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 法律連載 第四弾      民法に入る2

  民法に入るの第二弾です。
 法律連載第三弾のところでは、民法の総則のところの法律解説が中心でした。
今回からは、物権・債権が主な内容です。身近な?を合言葉に、法律解説よりも、事例をあげてこんな場合にこんな法律が使われている・・・という話にしていこうと思っています。
 言葉的に難しい所もあると思いますが、楽しく付き合ってくれたら、ありがたいと思います。


目次  第1回目  身近に使われている民法
     第2回目  物権と債権と
     第3回目  物権の話
     第4回目  物権変更と対抗要件
     第5回目  債権の話
     第6回目  契約が成立するには
     第7回目  債務不履行
     第8回目  贈与とその効果
     第9回目  売買とその効果
     第10回目  消費貸借とその効果
     第11回目  使用貸借と賃貸借
     第12回目  雇用など
     第13回目  請負とその効果
     第14回目  委任とその効果
     第15回目  法律は忙しい!?
     第16回目  不法行為の基本
     第17回目  不法行為の基本パート2
     第18回目  法律で遊ぼう!? (完)


 第1回目          身近に使われている民法

 今回は、全体のさわりの話です。
私たちは、知らない間に法律を使っています。普段の買い物しかり、電車やバスを利用する時しかり・・・。
 一例をあげますと、
 ある本屋さんで本を買いました。
たった、14文字(。を入れると15文字?)の文章ですが、ここに幾つかの民法が適用されているというのですから、驚きものですね。
さて、本を買うということなので、民法上の『売買契約』にあたります。
『売買』については、民法555条にありまして、一方がある物の財産権を移転することを約し、もう一方がその代金を払うことを約すことで効力が発生する、というような内容です。
つまり、売る方と買う方の意思の合致があれば、この『売買契約』は成立します。
本屋さんなので、店頭においている本を売る、という意思はありますし、それをレジに持っていく客も買う、という意思があります。この売る買うという二つの意思が合致しているので、『契約』が成立したということになります。
ここで、本屋さんで強引に無理やり買わされた。という場合は、無理やりにでも、買う意思があったなら、契約は成立していますが、総則編のところで出てきました『強迫による取り消し』で契約の取り消しが可能ですし、もともと買うつもりが全然なかったのに・・ということですと、『錯誤』でその契約自体、無効になることもあります。
また、お金を支払ったのに本を渡してくれない、ということになりますと、本屋さん側の民法415条債務不履行にあたり、お客さんは、こうむった損害賠償を求めることもできますし、契約解除して、代金を返してもらうことも出来ます。
たった14文字の文章から幾つもの派生にともない、民法が色々と適用されています。契約成立前、契約成立、契約成立後と私たちは民法のお世話になっているわけで、民法が身近な法律であることが少し分かってもらえたかもしれません。

もう一例。
AさんはBさんに、チラシを指して、この10万円の時計を代わりに買ってきてと言って、Bさんは分かったといって、買いに行き、その時計をAさんに渡しました。
 さて、AさんとBさんとの間に契約が成立しているのでしょうか?
成立しています。これは、民法643条の委任契約にあたり、口約束だけでも、契約は成立します。
Bさんはいわれたとおり、そのままこの10万円の時計を買い、Aさんに渡せば、問題なく終わりますが、もし、別の時計を買ってきた、店員に勧められそれ以上高価な時計を買ってきた、という場合は、問題がでてきます。
Aさんは、チラシの時計を買ってきて、と言ったわけなので、例え善意(好意)だとしても、別のもの(高価なものも)を買ってくるとBさんは契約違反になってしまいます。Aさんがそれでいいのならば、問題にはなりませんが、どうしてくれるの!という話になると、Bさんは責任を負わなくてはいけなくなります。少なくとも、他の物を買う場合には、Aさんに聞く必要があるでしょう。例え善意(好意)でも、一度した約束は守らないといけません。ここに、法律の怖い部分があります。
約束をするときは、注意してください。法律上の契約に該当する約束になれば、場合によっては、責任を負わされる可能性もありますから。

約束も含め、私たちの身近に民法は使われています。そのあたりのことを少し意識すると、周囲の景色も面白く変わるのかも知れませんね。

(*2003年10月24日)

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 第2回目         物権と債権と

 第2回目の今回は、物権と債権の違いについての話にしようと思います。
私もそうでしたが、初めて物権・債権の言葉を見たとき、それがどういう意味なのかよくわかりませんでした。
とくに債権のイメージを掴むのにかなり苦労したことを覚えています。
債権と聞くと、不良債権の言葉が連想して、お金に関することなのかなと思っていました。でも、違いました。では、債権とは・・・・・・あとで説明しますね。
 物権も、債権も、権利であります。つまり、権利を持つ者は、(法律上ですが)利益を主張し、また利益を受けることができます。
〜できる・〜してもらえることが権利なので、権利を持っていて嫌だと言う人は少ないと思います。

さて、物権と債権とはどういうものなのでしょうか?
簡潔にいいますと、
物権は『物に対する権利』
債権は『人に対する権利』
です。
説明終わり。と言っていいほど、これに集約されます。
物権は、物に対して、〜できる権利。
債権は、人に対して、〜できる・してもらえる権利。

それでは、それぞれについて説明を加えておきます。
まず、物権。
物権は、物に対する権利です。
自分の物は自由に扱うことができる。それが物権です。
物とは有体物をいう、と民法の「物」のところで出ましたが、物には人格がありません。つまり、時計や椅子なのの物が自分の意志で、勝手に動いたり、勝手に飛んでいったりはしません。
よって、物は「直接に・排他的に」支配することができます。
 この「直接に」とは、他人の行為を必要としないことです。時計を持つのに(所有するのに)他人の力は必要ありません。また、他人の行為がなければ、時計や椅子などの物が持てないのなら、いちいちその時計などを使う時に、その他人の力を借りなければいけなくなります。それは、大変ですし、面倒でおかしな話です。
自分の物なのに、他の人の行為がなければ使えないなんて。
 次の「排他的に」とは、一つの物の上には、同じ内容の物権は1個のみしか存在しないこと(法律用語で「一物一権主義」という)をいいます。抵当権などの例外もありますが、一つの物に、何個もの物権、例えば、所有権があるとすると、法律関係でも、現実的にも大変です。
ある「甲」という時計がありました。その所有権をAが持っています。でも、Bもその「甲」の所有権を持っているといいます。さらに、Cも「甲」の所有権をもっているというのです。共有(みんなの物)ならしかたありません。民法にも共有について定められています。
でも、そうではなくて、一つの物に所有権が何個もあるとすると、誰がその「甲」という時計を使えるのでしょうか?みんな使えるようで、誰も使えないかもしれません。
例えば、物に心があるとして、物の方も「自分を使ってくれる人を一人に決めてくれ」と思うでしょう。だって、ABCとたらい回しにされたあげくに、使われないまま捨てられたらたまりませんから。
よって、一つの物には一つの物権しか存在しません。原則、一つの物に所有権は一つです。排他的にとはそういう意味です。
「直接・排他性」―物権の重要な所がここにあります。

債権は「人に対する権利」です。
国語辞典を調べると「ある特定の人が他の特定の人に対して、一定の給付を請求する権利」(旺文社 国語辞典より)とありました。
債権を持つ特定の人(債権者という)が他の特定の人(債務者という)に対して、一定の給付(行為)を請求できる権利を債権といいいます。
例えば、車を買った人は、売主に対して車を渡してくれと、言えます。売主が渡すまで、渡してくれと言えます。その売主(債務者)に請求できる権利が債権です。
 この債権には債務がつきものです。債権の反対が債務であります。
売買のように、債権を持っている人は債務も負っている場合も多々あります。
車を渡してくれと言える権利の債権・そのかわりにお金を払わなければならないという義務の債務。債権と債務は同じワールドの中にあるのです。
 さて、物権には「直接・排他性」があるといいました。
債権にもあるのでしょうか?
他人の行為がなければ、そもそも債権にはなりません。直接性はないと言えるでしょう。
排他性もありません。
例えば、Aさんはある画家に100万円渡して、A自身の絵を描いてくれといい画家も承諾しました。Aさんには債権があります。おわかりでしょうか?そうです。画家にAの絵を描いてもらうという権利です。
画家に対し、Aさんは絵を描いてもらうという債権を持っています。もし、債権に排他性があるとすると、同一内容の債権は成立しないことになりますが、そんなことはありません。別のBという人も画家に対して、自分の絵を描いて欲しいという契約を結び、その債権を持つことは可能です。「絵を描いてもらう」という同一「債権」が複数成立することになります。なので、債権には排他性はないということがわかります。

「直接・排他性」ここに、物権と債権の違いがあります。

物権は「物に対する権利」
債権は「人に対する権利」
最後に一例。
C所有の建物(乙)をDが購入することになり、CD間で建物の売買契約を結び、DはCにお金を払い、Cは建物の所有をDに渡しました。
@物権は?
C所有とことで建物(乙)の所有権ははじめCが持っています。売買により乙の所有権はDに移りました。
A債権は?
売買契約により、CはDに対して、お金をもらうという債権と、建物の所有を渡すという債務を負います。
おなじく、DはCに対して、建物の所有を渡してもらえるという債権と、お金をはらうという債務を負うことになります。

物権と債権、少しはイメージが掴めたでしょうか?
次回は、物権の全体的な基本の話の予定です。
(2003年10月28日)


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 第3回目            物権の話

 前回、予定通り、今回は物権の基本的な話です。

さて、物権は前回でも言ったように、「物に対する権利」です。
物との関係を重視しており、人との関係はあまり重要視していません。
ただ、こういう法律はあくまでも、人同士の問題を想定して定めてあるので、人との関わり合いも根底にあることは否めません。ということも、一応加えておきます。

物権で重要なことはなんだったでしょうか?
そうあれです。「直接性と排他性」です。
他人の行為なしに物を支配できる直接性。
一物一権主義・・・原則、一つの物には同じ内容の権利は一個のみという排他性。
これと、もう一つ、物権を語る上で重要なものがあります。
それは、「物権法定主義」です。
「物権は、法律に定める以外は、当事者が自由に定めることができない。」ことをいいます。
前回、言わなかったのですが、ここにも、債権との大きな違いがあるのです。
 法律用語に「強行法規」と「任意法規」というのがあります。
「強行法規」とは、当事者間の契約などで排除できないもの。
「任意法規」とは、当事者間の契約などで、排除したり別のものに替えることもできるもの、のことです。
物権は民法175条にあるのですが、物権は当事者間で自由に創設できない、ことになっていて、物権の法律内容は「強行法規」であります。
なぜ、物権が「強行法規」であるのかといいますと・・・
極端の話、例えば、強力な物権「絶対権」(こんなのありませんが)があるとします。この「絶対権」は永久にその物を支配できるというものです。たとえ、その物を売り渡しても、永久にその物を支配できる権利は「絶対権」を有している者にあるのですから、その物を買ったとしても、買った人はその物を使うこともできません。
「絶対権」のある人が、返せと言ったら、返さなくてはなりません。それも、お金が戻ることなく。
「任意法規」だとすると、そんな理不尽な物権も当事者が良いと言ったら成立してしまい兼ねません。
そうなると、社会的にも生活するにあたっても、秩序が乱れ、不安定になりかねません。
そのためもあって、物権は勝手に創設できない「強行法規」であるのです。
それと反対に債権の法律は任意法規が多いです。その点は、またの機会に。

「物権法定主義」―物権を勝手に創設できない。物権の内容は法律で定められている。
さて、物権は法律で定められたものだけなのですが、どういう物権が法律に定められているのでしょうか?
簡単に見ていきます。

大別して、物権は「占有権」と「本権」に分けられます。
占有権は、現に物を事実上支配している・・・占有(自分が持っている)していることに保護を与える、仮の権利であります。本権と違う、仮の権利なので、推定性が働き、『権利』が認められないことも、多々ありえます。
本権は、その占有を正当づける権利で、ちょっとやちょっとで、覆ることのない権利です。(覆る例としては、もともとそんな権利をもっていなかったや、権利の設定が公序良俗に反している、時効完成など、があります)

それから、本権は「所有権」と「制限物権」に分けられます。
所有権とは、物権の本元。法令の制限内で、自由にその物を支配できる権利をいいます。
制限物権とは、所有権の権能の一部を他人に承継させた権利で、所有者側から見ると、所有権の権利に制限を受けることになります。

この「制限物権」には、大別して、
他人の土地を一定の範囲において使用・収益しうる権利である「用益物権」。地上権・地役権などがあります。
それと、
債権の担保のために、物の有する交換価値を利用する権利である「担保物権」。留置権や抵当権などが担保物権であります。

物権 ―○占有権
      ○本権  ― ○所有権
               ○制限物権 ― ○用益物権(地上権・永小作権・地役権・入会権)
                          ○担保物権(留置権・先取特権・質権・抵当権)
*物権の種類

 最後に、物権の一般的効力について、触れておきます。

『優先的効力』
物権には「排他性」があり、一つの物に同じ内容の権利が同時に成立することはありません。しかし、万が一、同じ内容の権利が同時に成立した場合は、登記等の対抗要件を先に有した者が優先することになります。
 例えば、Aさんは自己の所有地(甲)を、Bさんに1000万で売りました。しかし、AさんはCさんにも同じように土地(甲)を1000万円で売り渡したのです。
さて、BさんとCさん。どちらがその土地(甲)の所有権を持つことになるのでしょうか?
答えとしては、BさんとCさん、先に甲の登記を有した方がもう一方に勝つことになります。だからと言って、負けた方は、二重に売ったAさんに責任を取ってもらうことができることを付け加えておきます。

『物権的請求権』
 物権は、直接・排他的に支配できる権利ですから、その支配が妨げられた時は、その原因を取り除き、正常に戻すことができます。
 例えば、本を盗まれた!というような場合は、返還請求権を有していますし、自己の土地にゴミを捨てられた!というような場合は、妨害排除請求でそのゴミを取り除いてもらうことができます。また、隣の人の木が今にも、自分の家に倒れてきそうだ!というときには、妨害予防請求で、その木を倒れないようにしてもらうことができます。


以上、今回は終わりです。物権は秩序維持に大きく影響していて、よく知り、生活の安全を守っていきたいですね。

(*2003年11月10日)
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 第4回目           物権変動と対抗要件

 今回も、物権についてです。
今回の題名を見ると、難しい言葉の羅列でなんやこれ!?と思われるかもしれませんが、「重要な」ところでありますので、ゆっくりとでも理解していただけたらと考えています。

 物権変動とは、「物権の発生・変更・消滅」のことです。
例えば、建物を新築するとその建物の「所有権が発生」し、その建物を誰かに売ると「所有権が移転(変更)」しますし、その建物が壊されるとその建物の「所有権は消滅」します。
このような、物権の動きを物権変動と呼ぶわけです。

 民法176条に「物権の設定及び移転は当事者の意思表示のみに因りてその効力を生ず」という重要な条文があります。
物権は原則として当事者の意思表示のみで移転するということ」ですが、この条文にはある危険があることに気づいたでしょうか。
例えば、AがあるBから家を買ったとします。物権は意思表示のみで移転しますから、Bの「家を売ります」とAの「家を買います」という意思表示があった時点で、その家の所有権(物権)はBからAに移ることになります。この176条に照らすと、家の引渡しや、移転登記、お金のやりとり?なしに売ります・買います(あげます・もらいます)といった意思表示があった時点で物権は移ることになります。
売ります・買いますといった二人の間では、それ以降の債務の履行(家の引渡し、移転登記手続、お金の支払)は別として、家の所有権はBからAに移ったのだなとわかりますが、それ以外の人はそんなことはわかりません。本当に所有権は移転したのか、当事者(この場合はA,B)以外の第三者は、疑問に思うでしょう。特に所有権が自分に移ったというAから、その家を買おうと思う別の人の立場から見れば本当にAに所有権はあるのか?売買契約を成立しても問題はないのか?などと多くの疑問が生まれ、危険だと思い、買う気も失せます。「取引の安全」は害されてしまいます。取引自体も減ってしまいますし、悪行も簡単にできたりします。
  それでは、駄目なわけで・・・そこで、物権変動が生じたときは、そのことが外部から簡単に(?)知ることの出来るようにしておく必要がでてきます。それが、「公示の原則」と言われるものです。「物権変動は、これに対応する公示を必要とする原則」のことです。
本当にその人が家の所有者なのか?本当にその人に所有権は移ったのか?を見れば(調べれば)わかるようにしておけば、取引して大丈夫なのか?といった疑問も解消されます。物権変動の公示方法を備えることにより、権利を持つ者は、第三者に対して、その権利を主張できることになるわけです。この権利を主張できることを「対抗力」があるといい、その対抗力を取得するための要件を「対抗要件」といいます。
家などの不動産は「登記」、その他の動産は「引渡し」がその対抗要件となっています。
つまり、先ほどのAB間の家の売買において、所有権の移転をちゃんと「登記」することで、Aは自分に所有権があると、第三者に主張できるわけです。また、第三者からしても、「登記」を見れば、家の所有者が誰かわかり、取引の危険も減ることになるでしょう。しかし・・・
 ここに、もう一つ問題が出てきます。「本当にその公示(登記など)を信じていいのか」ということです。「公示どおりの権利の取得を認める」―「公示を信頼して取引された者は保護される」という原則、「公信の原則」と呼ばれるものがあります。「本当にその公示を信じていいのか」ということですが、実は不動産についてはこの「公信力」がありません。つまり、登記にその人が所有権者と記載してあっても、それは100%信頼できるものではないというわけです。
登記の所有権者から家を買ったのに、本当はその人に所有権はなく、高い金を払ったのに自分は家の所有権を取得できなかった・・・・・・ということが起こる可能性があるわけです。まあ、この場合でも、不法行為・債務不履行・担保責任などから損害賠償を求めることはできることは付け加えておきます。
ただし、不動産の公示には「公信力」がないので、家などの不動産の取引には危険がはらんでいることは知っておいてください。
 反対に動産の公示ー対抗要件である「引渡し」には「公信力」があります
つまり、取引の相手にその動産の所有権がないとしても、所有権があると信じて買った人はその所有権を取得できるわけです(ただし、条件あり)。

最後に次の問いを考えてみましょう。
 ○Cは登記簿上の家の所有者であるDから、その家を買うことにし、売買契約を結んだ。この契約の1週間後にCは代金1000万円をDに支払い、Dは家の引渡しと所有権移転の登記をすることになっていて、無事C,Dの債務の履行は終了した。
@この家の所有権はいつDからCに移るでしょう?
ADは契約の3日後にEとその家の二重売買を行い、所有権移転登記もしてしまった。さて、CはEに対して、所有権の主張はできるのだろうか?
B Aで、CがEに対して、所有権の主張ができないなら、CはDに対して、どういう請求ができるだろうか?

@Cの家を買います。Dの家を売りますという意思表示が合わさったとき、この場合では売買契約が成立した時点で家の所有権はDからCに移っています。物権の移転は当事者の意思表示のみで効力が生じるわけです。

ACはEに対して、所有権の主張は出来ません。こういう二重売買のとき、先に登記を有した者が勝ちます。売買契約時にCに所有権は移ったのではないの!?という疑問はあるのですが、DE間の契約も有効という前提(契約−債権には排他性がない。同一内容の債権が成立しうる)がここにあります。また、民法177条により、登記をしていないCは第三者であるEに対して、対抗することができない―Cへの所有権移転を主張できません。

BDは「債務不履行」になります。「契約の解除」、「損害賠償請求」が一般的でしょう。
契約を解除した場合で、CがDにお金を支払っていた場合は、返してもらえますし、この契約のために使ったお金も損害賠償としてDに請求できます。また、Dが最初からCを騙すつもりでこの契約を結んでいたのすれば、不法行為により損害賠償も請求できるでしょう。
また、契約通りDに債務の履行も求めることもできます。Cのためにその家の所有権移転登記をしろ、ということですね。

 (*2003年12月1日)

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  第5回目         債権の話

 2回物権に関しての話をしたので、今回は債権についての基本的な話をしようと思います。

 債権とは・・・「第2回目」のときもでましたが、簡単にいいますと「人に対する権利」です。
人に〜させる〜してもらえる権利と考えていいでしょう。

債権と債務は表裏一体ですので、一緒に考えます。
一例を用いて、債権について見ていきましょう。
例:AさんはBさんから10万円で時計を買いました。
@物権
なんどか話しました物権について少し見てみましょう。この時計の最初の所有権者はBさんです。それが、この売買により時計の所有権(物権)はAさんに移ります。

A債権
AさんはBさんに対して債権を持っています。「時計を渡してもらう」ということです。
また反対に、AさんはBさんに対して債務を持っています。「10万円払う」というものです。
Bさんからみると、Aに対して「10万円払ってもらう」という債権と「時計を渡す」という債務を持ちます。

ちなみに、債権を持っている人を「債権者」、債務を負う人を「債務者」といいます。
上の例の場合は、ABとも見方によってどちらも、「債権者」「債務者」となります。

例:CはDに10万円を貸しました。その後、10万円を返してもらうように請求します。
 CはDに対して、債権をもっています。わかりましたでしょうか?
Dに対して「10万円返してもらう」ということです。
反対にDはCに対して「10万円を返す」という債務を負います。
この場合、Cが債権者、Dが債務者ですね。
また、債務者(この場合D)がすべき一定の行為(10万円返す)を“給付”と呼びます。

債権となるのは、とくに金銭に見積もることが出来るものである必要はありません。「絵を描いてもらう・料理を作ってもらう・一定期間パソコンを使用しない」など多くのものがあります。
これらの債権は、大体「契約」によって発生するものです。契約以外では不法行為・時効取得などで債権が発生することもあります。

「人に対する権利」が債権ですが、この債権にはいくつかの種類があります。
最初に「特定物債権」と「種類債権」です。
「特定物債権」とは、その名の通り、債権の目的物(引き渡される物)が特定している物です。この家でなければ駄目だ、とか、この木材である必要がある、など、債権の目的物が特定している場合が特定物債権となります。
目的物の個性に着目している債権を特定物債権といいます。

反対に目的物の個性に着目しない―コシヒカリのお米何グラムというように、債権の目的物が種類と数(量など)だけで、はっきりと特定していないのを「種類債権(不特定物債権)」と呼んでいます。
ただ、「種類債権」といっても、最終的には目的物を特定しなければ、引渡しなど出来ませんから、ある一定の行為がありますと種類債権は特定することになります。
この一定の行為とは・・・
@当事者の合意により給付すべき物を指定したとき
A債務者が物の給付をなすに必要な行為を完了したとき
と法定されています。
Aの例は、コシヒカリ10kgを渡せるように分けて、いつでも渡せることが出来る状態になったとき、と考えればいいでしょう。債権者が受け取れば、受け取れる状態になったときに種類債権が特定することになると考えられています。

さてさて、「特定物債権」と「種類債権」があることはわかりましたけど、なにが違うのでしょうか?
@まず、第1に、特定物債権の債務者は目的物を引き渡すまで「善良なる管理者の注意をもって」その物を保管しなければなりません。善管注意義務と呼ばれているもので、「自己の財産と同一の注意」以上の注意をもって管理にあたらなければなりません。これをおこたると、過失が認定され、損害賠償の原因になります。

A特定物債権の目的物は、現状で引き渡すことになっています。つまり、その目的物が壊れていたりしても、それをそのまま引き渡せば良いということです。
特定物債権の目的物は、それ一つしかありませんので、現状で引き渡せばいい(現状で引き渡すしかない)ということになっているわけです。だからといって、壊れている物を渡す方になんの責任もないわけではありません。債務不履行等問われたりします。

B第3として、危険負担の問題があります。特定物債権は、債権者が危険(損害)を負担しなければならないことになっています。
つまり、購入した別荘が引き渡される前に、債務者(売主)の責任なく壊れたような場合(落雷、関係ない第三者による放火)は、債権者(買主)が責任を持つことになり、壊れた別荘の代金を支払う必要があります。壊れて使えないのに!と言っても危険の負担は特定物債権の場合は、債権者が負うことになっているのです。

種類債権も特定すると、特定物債権と同じようになりますので、善管注意義務・危険負担の債権者主義、などと同じようなことが起こります。


「金銭債権」―その名のとおり、債権の目的物が金銭の場合です。
この金銭債権の特徴は、特別な約束がない場合は、金銭の種類にこだわらず、各種の通貨で支払いしていいことが一つ(約束がなければ、100万円払うのに1万円札100枚でもいいし、1000円札1000枚でもいいということ)と、この金銭債権には履行不能がないことがもう一つの特徴です。
後者の例として、債務者には履行不能(お金が消滅したなど)がありえませんから、不可抗力による抗弁が出来ず、債権者は損害を立証しなくても、損害賠償を請求できることになっています。

「選択債権」
二つのうちのどちらかを買う、のように、数個の給付のうちから選択によって給付を定める目的の債権を選択債権といいます。
特徴として、選択する人は、約束があればその人、なければ債務者が選択することになっています。選択者がいつまでも決めなければ、相当期間を定めて決めるように催告し、それでも、選択しないのなら、選択権はもう一方の当事者に移ります。

最後に次の問題を考えて見ましょう。
@お米10kgを5000円でという契約をした場合、お米を売る人はどんなお米でもいいのでしょうか?
AAはBから、赤い車か青い車のどちらかを買う約束をしました。何の約束もない場合、赤い車か青い車のどちらかを選ぶ権利はだれにあるでしょう?


@どんなお米でもいいわけではありません。どういうものがいいか決めていないときは、債務者は中等品質の物を渡さなければならないことになっています。

A債務者、つまりBのほうにあります。Bがいくら催告しても選ばないときは、Aに選択権が移ります。

(*2003年12月21日)

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 第6回目          契約が成立するには

 前回は、債権の話と称して、債権とは・・・債権の基本的な事柄を学問的に見ていきました。
 今回は、債権発生原因の一つであり大元、より身近な事柄である契約―その成立について、見ていこうと思います。

 当たり前かもしれませんが、契約は、一人ではできません。二人以上の権利能力を有する者の約束が契約となるわけで・・・。
 民法上、契約が成立するためには、
相対立する2つの意思表示の合致」があること、が必要です。
車を買うにも、買いますという意思表示と、売りますという意思表示が合わさることにより、契約が成立するわけです。(申し込みと承諾の意思表示の合致
 契約には、意思表示が必要です。この意思表示は、契約の内容がわかる―契約の内容が特定できる意思表示であることが必要です。
 例えば、「私は本が欲しい」と本屋さんに言った(意思表示)とします。しかし、どの本が欲しい、幾らの本が欲しいのか、ただ、本が欲しいと言っただけではわかりません。つまり、ただ、本が欲しいと言ったぐらいでは、契約成立の意思表示とはならないということです。
 契約の内容―特に重要な内容がはっきりする(特定する)意思表示がなければ、契約成立のための意思表示とはいえません。
 先ほどの例で「私はこれこれの本が欲しい。値段はこれこれなら買います。」と他の人が聞いても分かるような内容ならば、それは契約成立に当たる意思表示といえるでしょう。
 つまり、契約といえるには、当事者が契約の重要な部分の内容がわかっており、それに関して、きちんとした意思表示がなければならないわけです。
そういう意味では、1歳の赤ちゃんは契約の当事者にはなれません。契約の内容がわかるのなら話は別ですが、赤ちゃんにはわからないでしょう。お金の価値もわかりませんし、そもそも契約の意味すらわからないかもしれません。自己の行為の意味がわかるかという意思能力があるかは重大です。意思能力のない法律行為は、(今回は契約ですが)無効です。
例えば、お酒を飲んでなにをしているのかわからない状態で契約を結んでも、その契約は無効ということです。契約の重要な部分を理解した意思表示ができないからです。
ただし、特別な場合では有効になる可能性もあることは言っておきます。

 契約ははっきりした内容で結ぶ必要があります。しかし、現実には曖昧な契約が多いのが実情であるでしょう。それが、法律上契約と言えるかは、ケースバイケースで考えなければいけません。
基本的に、契約に関して重要な部分―例えば、お金はいくらか、どれを買うのか、がはっきりしていないものは、契約が成立しているとしても、ほとんど意味がないといえるかもしれません。
そもそも、契約は、お互い約束事を守るという意味でします。つまり、約束を破れば、それ相応の責任を負ってもらうというわけで、日本のように、自己救済を禁止している所では、相手が約束を破ったに関わらず責任を負わないときは、裁判所に訴えるしかありません。そのときに、曖昧な内容―特に重要な部分が曖昧では、
裁判所は判決の出しようがなく、訴えが却下されたり、訴えの理由がないと言うことで棄却されたりします。契約が成立しているのかも重要ですが、その契約の内容そのものも重要というわけです。
民法の基本に「私的自治」があります。つまり、一般的に契約は当事者の自由で決めれるというわけで、内容が曖昧でも、どんな極端な内容でも、契約は成立してしまう可能性もあります。意思表示がなければ無効といっても、証明は難しいと言わざるをえません。
 契約を結ぶときは、くれぐれも慎重にすることが必要です。
(*2004年1月10日)

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  第7回目             債務不履行

 今回も、債権に関連する話です。債権に関連する所でも債務不履行は重要な部分であります。

債権は人に対する権利と言いました。相手に、〜するよう請求できる権利です。身近では、お金を返せ、お金を払えなどですね。この場合、相手は、お金を返す、お金を払う義務があります。債権の反対であるその義務のことを債務と呼びますが、その債務を正当な理由もないのに、履行しないこと(行わないこと)を『債務不履行』といいます。
 債務を(正当な理由もないのに)履行しないこと―言葉どおりですが、この『債務不履行』には、3つの種類があります。
 一、履行遅滞
 二、履行不能
 三、不完全履行
一つずつ当たっていきましょう。

一、履行遅滞
 言葉の通り、債務の履行が遅れていることです。
期限が過ぎているなど、債務の履行が出来るのにしない場合、していない場合は履行遅滞として債務不履行になります。本来すべき義務を遅れて行わないなら、何かの責任を負わせる必要があるでしょう。しかし、理由があり、履行が遅れている人まで責任を負わせるのは酷です。そのため、履行遅滞となるための要件があり、その要件が揃うと、履行遅滞として債務者は責任を負うことになります。
 その要件とは、
@債務を履行できるのに、債務の履行期を過ぎても履行を行わないこと。
履行期と履行遅滞に関して民法412条にあります。
 確定期限(5月14日までに など)があるときは、その期限が過ぎれば、履行遅滞になります。
 不確定期限(Aが死んだら土地をやる など)の場合は、債務者がその期限の到来を知った日から履行遅滞になります。
 期限を定めなかったときは、債務者が履行の請求を受けたときから、履行遅滞になります。
A債務の履行をしないことが違法であること。
 つまり、正当な理由があれば、履行遅滞として責任を負う必要はなくなります。
正当な理由には、売買契約など100万ちゃんと払うまで車は渡さないというような(同時履行の抗弁権)場合のときです。
B債務者の責に帰すべき事由があること。
 債務者に故意(わざと)・過失(不注意)があるとき…つまり、履行しないことに関して債務者側に問題ある場合は、責任を負わないといけません。天災などで交通機関がストップしているため、持っていけないというようなときなど、債務者の責任でなく、履行が遅れる羽目になったときは、履行遅滞として責任を負わなくていいとなります。


以上のように、債務者が期限を過ぎているのに(又は、請求されているにもかかわらず)理由もなく、債務を履行しないときは、履行遅滞として債務者は責任を負うことになります。
この履行遅滞に対して、債権者は、債務者に履行を遅れたことによる損害賠償を請求できます。

二、履行不能
 これも言葉の通り、履行が出来ないこと、債務者の責任により履行が出来ない状態になることを履行不能といいます。
 債権の成立後に債務者の責任で、例えば、故意で車を壊してしまい渡すこともできない状態、履行することが不可能になってしまう場合を履行不能といいます。
 履行遅滞と重なる場合、債務者の責任で履行遅滞となった後に、債務者に責任はないのに履行不能となった場合でも、債務者に責任があるとされます。
例えば、期限が過ぎても正当な理由もないのに債務者は家を渡さなくて、その後放火されてしまい家が燃えてなくなってしまった場合です。

三、不完全履行
 ある製品を10個渡すという債務を履行したが、10個のうち3つ壊れていた。のように、履行はしたが、その内容が不十分の場合を不完全履行(完全な履行を終えていない)といいます。この不完全履行として、債務者が責任を負うのも他と同じく、債務者に責任があり正当な理由なく、不完全履行を行ったときです。

以上のような、債務者の責任で債務不履行(遅滞、不能)となったときは、債務者は責任を負わなければなりませんこの責任は金銭賠償が原則となっています。この責任の範囲は、債務不履行により、通常生ずるべき損害 となっています。また、特別な事情によって生じた損害も債務者がその特別な事情を知っていたか、知ることができたときには、その損害も賠償の範囲にあたります。例えば、昔のおもちゃで今売れば50万円ほどするのを知っていて、返還の請求を受けたときにその借りていたおもちゃを壊してしまって返せないときには、その返す義務がある債務者は特別な損害(50万円)を賠償する責任を負います。
債務不履行に当たり、債権者にも過失があるときは、裁判所は賠償金額を定めるに当たり、その過失を斟酌(考慮)しなければいけないことになっています。
また、債務不履行による損害賠償の額があらかじめ決めているときは、裁判所はその額を増減できません。

契約などで損害を受けた場合の一つの法的な請求原因としてこの債務不履行があります。債務不履行による損害賠償責任ができる場合に、不法行為による損害賠償責任を問える場合もあります。どちらで、請求するのがいいのか?二つの違いについて少しだけ見ておきます。

まず、債務者に責任がある―故意・過失の立証責任は債務不履行のときは債務者が負い、不法行為のときは債権者が負わなければなりません。
債権者の過失があるときは、裁判所は債務不履行のときはその過失を斟酌しなければなりませんが、不法行為のときはその過失を斟酌できるにとどまります。
時効は、債務不履行が10年、不法行為が損害及び加害者を知ったときから3年(行為のときから20年の除斥期間がある)です。
というような違いから、立証責任の程度・時効の観点から債務不履行で請求すればいいのか、不法行為で請求すればいいのかが問題になるわけです。
(*2004年1月15日) 

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 第8回目          贈与とその効果

 ここから、しばらく具体的な契約の内容に入ろうと思います。
今回の「民法に入る2」は民法条文どおりでなく、単発的にお話していることにはお許しください。

 さて、具体的な契約一つ目は、贈与です。
贈与とは、ただであげるということですが、これも契約である以上、契約の成立要件である相対する二つの意思表示の合致が必要になります。
 贈与契約が成立するには、贈与者の「ただであげる」という意思表示ともらうほうの「ください」という承諾が必要になります(民549条)。
ただでもらえるのなら、もらうほうの「ください」という承諾は別になくてもいいじゃないかと思われるかもしれません。ただ、承諾という要件をなくしてしまうと、いらないものまでもらうことになりかねません。ゴミなど、あっても邪魔な物をもらうのも嫌でしょう。そのため、「あげる」という意思と「もらう」という意思があって、贈与契約が成立することはおわかりになるでしょうか。
 さて、契約に関係する一般的なことですが、契約を結ぶとき、口だけの約束でもいいのでしょうか?
 もちろん、かまいません。しかし、大勢の人が契約は書面でしたほうが良いと言うでしょう。それは、なぜなら、争いになったときに問題となるからです。口だけなら、相手側が反対のことを言ってしまったら、それは違う本当はこうなんだ、と証明するのは難しいと言わざるを得ません。書面として残していたら、違うことを言っても相手が嘘を言っているんだな、と書面をみれば分かります。
 誰もが、嘘をつかず誠意に約束を守るのなら、書面に残す必要なんてないのですが、実際は違います。やはり、後のことを考えても、契約は書面でした方がいいでしょう。
 特に、この「贈与契約」は口だけと、書面でする場合とはっきりとした違いが民法上でも規定されています。
つまり、口だけで贈与契約をしますと、いつでもその贈与契約は取り消すことができることになっています(民550条)。
 例えば、AさんがBさんに「100万円タダで上げよう」といって、Bさんが「じゃあください」といったとします。しばらくたって、Aさんは「やっぱりやめた」と言ってもBさんは何も言えません。口だけの贈与はいつでも取り消すことができるからです。
贈与ほど、口約束はあてにならないものはないでしょう。
ただし、口約束でも一度、渡してしまったらその後「やっぱりやめた」とは言えません(民550条但書き)。上記の例でも、Aさんが100万円Bさんにあげた後、「やっぱり返してくれ」と言っても、Bさんは返す必要なないということです。別に返しても構いませんけど。法律上は返す必要はありません。
 それなら、こういう場合はどうでしょうか。
上記の例で、Aさんは100万円のうち、50万円はBさんに渡しましたが、残りの50万円はまだ、渡していません。その後、Aさんはやっぱりあげるのをやめることにして、Bさんに「やっぱりやめた」と言いました。Bさんは50万円を返すのでしょうか?また、残りの50万円はもらえるのでしょうか?
 先ほども言いましたように、一度約束どおりあげた以上、もらった50万円は返す必要はありません。しかし、まだ、もらっていない50万円はもらうことはできません。法律も「但し、履行の終わりたる部分についてはこの限りであらず」、つまり、口約束の贈与はいつでも取り消せるが、履行の終わった部分は、取り消せないということで、反対から見れば、履行の終わっていない部分は取り消せるということです。つまり、Bさんはまだもらっていない50万円はもらえません。
 口約束の場合は、いつでも取り消せることが法律で定められていますが、書面の場合についてはそういうのがありません。つまり、書面の場合は勝手な取り消しはできないと考えられます。相手が「やっぱりやめた」と言っても、その書面を持って、「ください」と言えます。
 次に、CさんはDさんにCさんが使っていた車をただであげるといいました。Dさんもその車を欲しいなと思っていたので、喜んで「ください」と承諾しました。さて、約束どおり、DさんはCさんから、その車をもらいました。そして、Dさんは車に乗ってみましたが・・・壊れて動きません。さて、Cさんに何らかの責任はあるのでしょうか?
 民法551条に「贈与者は贈与の目的の物または権利の瑕疵欠陥について責任を負わない。ただし、贈与者が瑕疵欠陥を知りながら告げなかったときはこの限りにあらず」とあります。
 つまり、Cさんがその車が壊れていることを知っていて、言わなかったときはCさんはDさんに責任を負わなければなりません。賠償責任や契約の解除などが考えられます。反対にCさんが壊れているのを知らなかった場合、また、Dさんが知っていた場合はCさんは別に責任を負わなくても良い、ということになります。
「ただであげる」「ただでもらえる」・・・・・・注意が必要です。

 さてさて、話はもとに戻りますが、前の例でAさんはBさんに100万円を上げると言う話で、BさんがAさんに言われた物を買ってきてくれたら、100万円あげようという話になっていたとします。いわゆる負担付贈与というものです。
負担付贈与の場合は負担の範囲で売買と同じようなものと考えられています。つまり、書面での契約でも、BさんがAさんに言われた物を買ってこないのなら、Aさんは100万円渡す必要はありませんし、口約束でもBさんが負担の義務を果たした後では、Aさんはやっぱりやめたと言えなくなります。
負担の範囲で―という意味は、貰う方が負う負担が例えば30万円の価値しかないのなら、あげるほうはその30万円の範囲で債務を負う、ということです。
例えば、口約束の贈与で上記のBさんの負担の範囲が30万円の価値しかなかったとしましょう。Aさんは「やっぱりやめた」と言いました。しかし、それでもBさんは30万円はAさんからもらえます。しかし、残りの70万円は口約束の贈与―いつでも取り消せるという規定のため、もらえなくなります。

 次に、死因贈与というのがあります。贈与者が死んだときにそのものをあげようというような例です。相続・・・遺贈(遺言)に似ているので、この死因贈与は「遺贈に関する規定に従う」と民法でも定められています。
ここで、問題になるのはこの死因贈与と遺言は何が違うかということです。
一つ目に、死因贈与は契約です。つまり、あげる方の約束と貰う方の承諾があって、初めて契約の意味を為すわけですが、遺言は遺言者の意思だけで、貰う方の意思(承諾)は必要ありません。
二つ目に、遺言はいつでも取り消すことが出来ることになっているのですが、死因贈与も遺贈に関する規定に従う以上、この遺言取り消しにも関係します。死因贈与の契約をした後に、遺言書で取り消すことができるというわけですが、これに関しては少なからず、争いがあることを付け加えておきます。契約を重視するか遺言を重視するか難しい問題です。ただ、負担付の死因贈与の場合で、貰う方がその負担を履行していた場合は、後の遺言で死因贈与を取り消していても、負担の範囲で貰う方は約束どおり貰えると考えられています。

 最後になりますが、次の場合のことを少し考えてみましょう。
友人Eから、突然1億円あげようと言われた。
さて、どうなるでしょう?
その友人が大金持ちな人ならともかく、普通なら冗談だと思うでしょう。
心裡留保という規定があって、冗談であげる(贈与する)という意思表示をした場合でも、原則有効となっています。ただし、相手側(貰う方)が冗談だと知っていた場合や冗談だと考えれば分かる場合は、無効というものです。
 これから、考えると、友人Eの贈与の意思は原則有効です。つまり、1億円くださいと言えるわけですが、この場合は、冗談だろう?と分かっている(考えれば分かる)わけですから、この話は無効ということになります。
ただ、貰う方が本当のことだと信じて疑いもないときは、有効になるやもしれません。「ただであげる」―言うときには、後のことを考えて言いましょうね。

(*2004年2月2日)

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  第9回目            売買とその効果

 具体的な契約2回目、今回は『売買』についてです。
この『売買』は、私たちの日常の中で一番なじみのある契約であると言えます。
スーパーでの買い物、日用品の購入、食品の購入など、日々の生活に必要な物の購入がこの『売買』にあたり、一番なじみのあるものということが分かると思います。
 さて、この『売買』契約が成立するためには、
当事者の一方(売主)がある財産権を相手側に移転する(渡す)ことを約束し、相手側(買主)がこれに対し、代金を支払うことによりその効力が発生する」(民555条)ということより、物などを渡す・お金を払うという二つの意思表示の合致が必要になります。
つまり、売主・買主のうちどちらかが、財産権の移転・お金の支払を約束する意思表示をしなければこの『売買』契約は成立しないわけです。もう少し簡単に言いますと、一方的な売買はありえない、勝手に売りつけて勝手にお金をとることはできない(この反対もあり)、物を売る・それを買うという2つの意思表示があってはじめて『売買』契約は成立するのです。
 555条の条文について、少し説明を加えておきますと、売買の目的物(財産権)は、財産的価値があり、譲渡可能なものならOKです。例えば、鉛筆や建物のような目に見える物だけでなく、特許権・地上権なども売買の目的物にあたります。
契約の成立には、特に書面でする必要はありません。日常の購入には契約書なんて作りませんし、食料品を買うごとに契約書を作るのも面倒です。売買契約書は、後日の紛争を防止するために作ると言ってもいいでしょう。ただし、契約書の作成を法律が要求しているものもあり、その場合は契約書がなければならないと考えられます(契約書の作成を持って契約が成立すると考えられる)。
これに関連することとして、訪問販売による場合は、売主は契約が成立すると契約書面を買主に交付しなければならないことになっています。この書面の交付がなければ、買主はいつまでもクーリングオフができると考えられます(別に書面の作成が契約要件ではない)。
売買の契約は2つの約束の合致により成立します(諾成契約)。

『売買の予約』というのも一般的に使われています。
『売買の予約』は、当事者間に将来、売買契約(本契約)を生じさせるための契約で、一方が本契約の締結を望んで申込み(意思表示)すれば、相手側は承諾しなければならないもののことです。
難しく言えば、以上の通りですが、予約という言葉は現実的にはよく使われていますね。発売日前に注文を受けるというのがよくあります。でも、これは、法律上の売買予約とは意味が違うと考えられます。商品がないために予約をするので、契約自体は既に成立しているものと考えられるからです。
民法上は予約については、556条にあります。
一方が本契約を成立する意思表示があれば、直ちに売買が成立する(556条1項)という売買の一方の予約が民法上にあります。また、これに関連することで、予約完結の意思表示が出来る期間が定まっているときは、その期間を超えると、予約完結の意思表示はできなくなるという規定もあります(556条2項)。
予約に関しては、この程度にして・・・
次に手付について少し。手付は売買契約締結の際に(特に)買主が一定額支払うものですが、この手付の意味は民法上得に特約がない限り、解約手付とされます。つまり、買主はこの手付金を放棄することで契約を解除でき、売主は受け取った手付金の倍額を返還することで契約の解除が出来ます。
だたし、この手付放棄の解除が出来るのは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでです。これは、債務の履行の準備を行った者を保護するための規定です。現実に渡していなくても、渡す準備が出来ているのなら、履行の着手にあたり、解約手付による契約の解除はできません。
また、解約手付の解除による賠償請求はできません(損害の発生が考えられない・債務不履行とは違う)。

 売買契約が成立しますと、当事者に債権債務が発生します。
売主は物を渡さなければなりませんし、買主はお金を支払わなければなりません。
ただ、売主、買主とも特別な約束がない限り、物を渡してもらうまで、お金の支払を受けるまで、自分の債務を履行しないと言えます(同時履行の抗弁権)。
また、どちらかに故意・過失の責任がでれば、債務不履行の問題が出てきますし、どちらにも故意・過失なく、損害が出れば危険負担の問題として処理されます。
この他に、『売買』には、売主の担保責任の規定があります。
買主は目的物を買うためにそれに対応するお金を支払うわけですが、その買うべき目的物に問題があったりすれば、全額そのまま支払うのもためらいますし、平等の原則に反します。お金には、瑕疵(かし)は考えられませんが、物には瑕疵が考えられます(動かなかったり、傷がついていたり)。売主は買主に渡すべき目的物を完全な物として渡す義務があります。そのために売主には担保責任があります。
担保責任は次の場合があります。
@売買の目的物の権利の全部が他人に属する場合
他人の物を売るという約束も有効です。この場合、売主はその他人からその物を取得して買主に移転しなければなりません。買主に移転ができないときは(売主が他人からその物を取得できなかった等)、売主は担保責任を負います。
買主は善意のとき(売買の目的物が他人の物であると知らないとき)は、契約を解除し、損害賠償を請求できます。買主が悪意のときは契約の解除が出来るだけです。これについて、期間の制限はありません
 例として、Aさんは甲の土地をBさんに売り渡すという売買契約を結びました。しかし、その甲の土地はAさんの物でなくCさんのものでした。。
 1.他人の物を目的物とする契約も有効です。Aさんは甲の土地をCさんから取得して、Bさんに渡さなければなりません。
 2.AさんがCさんから甲土地の取得ができなくて、Bさんに渡せないときは、担保責任として、Bさんは善意(知らなかった)なら解約解除及び損害賠償請求ができ、悪意なら契約解除ができます。
 3.Aさんが甲の土地をCさんの物であることを知らなかったときは、Aさんは損害の賠償をして、契約の解除が出来ます。この場合、Bさんが悪意ならAさんは損害賠償しなくても解除できます。

A権利の一部が他人に属するとき
 上記の例で、甲の土地の一部がCさんの物であった場合です。この一部の部分をAさんが取得してBさんに渡せないときは、Aさんは担保責任を負います。
 Bさん(買主)は善意悪意に関わらず、不足部分(移転されない部分)に対し、代金の減額請求ができます。Bさんが善意で、そのことを知っていたら買わなかった場合は契約の解除ができ、また、賠償請求もできます。悪意のときは、契約解除・損害賠償請求はできません。BさんがAさんの担保請求を追及できる期間は、Bさんが善意のときは知ってから1年間、悪意のときは契約時から1年です

B数量の不足・一部滅失の場合
 ある土地を1平方あたり10万円で10平方を100万円で買おうとしたとき、実際は9平方しかなかった場合や蔵書一式を購入したところ、目録中の資料の一部が契約時に既になくなっていた(滅失していた)場合に、売主は担保責任を負います。
買主は善意なら、不足部分の代金減額請求や損害賠償請求ができ、不足であることがわかっていたら買わなかった場合のときは契約の解除ができます。
買主が悪意のときはこれらの権利を有しません
善意の買主は不足のことを知ったときから1年の権利行使の制限期間があります


C用益権等の制限
 例えば、家を建てる目的で土地を買ったところ、その土地に対抗力のある賃借権の目的となっていたため、家が建てられないような場合です。
売買の目的物に地上権・永小作権・地役権・留置権・質権(対抗力ある賃借権も)が設定されていて、買主がその目的物を利用できないとき、売主は担保責任を負います。
これも、買主が善意の時に限り、損害賠償請求ができ、それにより目的が達成できない場合は契約の解除が出来ます。悪意のときは駄目です。
期間も知ってから1年です。

D先取特権・抵当権の制限
 購入した土地に先取特権または抵当権があって、それが行使されたため買主が権利を失った場合に売主は担保責任を負います。
 抵当権の実行により、権利を失った買主は善意悪意に関わらず、契約の解除をして、損害賠償請求ができます。また、買主がお金を払って抵当権を消滅するなど所有権の保全をした場合は、その費用の償還請求と賠償請求ができます
これは期間の制限がありません

E物に隠れた瑕疵(かし・傷がある)がある場合
 パソコンを買ったところ中で不都合があり、ちゃんと動かない。ちゃんと調べて家を買ったのに、見えないところに傷があったなど、売買の目的物に隠れた瑕疵―傷があった場合に売主は担保責任を負います。(瑕疵担保責任)
 買主は善意のときに限り、損害賠償請求ができ、そのために目的がたっせいできないときは契約の解除ができます。悪意なら駄目です。善意の買主は知ってから1年の期間の制限があります。

以上のように、売主はきちんとした物を買主に渡し義務がありますが、
買主には代金の支払義務があります。支払場所に関しては約束がある場合はその約束の場所ですが、ない場合は「売買の目的物の引渡しと同時」にまたは「債権者の住所」になります。
また、買主は目的物の引渡しを受けた日から代金の利息を支払うべき義務を負うという規定もあります(民575条2項)

最後に「買い戻し特約」に付いて少し触れてきます。
これは、「不動産の売主が、売買契約と同時に買戻しの特約を結んだ場合」は、売主は代金と契約費用を返還して解約の解除が出来ます。買戻しの期間は10年を超えることが出来ず、一度決めた期間を伸ばすことも出来ません。期間を定めなかったときは5年内にしなければなりません。また、登記がないと第三者に対抗できません。

ちなみに、売買契約に関する費用は特約がない限り、当事者が半分ずつ負担します(民558条)。

また、お金でなく物による交換の場合は、「売買」でなく「交換」です。

 売買は、問題が出てくると多くの法律の適用が考えられます。担保責任・債務不履行など色々な請求が出来たりします。
法律を少しでも知ることで、泣き寝入りを防げればいいですね。
(*2004年2月24日)

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  第10回目            消費貸借とその効果

 具体的な契約3回目、今回は「消費貸借」です。
「売買」と同じく、「消費貸借」もなじみの深いものです。特に、商工ローン、消費者金融でお馴染みの「金銭消費貸借」は、現代の社会では、切っても切り離せないものになっています。被害などの問題も多いですね。
 
 さて、消費貸借については民法587条にあります。
消費貸借は、当事者の一方が(借主)同種・同等・同量の代替物を返還することを約束し、相手側(貸主)より金銭その他の物を受け取ることによりその効力が生ずる」
 つまり、ある物を借りて返す約束があれば、消費貸借契約にあたるということです。『金銭その他の物を受け取ることにより』から、借主が、貸主からのその目的物を受け取って初めて、消費貸借契約が成立します(要物契約)。(ただし、諾成的消費貸借←契約自由の原則から認められていると解されている・要物性の緩和などの例外のような内容もある)
 ( )の例外を除いては、話し合いで契約が成立するのでなく、物を借主が受け取ったときに契約が成立することに消費貸借(要物契約)の意義があります。
 さて、この民法587条を見て、気がついたかも知れませんが、消費貸借の発生要件に「当事者の一方(借主)が・・・・・・・返還することを約束し」というのが、あります。裁判で問題になるところなのですが、借りたけど返す約束がないのなら、消費貸借契約は成立していないのではないか?という話が出てきます。もう少し突っ込んで言うと、返す約束がないから、これは消費貸借契約でなく、贈与契約だ(つまり返す必要はない)。ということが、相手側(借主)から主張されるおそれがあるのです。しかし、一般的に「貸す」という言葉には「返す」という意味が含まれていると考えられているでしょう。だが、この587条の条文を見てわかるとおり、返す約束をしておかなければ、貸した物(お金)が戻ってこないこともありえます。
もうひとつ、特に金銭消費貸借―友人間でのお金の貸し借りには、せひとも書面で残しておくことを注意しておきます。多少のお金なら必要ないかもしれませんが、10万、100万単位になると書面がなかったばかりに、裁判しても返ってこなかったというふうになれば、ショックです。なので、ぜひとも次のような借用書(書面)を作るようにしてください。
100万円貸す場合の例。
   金銭借用証書
 1.金百万円を借用しました。ついては、5%の利息をつけて、平成○年○月○日かぎりにお返しいたします。
  
  平成○年○月○日
                      借主 住所
                          氏名(印)
 貸主 住所
     氏名      〜殿                      
         」
相手側(借主)の住所・氏名(特に氏名)は、必ず相手側にかいてもらってください(署名してもらう)。あと、ハンコも押してもらう方がいいでしょう。なければ、拇印でもいいです。実印で印鑑証明をつければ、さらに良いです。
 貸す方はここまでしておかないと、後々面倒なことになりかねません。心がけておきましょう。
 さて、話を戻しますが、消費貸借の目的物は一般的に金銭が多いですが、他にお米・しょうゆなどの調味料などもあります。消費貸借という言葉から見てもわかるように、借りた方がそれを消費(使う)ことが前提にあります。つまり、消費してしまって無くなってしまうのですね。それを、あとから同等の物で返還します。もちろん、借りた物が残っていたらそれを返すことになるでしょう。借りた物が無くなったときは、同種・同等・同量の物を返すことになります。 例えば、5kg2000円のお米で1kgの消費貸借をしたとしましょう。借りた方は使うために借りたのですから、その借りたお米はすでに使ってしまています。ないのなら返すことができません。しかし、それでは消費貸借の意味がないわけで、借主は同種・同等・同量の物を返還しないといけません。この場合なら、借主は5kg2000円の価値のお米(できれば品種も同じ)を用意して、貸主に返さないといけません。もし、同種・同等・同量の物の返還が不可能(すでに、販売中止になっているなど)なら、お金で償還しないといけません。この場合は400円ですね。
金銭消費貸借のときは、この問題はないでしょう。借りたお金を同じ金額返すことになりますので。
 次に、返還時期について。
期間を決めれば、その期間までということになりますが、期間を決めなかったら、借主はいつでも。貸主は相当の期間を定めて返還の催告をしないといけません
つまり、貸主から見れば、例えば「2週間後に返してください」というように催告してからでないと、返還の請求はできません。急に「今すぐ返せ」とは言えないという意味ですね。返還時期の定めがない場合です。
 次に、利息について。
民法は特に特約がなければ、利息支払義務は発生しません(商法の商人間では当然に利息付きとなる)。
金銭消費貸借では、身近な人の間を除けば、ほとんど利息付でしょう。
利息付でも、特に定めがなければ年5%(民法)、年6%(商法)の利率によります。また、利息制限法という法律で利息の上限が制限されています。

 元本が10万円未満の場合 年2割(20%)
 元本が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分(18%)
 元本が100万以上の場合 年1割5分(15%)


これを超過する利息については、無効です(ただし、貸金業者が行う所定の書面を交付した場合での、利息を任意に払った場合は超過利息の支払も有効な弁済としてみなされる。という規定に注意)超過する利息を支払った場合は、元本に充当するのが現在の考え方です。
 この超過利息の元本充当により、救われる事もあると思います。有効に利用しましょう。
 最後に、この超過利息の元本充当の例を。

 AさんはあるBさんから年率40%の利息で60万円借りました。AさんはBさんから毎月末日に利息分として20000円返還する約束をしました。その後、Aさんは20000円を5回返しました。

 というふうな例です。さて、まずこの場合の年の利息は60万×40%=24万円
で、月に換算すると 24万÷12=20000円です。ですから毎月20000円返しても一向に元本は減らないということになります。しかし、利息制限法を越える部分は元本に充当されることになりますと、話が変わります。
借りたお金が60万円なので利息制限法によると利息年18%。
つまり、60万×18%=108000円(年)。月に直すと 108000÷12=9000円。
 1ヶ月目 返還20000円 制限利息9000円 元本充当11000円 元本残高589000円。
 
 元本が減っているのがわかるでしょうか?
次に2ヶ月目は・・・。
 589000円の制限利息(月)は・・589000×18%÷12=8835円。
 2ヶ月目 返還20000円 制限利息8835円 元本充当11165円 元本残高577835円。
 というふうになります。制限利息をそのときの元本について計算するのがミソです。
 こうして、5ヶ月目は・・・。返還20000万円 制限利息8325円 元本充当11675 元本残高543324円
 となります。
 計算としては、ややこしいですが、利息制限法の超過分利息は全部元本に充当されていきます。こうしてずっと行くと知らないうちに、元本が0になっている可能性があります。もし、計算して元本が0になっているにもかかわらず、支払っていたら、その分は不当利得として返還請求できます。
 高利率でお金を借りた貴方。もしかしたら、すでに全部返しているかもしれませんよ?

 (*2004年2月28日)

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