負人と下請の間ではその約束は有効です。ただし、請負人は債務不履行として注文者に責任を負うことになります。
家の完成など製造物の場合は、請負人は、仕事の完成後、その物を注文者に引き渡さなくてはなりません。引渡しがない限り、請負人は報酬の請求はできません。(民633条)

 注文者の義務は、仕事の完成に対し、報酬を支払うことです。報酬の支払時期は目的物の完成の場合は、引渡しを受けたとき、演奏など物の引渡しがない場合は、後払いとなっています。

 民法を見ますと、「請負」のところの条文は11条文ですが、その半分以上が担保責任に関しての規定です。
建設物の工事で、ドアが開かないなどのように目的物に欠陥があれば、注文者は担保責任の問題で請負人にいくつかの請求ができます。
まず、一つ目として、修補請求
注文者は相当の期間を定めて、欠陥を修補するように請求できます。ただし、重要でない瑕疵(欠陥)で、それを直すのに不相応の費用がかかる場合はこの請求は認められません。例えば、柱に少し傷があるので、取り替えて欲しいというような場合です。
 二つ目として、損害賠償請求です。
 目的物に瑕疵あるとき、修補に変えて、また、修補とともに注文者は請負人に損害賠償の請求ができます。
 三つ目として、解除権です。
 注文者は、目的物の瑕疵により契約の目的を達成することができない場合は、契約の解除ができます。ただし、目的物が建物その他土地の工作物の場合は、解除できません。解除による損害が大きくなるための配慮です。

担保責任による注文者のできる請求は以上ですが、目的物の瑕疵が、注文者が提供した材料の性質による場合や、注文者の指図により生じた場合は、請負人はその材料、指図が不適当であることを知っていて告げなかった場合でない限り、担保責任は負いません。この場合は、注文者の責任だからです。

 この担保責任の存続期間は、目的物の引渡しのときより1年間、建物または土地の工作物は5年間、石造、煉瓦造のように堅固な工作物のときは10年間です。また、この存続期間は特約により10年まで延ばすことができます。
さらに、この担保責任に関して特約により免除することもできます(例外あり)。
契約自由の原則の表れですね。

民法では、さらに特別の場合の解除について定められています。
注文者は、仕事が完成するまでの間、いつでも損害を賠償して契約の解除ができます。
また、注文者が破産した場合も、請負人または破産管財人は契約の解除ができます。

以上、「請負」の説明です。

 最後に、こういう場合はどうなるのでしょうか?
問い、建物新築の請負契約にあたり、注文者が材料の全部の提供をした場合は、特約の有無に関わらず、注文者に所有権が帰属する。○か×か?

(答え)×です。一般的に、請負で物を作る場合、その物の所有権は材料を提供した方(お金を出した方)に、帰属します。請負人がその物を作るための材料を出した場合は請負人に所有権が帰属するということになります。問題の場合、注文者が材料の提供しているので、注文者に所有権が帰属するように思われますが、特約があれば、請負人に所有権を帰属させることもできます。つまり、「特約の有無に関わらず」、という部分が間違いです。

この勢いで、もう一つ行きましょう。
問い、注文者は、仕事完成までの間は、損害賠償すれば、何らかの理由なくして契約を解除できる。○か×か?

(答え)○です。

(*2004年4月20日)

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  第14回目           委任とその効果

 具体的な契約の7回目、今回は「委任」です。
委任状という言葉があるように、「委任」はよく使われています。私たち、法律業も(大体)この「委任契約」を結ぶことで業務を行っています。

 「委任」の意義を見ておきましょう。
643条に
「委任は当事者の一方が法律行為をすることを相手側に委託し、相手側がこれを受諾することによりてその効力を生ずる」
もう一つ、656条に
「本節の規定(委任の規定)は法律行為でない事務の委託について準用する」
とあります。
ということで、法律行為(法律効果を発生させる行為)という難しい言葉も出てきますが、法律行為であろうとなかろうと、一方が事務の処理を相手側に委託して、相手側がそれを受諾すれば、委任契約が成立します。
 「委任契約」も口約束で成立します。よく委任状を交わしますが、証拠のための書類であって、委任状がなくても、契約成立には問題ありません。ただし、後で委任をした、してないという問題が出てきた時のため、委任状等の書面を用意しておくべきでしょう。
 委任を頼んだ方を委任者、委任を受けた方を受任者と言います。
ここで、委任者、受任者の義務を見ておきましょう。
 @委任を受けた受任者の義務
 ○善管注意義務
 受任者は、善良なる管理者の注意をもって、委任された事務を処理(つまり仕事をする)する義務があります。
 善良なる管理者の注意とは、いつも以上の注意を払ってということで、物を扱うとしても自分の物以上の注意を払って扱わなくてはいけないということです。
 受任者に要求される善管注意義務は、受任者の職業、社会的・経済的地位に応じて一般的に(場合によりそれ以上)要求される注意です。

 ○自ら事務を処理する義務
 単純な補助者として他人を使う場合は別として、自ら事務の処理をしなければならないとされています。ただし、受任者が病気でどうしてもできないとき、委任者の同意を得た場合などは、他の人に事務の処理をさせることもできるとされています。

 ○報告義務
 委任者の求めに応じ、受任者はいつでも事務の処理状況を報告しなければなりません。また、委任終了後は、遅滞なくその顛末を報告しなければなりません。
 今どの程度進んでいるのか、委任者の問いがあれば答えなければならないということです。

 ○受け取り物などの引渡義務
 当たり前ですが、委任契約を処理するにあたって受け取った金銭は委任者に渡さなければなりません。
例えば、和解の委任で相手側から和解金をもらった場合は、その和解金を委任者に渡さなければなりません。

A委任者の義務
 ○報酬支払義務
 委任においては特約がなければ、原則無報酬です。しかし、商人間の場合は当然報酬ありですし、弁護士・行政書士等が業務を受任した場合も報酬ありとされると思われます。
 報酬がある場合は、後払いが原則です。また、受任者の責任によらず、委任が途中で終了した場合は、その委任の履行の割合に応じて、受任者は報酬を請求できます。   

 ○費用等支払義務
 報酬があろうとなかろうと、委任を行うのに必要な費用を委任者は支払わなくてはなりません。受任者の請求があった場合は、前払いしなければなりません。
 また、受任者が委任事務の処理で過失なく損害を受けた場合は、委任者は損害賠償をしなければなりません。

 委任は、いつでも解除(非遡及)できます。ただし、相手側に不利な時に解除して損害が発生した場合は、やむ得ない理由がない限り、損害賠償しなければなりません。
 委任は、委任者、受任者の死亡、破産、受任者が後見開始の審判を受けた時に終了します。これは、特約により排除できるという考えもあります。

以上、「委任」について簡単に説明をしました。
前回に引き続き、次の問いを考えてみましょう。

問い AさんはB弁護士にCさんと和解契約の委任を頼みました。
 @B弁護士は、Cとの和解が成立するまでは、Aさんに交通費等の費用を請求できる、できない?
 AAさんは、いつでも委任の解除ができますか?
 BB弁護士は、Aの承諾がなければ、他の弁護士に委任を任すことができない、できる?

答え@B弁護士はAさんに費用請求できます。前払いで払ってもらうことも可能です。

 AAさんはいつでも、解除できます。ただし、無報酬でない限りそれまでの履行分の報酬を支払わなくてはならないと思います。

 BAの承諾がなければなりません。勝手に別の人に委任を任せた場合は、法律違反です。

「委任」は当事者の信頼関係で結ばれる契約と考えられています。だから、法律もそのあたりを考慮して用意されているように思われます。「委任」だけでなく、どの契約でもいえることですが、信頼関係を壊すようなことをすれば、賠償責任等、色々と問題が発生するのは当たり前のことです。契約は相手側があってのことですので、勝手な行動は慎みましょうネ。

(*2004年4月30日)

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 第15回目           法律は忙しい!?

 今回は、事と次第によって色々な法律が関わってくるという内容で行きたいと思います。

事例:Aは1000万円でBから甲家屋を購入する契約を結んだ。1週間後に、AはBに1000万円を支払い、BはAに甲家屋の登記を移す手続をすることを約束した。

 この事例を使って、想像を膨らませていきましょう。
まずこの契約は、前回まで見た具体的な契約の種類のどれになるかと言いますと、「売買」にあたりますね。売買契約の一般的な事例です。
売買については民法555条以下にあります。
 さて、契約締結自体に問題があると仮定しましょう。例えば、Aは本当は甲家屋でなく、乙家屋を買うつもりだった場合。この場合は、民法95条錯誤による無効を主張できるかもしれません。
Bに詐欺行為または強迫行為があった場合は、Aは民法96条より、契約の取消しができます。ただし、取消し権には時効がありますので、注意が要りますね。
 契約締結には、問題はありませんでした。後は1週間後にそれぞれ債務を履行するだけです。1週間後、すんなり履行が終わればそれで終了です。何の問題もなく、お話も終わりです。でも・・・・・・
 こういう場合は、どうでしょうか?契約後、引渡までの1週間の間に、火事等で甲家屋が消滅してしまった場合は、Bにその火事の原因がある場合は、債務不履行・・・履行不能によりAは契約の解除、損害賠償請求ができるでしょう。Bに落ち度がなく、放火や自然災害により甲家屋が消滅した場合は、民法534−536条の危険負担の問題になります。特定している債権(特定物債権)の場合は、債権者主義です。つまり、家屋が消滅していても、Aはお金を支払わなくてはいけなくなります。なんでや!と思うかもしれませんが、これが法律です。でも、危険負担に関しては契約により、変えれます。Bが同意すれば、お金を払う必要もなくなります。
 
 1週間の間、何の問題もありませんでした。さて、約束の履行の日です。お互い約束を守りスムーズに債務の履行が終われば、それでこのお話は終了です。では次回までになりますが、でも・・・・・・
 Bは登記手続をする準備をしていたのに、Aはお金を支払わないと言います。1か月後払うからさぁ、なんてことを言います。登記手続だけ先してよ、とAは言います。約束どおりなら、Bはこの日に登記手続をしなくてはいけません。しかし、ここで民法533条同時履行の抗弁権を主張して、あんたが債務の履行しないなら、こちらも債務の履行しないよ、と言えます。もしくは、債務不履行―履行遅滞を主張して、契約の解除でも、損害賠償請求という方法も考えられるでしょう。逆でも、一緒ですね。Bは登記手続を拒んでいる場合は、Aは1000万円の支払を拒むこともできます。
 話を少し変えて、登記は必要なのでしょうか?民法176条で、物権―この場合は、所有権ですが、所有権の移転は、当事者の意志表示のみにより、効果が発生するとあります。つまり、所有権を移転するよ、はいしてくださいという話だけで所有権は移転するわけで、別に登記は必要ないのです。ただし、AとBの間ではそれでいいのですが、世界には他の人もいます。世界にはAとBしかいないのなら、登記をする必要なんてありません。しかし、他の人が関わってくると、所有権の移転登記がないとAは損するかもしれません。例えば、この契約後Bが他のCに同じ甲家屋は売った場合。先にAにもう売っているのだから意味ないじゃないか、と思いきや、Aに甲家屋の登記がなくて、Cに所有権の登記が移ったとすると、なんと甲家屋はCのモノになってしまいます。登記は第三者に対しての対抗要件なんです。

 話を戻して、1週間後の履行の日、Aは1000万円用意できなかったから代わりにこの1000万円以上の値がある絵画で支払って良いかと言いました。民法482条の代物弁済です。この場合、Bが承諾すればAは自分の債務を履行したことになります。でも、Bが反対すればAは1000万円を払う必要があり、払えないのなら債務不履行で損害賠償をしなくてはいけなくなるやもしれません。BがAに500万円の借金がある場合は、Aは相殺という方法も考えてもいいかもしれません。ちなみに、相殺は民法505−512条にあります。

 1週間後、何の問題なく、互いに債務の履行が終わり、一段落。話は終わりです。といいたいところですが・・・・・・・
 Aは初めての持ち家だ、と喜んで住みます。が、なんとその家には欠陥があるじゃないですか。買う前に調べたときにはなくて、後から気づいた欠陥です。これでは、1000万円支払いはあんまりだ。どうする?
売買のところで話しましたが、この場合は担保責任の問題になります。つまり、AはBに対し、損害賠償請求ができます。Bが意図して告げなかった場合は、詐欺取消しや、または、709条不法行為による損害賠償問題になるかもしれません。

 Bは1000万円を受け取り、Aは甲家屋で何の問題もなく、暮らします。お話は終わりです。あの短い事例の文章だけで、いくつも法律が関わる(かもしれない)ことを今回は見ていきました。法律って面白いと思いませんか?実は言うと、この事例において、民法だけ関わってい訳ではないのです。登記を考えると、不動産登記法も関わりますし、詐欺などになると刑法も関わってくるかもしれません。もっと、深く突っ込むと、甲家屋の引越しと言うことで、住所の移転、住民基本台帳法も関わってきます。
今回の話を見てみますと、何の問題がなければ、法律なんて必要ないこともわかります。約束を破ると何かが起こる・・・そういうことやもしれません。

(*2004年5月20日)

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 第16回目           不法行為の基本

 法律の基本は、「条文にある」ということで、今回は、不法行為に関する条文を見ていこうと思います。
不法行為に関する条文は709〜724条にあります。
まず、有名な709条。民法を勉強したことあるひとで709条といえば、ああ、あれだなと思うほど、有名な条文です。どうでもいいのですが、民法90条も有名です。90条と聞いただけで、ああ、公序良俗違反の話だな、と民法を勉強したことがある人ならぱっと思いつくと思います。
709条には、こうあります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
この条文は一般的な損害賠償請求の基礎になる条文といってもよく、日常的にも良く使われています。損害賠償を求めることができる法的根拠として、債務不履行による賠償、担保責任による賠償もありますが、やはり、この709条不法行為による賠償の方が有名でしょう。よく聞かれる、慰謝料もここに根底があるのです。
一緒に710条を見ると、
他人の身体、自由または名誉を害した場合と、財産権を害した場合とを問わず、前条(709条)の規定により、損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対してもその賠償をしなければならない。」
つまり、不法行為による賠償責任の対象は、物を壊されたというような財産権に関する場合だけでなく、監禁された、名誉を傷つけられたという人格権に関する場合もあるのです。
さて、709条による一般的不法行為の成立要件は次のとおりです。
@行為者(損害を発生させた者、加害者)に責任能力があること
A行為者に故意、過失があること
B行為者の行為が他人の権利等を害する違法行為であること
CBの行為により損害が発生すること

ひとつずつ、見ていこうと思いますが、まず、ここでいう「行為」とは何か?ということも気になります。例えば、寝ている間に隣の人を殴ったりして、怪我を負わせても、損害賠償を負う「行為」になるのでしょうか?
寝ている間の行為には意思が伴いません。そんなことでも、損害賠償をしなくてはいけなくなると、これこそ人間の自由は制限されてしまいます。寝ている間でも、意思をもって動くことができるならいざ知らず、睡眠中の行為による賠償責任はないと言ってもいいでしょう。でも、よく寝返りを打ち、周りの物を蹴ったりすることが多いとわかっている場合は、そのことを話す必要が出てくるかもしれません。
ここで言う「行為」・・・「責任を負わせるに足る人間の動作」とは「意思に基づく人間の動作」ということになるでしょう。普段のただ単に歩く動作も、それは、あそこへ行くという意思が伴った行為です。つまり、歩いている時に、不注意で物を壊したり、子供を蹴ったりして怪我を負わせたら、賠償責任を負わなくてはならないということになると思います。
「意思が伴わない行為」―上記@にも関係することですが、713条にこうあります。
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない
お酒を飲んで何が何だかわからない・・・つまり、何かをすることに意思がない場合におこった損害には、責任を負わなくともいいということです。ただし、713条の続きに、「但し、故意又は過失により、一時その状態を招いたときはこの限りにあらず」とあります。
自分でお酒を飲んで、損害を与えた場合は、例え意思がなかったとしても賠償しなさい、というわけです。
@。責任能力(責任を弁識できる能力)をもたない者は、基本的に賠償責任は負わなくてもいいわけです。
責任能力に関しては、精神的の障害による713条のほか、712条による未成年者に関してもあります。「未成年者が他人の損害を加えたる場合において、その行為の責任を弁識するに足りる知能を持っていないときはその行為につき賠償責任は負わない
712条、713条には責任能力がないものは責任を負わなくていいということが規定されています。ただし、故意過失により、責任能力がない状態になった者は、責任を負わなくてはいけません。
この二つの条文を見て、おかしいと思ったと思います。例え子供がしたこととはいえ、被害を受けた方は賠償してくれと思うでしょう。
民法はきちんとフォローしています。
714条に、責任無能力者の場合はその監督者(子供の場合はその親など)に賠償責任を負わせています。
例えば、5歳ぐらいの子供がふざけて、他の子供を押して怪我させた場合は、その5歳の子供本人は、賠償責任を負いませんが、その親、監督する立場にあった人が賠償責任を負わなくてはいけないのです。ただし、この場合で、監督者は監督する義務を怠らなかった時は賠償しなくてもいい、と法定されています(実際は、なかなか認めてもらえない)。

上記Aを見ましょう。故意(わざと)、過失(不注意)がなければ賠償を負う必要はないということです。どこまでが過失なのかというのは、難しいですが、一般的な注意違反をした場合は、ここでいう過失に当たるでしょう。例えば、車の運転の脇見運転の場合などです。
B。行為に違法性がなければなりません。まあ、基本的に損害が出てくる場合は違法性があることが多いでしょう。異臭、騒音などでは受忍限度を越えないものについては我慢できる程度ということで、違法性が認められないこともあります。また、正当防衛などの場合は違法性が阻却されます(賠償責任を負わないでいいということ)<正当防衛民720条>。その他、被害者の承諾がある場合なども違法性は阻却されます。
C。行為者の行為と損害に、因果関係がなければなりません。例えば、AがBに殴られたとしましょう。その後、別に、Aは道で滑って骨折したとします。この骨折に対してはBの殴ったという行為は関係ありません(もちろん、ある場合もありますが)。骨折したのは、Aの不注意でBの行為は関係ないのです。つまり、Bの行為とAの骨折という損害は因果関係がなく―治療費の請求はできません。もちろんですが、Bが殴られたことによる治療費の請求に関しては、Bが殴ったという行為とそれで怪我したという損害に因果関係があるので、認められます。
以上@〜Cの要件があることで被害者は賠償請求ができます。どれか、欠けている場合は、法的に認めてもらえません。

違法行為による損害賠償は、金銭賠償が原則(722条)です。なんでも、お金で判断するのはどうか?と思うかもしれませんが、このあたりは法律が決めることなので、文句は言えません。名誉毀損による特則(723条)もありますが、原則に金銭賠償であることは知っておいてもらいたいです。よく、お金をもらうこと(請求すること)で事を終わらせるなんてなにごとか、という心無い言葉を耳にしますが、法的には金銭賠償しか認められないのですから、そういう言葉は可哀想です。特に大切な人が殺され、刑事裁判では無罪などとなった場合には、民事で賠償請求して金銭を請求するしか、加害者に罪を背負ってもらう方法がないこともあるのですから・・・。
被害者本人に原則として賠償請求権があります。しかし、殺された場合などは被害者本人は加害者に請求できません。生命に対する慰謝料として、711条にこの場合は、被害者の父母、配偶者、子供(自身の損害ではありませんが)に損害請求権を与えています。この場合、権利能力(権利を持つことができる能力)のない胎児も、生まれたものとして賠償請求権を認められています(民721条)
最後に、不法行為における賠償請求権の時効は、損害及び加害者を知ったときから3年、また行為のときから20年で消滅時効にかかります。損害及び(この及びは重要)加害者を知るまでは15年後でも賠償請求できるわけです。

今回は基本ということで、一般的な不法行為についての条文を見てきました。特別な場合として、使用者責任、動物占有者の責任などがありますが、次回ということで・・・。
賠償請求するにしても、法的根拠がないと、裁判所は認めてくれません。法律を知るということは、自身を守るということです。難しいですね。

(*2004年6月10日)

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 第17回目          不法行為の基本パート2 

 前回は、709条にまつわる一般的な不法行為について見ていきました。今回は、前回予告どおり、特別な場合の不法行為責任についての話です。

 加害者の行為に、故意(わざと)または過失(不注意)があり、被害者は損害を受けました。この場合は、民法709条により、加害者に対し、損害賠償請求できます。この損害賠償請求は金銭賠償が原則です。
 加害者がきちんと賠償してくれたら、(心情的には許せない部分もあるかもしれませんが)それはそれでいいのですが、前回にもありました相手に「責任能力」がない場合は、賠償してもらえないことも考えられます。
「責任能力」がない場合は、その監督者に賠償責任があることは前回話しました。責任能力がないと思われる5、6歳ごろの子供が損害を与えた場合、子ども自身は責任は負わないが、その監督者である親が代わって責任を負うという話でした。
ここで注目して欲しいことは、監督者である親自身は、直接相手に損害を与えていないことです。これから話す、特別な場合の不法行為責任については、このように直接は損害を与える行為はしていないが、関係者として賠償責任を負う場合があるという内容です。

責任能力がない者の監督者の責任(民714条)は前回話しました。
次は、これも有名ですが、民法715条使用者責任についてです。
715条1項に「ある事業のために他人を使用する者は、被用者(雇われ人ということですね)がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及び監督につき相当の注意をしたとき又は相当の注意をなしても損害が生じべきであったときは、この限りにあらず」とあります。
良くある例として、従業員が会社の車で事故を起こした場合です。
故意過失があれば、その従業員自身が事故の賠償を負うのは当たり前です。ただ、会社もその従業員を使って利益を得ていることから、その従業員の責任を一緒に負うという考えからこの使用者責任の条文があります。
会社の事業執行のために、被用者が相手に損害を与えた場合は、使用者も責任を負うわけです。これには、被害者を助けるという意味もあります。従業員には、とても賠償できる資産がない場合、資産豊富な会社が賠償してくれたら、被害者も助かります。
先ほどから「会社」と書いていますが、使用者・被用者の関係にあれば、会社でなく個人経営でもこの使用者責任はあてはまります。
さて、どんな場合でも使用者が責任を負わなくてはいけないのは酷です。だから、但し書きとして、被用者の選任又は監督につき相当の注意をしているなどの場合は、それを立証できれば賠償責任を免れます(実際は認めてもらえないことの方が多いようだけど・・・)。
ちなみに、使用者に代わって事業を監督する者(支店長など)も使用者同様の賠償責任を負います(民715条2項)
例え関係あると言っても、被用者自身が本来なら賠償責任を負うのは当たり前です。つまり、使用者責任として、使用者が責任を負った場合、実際不法行為をした被用者には、使用者は何も請求できないのでしょうか?
それに関して、民法715条3項にあります。「前二項の規定は使用者又は監督者により被用者に対する求償権の行使を妨げず。
つまり、被用者に代わって賠償責任を果たした場合は、使用者は被用者に求償を求めることができるのです。ただし、全額が認められるわけではなく、判例でも「使用者は被用者に対し、こうむった損害のうち、信義上相当と認められる限度においてのみ求償の請求ができる」とありました。実際判例を見てみますと、使用者の被用者に問いする求償で認められるのは、低い割合の金額でした。

民法716条には注文者の責任についてあります。
注文者は請負人がその仕事につき、第三者に加えたる損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指示につき、注文者に過失あるときはこの限りにあらず。」
注文者によって、請負人である大工が家の建築をしています。その工事中に関係のない人に怪我をさせた場合、工事をしている大工がその賠償を負うのはわかると思います。だけど、その第三者に対する損害の原因が注文者の注文又は指示から発生している場合は、注文者も賠償責任を負わなくてはいけないことがあります。例えば、大工が材料をそこに置くのは危険だと言っているのも関わらず、注文者がそこに置いてくれということで、第三者が怪我をした場合です。注文者は危険であることを知っていたに関わらず、そういう指示をしたのだから、責任を負うのは致し方ないでしょう。

次に・・・あるマンションがあります。そのマンションの通路のある天井がひび割れを起こしており、落ちそうでした。しかし、そのマンションの管理者は直そうとしません。そんな中、たまたまこのマンションに来ていた人が、ひび割れた天井の一部がが落ちてきたことで怪我をしました。
民法717条にこうあります。「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵あるによって、他人に損害を生じたるときは、その工作物の占有者は被害者に対して損害賠償の責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するために必要な注意をしたときは、その損害は所有者がこの賠償をすることを要する。」
土地の工作物の保存又は設置に瑕疵(傷がある)ことで、損害を発生した場合は、まず第一にその占有者が賠償責任を負います。上記の例でも、マンションの所有者でないが占有者である管理者がその賠償責任を負います。ただし、ひび割れがあるのを知って、ちゃんと直したにもかかわらず、事故が起きた場合は、そのマンションの所有者が責任を負うのです。この所有者の責任は無過失責任でわざとや、不注意がなかったとしても責任を負わなくてはいけません。ただし、ちゃんと修復したけど、その修復した者に問題があった場合は、占有者、所有者はその者に対し、求償してもらえます(717条3項)。
屋根、井戸、水道設備、エレベーターといった土地の工作物以外の竹林の裁植または支持による瑕疵の損害の場合、つまり、竹林の場合も、同じ責任があります(民717条2項)
この土地の工作物の占有者・所有者の責任についてですが、自然災害の場合のように不可抗力の場合は責任はありません。ただし、もともと瑕疵があったために不可抗力である台風などで事故が起こった場合は、責任は免れません。もともとあった瑕疵が原因だからです。

次の例を見ましょう。
Aさんの飼っている犬がBさんに噛み付きました。
動物占有者の責任です。この場合も、Aさんが直接Bさんに損害を与えたわけではありません。しかし、犬に賠償責任を負えるわけもなく、その飼い主であるAさんが責任を負います。
動物の占有者はその動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって保管した場合はこの限りにあらず。(民718条1項)」
占有者に代わりて動物を管理する者も前項(718条1項)の責任を負う(民718条2項)」
ここで注意すべきなのは、「占有者」である場合です。つまり、しばらく動物を預かっている場合に、その動物が事故を起こしたら、預かっている人が賠償責任を負わなくてはいけません。動物が加害行為をしたときに、直接これを止められる者に責任を負わせるのが妥当という趣旨のようです。
「占有者」ということで、実際は飼っていなくても、たびたび餌をあげていて、その動物をなつくようにした人も、その動物が加害行為をした場合、損害を負わなくてはいけなくなります。一例として、野良猫に餌をあげて、その人のところによく来るようにした場合に、その野良猫が隣の盆栽を割ったという話です。実際は、その野良猫を飼っている訳ではありませんが、餌をあげてその人のところによく来るようにしたということで「占有者」となり、盆栽の損害責任を負う場合があります。
718条1項の但し書きにあるように、きちんとした保管をしていた場合は、賠償責任が免れることがあります。

以上のように、実際は損害を与えていなくても、加害と(強い)関係があるということで損害賠償を負わされることがあります。
日頃から注意が必要だと言うことですね。
最後に、直接加害に加わっていないが、その計画を考えたなどの幇助(ほうじょ)者や、喧嘩などをけしかけた教唆(きょうさ)者も、加害者と共に連帯して損害賠償請求を負います。喧嘩している所に「もっとやれ」などと言って、けしかけた場合は、教唆者として賠償責任を負う場合があります。喧嘩していたら、止めましょうね。
(*2004年7月10日)

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  第18回目         法律で遊ぼう!?

 「民法に入る2」最終回です。
今回は、事例に応じたQ&A方式で見ていこうと思います。


@ Q Aは10歳の孫のBに将来、大学に合格したら車買ってあげるよと言っていました。8年後、Bは大学に合格。8年前の約束を覚えていたBは、早速Aに車を買ってくれるよう頼みましたが・・・。Aはその約束はなかったことにしてほしいと言います。さて、BはAから車を買ってもらえるのでしょうか?

A 大学を合格したら車をあげる―「条件付の贈与契約」ですね。
10歳の子供ですが、意思能力はあると思われますので、約束は有効です。ただ、基本的に未成年には、行為能力がありません。つまり、契約等するには原則、親・・・法定代理人の同意が要ります(同意が無ければ、本人や親は取り消せます)。ただし、単に権利を得る行為(客観的にみて未成年者に得となる行為)は、親の同意がなくても問題ありません。つまり、この約束は問題なく有効ということです。
さて、贈与の一般原則として、書面によらない贈与契約(口約束)は、当事者はいつでも取り消すことができます。
つまり、この事例で、Aはいつでも贈与の約束の取消しは可能なわけで・・・。Bは車をもらえないことになります。
条件付ですが、大学に合格することはBにとっては負担行為ではありません。(大学に合格するということは、Aに対して給付があるわけでなく、別に約束がなくても大学合格とは関係ない・ただ例外の可能性はありうる)
結果、BはAから車はもらえないことになります。
このような約束があれば、書面で約束しましょう。書面による贈与契約は勝手に取消しできませんから。



A Q 私Cは、インターネットサーフィンしていて、つい興味があってアダルトサイトに入ってしまいました。数日後、アダルトサイトを利用したとして、10万円の請求をされました。確かにアダルトサイトを利用―見ましたが、10万円払わなくてはいけないのなら利用するつもりなんてありませんでした。払わなくてはいけないのでしょうか?

A 払う必要はありません。
契約の成立には二つの意思表示の合致が必要です。契約を結ぼうという二人の意思の合致が必要なわけです。今回の場合、Cには契約を結ぶという意思表示はなく、利用しただけで契約を結んだことにはなりません。もし、HP上に利用したらこれこれ請求しますよと書いていたとしても、相手側にわかるようにしておかなければ、関係ありません。
つまり、契約自体ないわけですから、払う必要はないのです。

*電子取引は問題になりやすいです。契約するつもりなんて無いのに誤ってクリックしてしまった・・・。ということが起こる可能性は大です。
電子消費者契約の民法の特例として、「二重確認の原則」があります。一度クリックしてももう一度確認のクリックをしなければ契約成立したことになりません。つまり、一度のクリックだけなら、錯誤無効を主張できるわけです。ただし、一度のクリックだけでいい、ということを消費者が承諾していたら、この(錯誤)無効の主張はできない場合もありますので、注意が必要です。



B Q 私Dは、Eに30万円貸しました。その後、返してくれるよう言いましたが、お金がないと言ってEは返そうとしません。確かにEにはお金はないようですが、Eは友人Fに50万円貸しており、Fから50万円返してもらったら、私に30万円返すことができるはずです。そのことをEに言いますが、Fから返してもらうかどうかは俺の勝手だろと言って、Fに請求しようとしません。どうしたらいいのでしょうか?

A 「債権者代位権」の問題です。
返す金のない無資力のEに代位して、DはFに対しEに金を返せと請求できます。これは、裁判上、裁判外でもできます。これによって、手にしたお金はEの物ですが、相殺の意思表示することなどで、Dは30万円手にすることができます。

*債権者代位権の行使ができる要件
T 債務者が無資力であること。
Eに返してもらえるだけの財産がある場合は、裁判等を利用して直接請求すればいいわけですから、Dは債権者代位権の行使はできません。

U 債務者がその権利を行使しないこと
EがFに請求しようとしないことが必要です。

V 債権の弁済期が到来していること
 EがDに返す期限が到来していることが必要です。期限前は返す必要なんてないのですから・・・。ただし、例外として裁判所の許可を得て認められる場合もあります。

W 代位行使する権利が一身専属権でないこと
 権利を行使するかどうかを権利者の個人的な意思に委ねられるべき権利(一身専属権)の場合は、代位行使できません。例えば、離婚による慰謝料請求権や、相続の遺留分減殺請求権などは、当該権利者の意思を尊重すべきなので、債権者代位権の行使は認められません。

以上、要件です。



C Q 友人から連帯保証人になってくれないか?と言われました。通常の保証と連帯保証とどう違うのですか?

A 保証債務とは、債務者が債権者に債務の履行をしない場合、その債務を債務者に代わって、保証人が履行するという債務です。
銀行から1000万円借りた友人がお金を銀行に返さない場合、その保証人が銀行にお金を返さなくてはいけないということですね。
 債務者に代わって弁済するということは、通常の保証人も、連帯保証人も同じですが、重要な違いが2つあります。抗弁権(補充制)があるか、分別の利益があるかどうかです。
簡単に言いますと、通常の保証には、抗弁権―催告の抗弁権と検索の抗弁権がありますし、分別の利益もあります。が、連帯保証には両方ともありません。
 催告の抗弁権とは、債権者が債務者に請求せず、いきなり保証人に請求してきた場合に、保証人は、債権者に先に債務者に請求するよう主張できることをいいます。
 検索の抗弁権とは、債権者が債務者に支払いの催告をした後、保証人に請求してきた場合でも、保証人は債務者にお金があり、執行も容易であるときは、まず、債務者の財産について執行するよう主張できることをいいます。
 分別の利益とは、保証人が数人いる場合、例えば、借金が1000万円で保証人が4人いる場合、保証人1人につき250万円(1000万÷4)だけ弁済義務を負えばいいということで、分別の利益がないと、保証人が4人でも、請求されれば、保証人1人で全額(1000万円)払わなくてはいけません。
 連帯保証には上記の抗弁権や分別の利益がないので、債権者から請求された場合、先に債務者に請求して、といえませんし、保証人が何人いても全額を補償しなければなりません。
連帯保証は通常の保証より危険・デメリットが大きいので連帯保証人になるときは、くれぐれも注意してください。(よっぽど理由がない限り、連帯保証人にはならないほうがいいでしょう。)



D Q 私OはPに50万円の借金(債務)があります。ある日、Rという人が来て、Oから50万円返してもらえる債権をPから譲り受けたので、50万円払って欲しいと言われました。私はそのような話は聞いていません。私はRに50万円払わなくてはいけないのでしょうか?

A 債権の譲渡はできます。債権譲渡をしてはいけない約束がある場合や、法律上、債権譲渡を禁止している場合などを除き、債権譲渡の約束自体は有効です。ただし、譲り受けたことを債務者(この場合Oですね)に主張するためには、譲渡人(この場合のP)がOに債権譲渡した旨を通知するか、債務者(O)が債権譲渡を承諾しなければなりません。つまり、譲渡人(P)からの通知、またはOが承諾していないのなら、債務者であるOはRに支払う必要はありません。



*「民法に入る2」最後である今回は、Q&A方式で見ていきました。保証や債権譲渡など、いままで話していなかったことに触れてみました。難しい部分もありますが、知っていたら得をしたり、助かることもあると思います。
「民法に入る2」は物権・債権を中心に見ていきました。両方とも、本当に身近にあるもので、毎日といっていいほど関わっています。条文は大切ということで、条文中心の説明が多かったですが、いかがでしたでしょうか?民法は奥深く、難しいですが、楽しめていただけたのなら幸いです。

次回以降は、新しい連載に入ります。
(*2004年7月30日)

          (完)

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