法律連載 第五弾 著作権について学ぼう!
法律連載の第五弾は、著作権についてです。
著作権について、著作権法という法律があります。条文数は100条を越え、ボリュームのある法律です。
今回の第五弾は著作者の権利と、著作物等を無断で利用できる例外について見ていきます。
身近な著作権を、少しでも体験してください。
(著作権について簡単にまとめたページもありますので見てください。こちら)
目次:
第1回目 日々の生活の中に著作権は影響している!?
第2回目 著作物とその内容
第3回目 保護を受ける著作物と著作者
第4回目 著作者の権利〜著作者人格権
第5回目 著作権と無断で利用できる例外(1)
第6回目 著作権と無断で利用できる例外(2)
第7回目 著作権と無断で利用できる例外(3)
第8回目 著作権と無断で利用できる例外(4)
第9回目 著作権と無断で利用できる例外(5)
第10回目 著作権と無断で利用できる例外(6)
第11回目 著作権と無断で利用できる例外(7)
第12回目 お話!?です
第13回目 お話part2
第1回目 日々の生活の中に著作権は影響している!?
長い題名の第1回、この題名の通り、著作権は、我々の生活の中にいたるところにあり、そして、誰もが関わっています。
身近な例でいえば、コピー。
著作権を持っている人には、複製権というのがあります。複製権―無断で複製されない権利のことですが、私たちの日常の中では、コピー(複製)は当たり前のように行われています。テレビの録画、資料、文書のコピー、音楽の録音・・・などなど、コピー(複製)をしたことがない人の方が珍しいのではないでしょうか?
著作物には、著作権者(著作権を持っている人)の複製権があるので、皆さんは知らないうちに(?)複製権侵害をしていることに恐らく気づいていないでしょう。もちろん、すべて何もかも複製権侵害になるわけではなく、私的目的なら著作権者に無断で複製しても良いと法律でも規定されています。
しかし!この私的目的の複製は許されるといっても、かなり厳格に運用しなければいけません。例えば、個人で聞いて楽しむために音楽を録音しました。これならいいのですが、その録音した物を、文化祭の劇に使いました。アウトです。
劇で使うということは私的目的の範囲を逸脱していると思われます。つまり、本当に私的目的でないと、この私的目的の複製という著作権の例外規定は認められないわけです。
著作権は私たちの日常のいたるところにあるのですが、それは、誰もが著作権者になれるからであります。プロの作家や、芸術家だけに著作権があるわけでなく、普通の人にももちろんあります。幼稚園児や小学生にももちろんあります。
著作物を創作すれば、誰もが著作権を持てるのです。
なので、小学生が書いた絵にも著作権はあります。著作権があるということは、その絵を勝手に複製できませんし、展示も不可、下手だからとって他の人が書き加えたりすると同一性保持権侵害にあたるやもしれません。
権利については次回以降説明するとして、このように、誰もが著作権を持つことができるのです。そして、小説、漫画、音楽、ドラマ、映画等、私たちの生活には著作物が溢れかえっています。気づかずに著作権と関わっているわけです。
普段は何気なくしていることにも、著作権は関わっているわけで、私たちの生活に多大な影響を与えているといえます。
(*2004年8月25日)
第2回目 著作物とその内容
著作権があるといっても、何もないところにあるわけでなく、著作権に関す対象物があって、初めて著作権というものが認識できるわけです。難しい表現ですが、著作権の対象となる物―つまり、著作物とはどういうものか、どういった種類があるのか、ということを見ていきたいと思います。
「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(著作権法第2条第1項第1号)
著作権法で保護される著作物となるには、幾つかの要件があります。
まず第一に、「思想又は感情」が表現されていること。
自身の精神的な表現がいるということで、単なる事実(誰々が亡くなった、結婚した)や単純なデータ(富士山の高さは3776mなど)は、思想又は感情が含まれといなく、著作物になりません。
次に、「創作的」に表現されたものであること。
自分の意思(心)から何かを生み出すという創作が必要なわけで、真似した物(模範)は著作物になりません。ただ、真似をしていないのに、偶然同じようなのができた場合は著作物となりえます。どちらにせよ、自分の思想又は感情を創作的に表現しなければ著作物にならないわけです。
「表現したもの」であること
何ならの方法で外部に現さないといけません。その人の心の中に留まっているだけではいけなくて、紙に書いたり、大勢の前で喋ったりして、外部に出さないといけません。つまり、アイディアは著作物にはなりません。アイディアを表現した(アイディアの内容を書いた)本は著作物となりうるわけです。心の中で留まっているだけのものは著作物といえないということです。
四つ目として「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることが必要です。これにより、工業デザイン(産業上の利用を目的として製作されたTシャツの絵柄等*)は通常、著作物から除かれます。工業デザインは、芸術のために作ったものでなく、商業・販売目的で作ったものと判断されるために、著作物から除かれます。逆に、芸術として作ったものを、後からTシャツのデザインとして使ったとしても、最初が芸術として創作したわけなら、それは著作物になりえます。つまり、創作目的如何で著作物の対象になるかどうか決まるわけです。
著作物となるには、以上のような要件が必要ですが、難しく考える必要はないと思います。真似したものでなく、自分の考えで作った物の大半は著作物になると思います。小説、絵、手紙、写真、音楽など、思想感情を創作的に表現すれば、誰でもどんな物でも、著作物となりうるわけです。
(*文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものでないものは、著作物とはいえない。)
具体的な例を見ていきましょう。著作権法でも幾つかの例示があります。(これからあるのは、あくまで例示です。必ずどれかに属さないと著作物にならないわけではありませんのであしからず。)
@言語の著作物
言葉で表現した著作物で、小説、脚本、論文、歌詞などがあります。言葉で表現すればいいのですから、講演会の講演、スピーチなど、口頭で伝えるものも含まれます。
さて、ここでよく問題となるものがいくつかあります。キャッチフレーズや標語は著作物となるのか?キャッチフレーズ等は通常、著作物として否定されることが多々あるようです。単に言葉を羅列し語呂よく組み合わせたものや、ありふれた表現などは著作物として認められなく、長文や俳句調で作ったものなどは、ありふれたものでなく、場合により著作物となることもあります。
題号(題名)は著作物となるのか?通常なりません。もし、題号が著作物になるのなら、一度出た題号は、もはや誰も使えなくなります。「世界の中心で愛を叫ぶ」「ラヴァーズ」など、もはや誰も使えなくなるわけです。問題ありますね。
そういうわけで、題号は著作物にはなりません。ただ、勝手に題号を変えられないために同一性保持権(次回以降で説明)の対象にはなります。
A音楽の著作物
楽曲や歌など音で表現されたものです。特に問題はないでしょう。
B舞踏又は無言劇の著作物
ダンス、バレエ、パントマイムなど、思想感情を創作的に表現したものなら著作物になりえます。これは、「振り付け」に著作物性を認めているわけで、実際のダンスそのものは「実演」にあたります。
C美術の著作物
絵画、書、漫画、彫刻等がこれにあたります。先ほど話しましたように工業デザインは美術の著作物にならないことが多いです。工業デザインは「意匠」という方法で守ることもできます。あと、明朝、ゴシックなどの文字書体も、著作物となりません。判例でも、文字書体は「従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美術特性を備えていなければならないことを相当とする」とあります。
D建築の著作物
宮殿、城や寺、橋、塔などの建造物のことです。建築美が創作的に表現されていなくてはいけません。なので、通常あるビルや住居などはあてはまりません。
E地図又は学術的な性質を有する図形の著作物
地図や、図面、図表などです。建物の設計図もこれにあてはまります。
F映画の著作物
映画、CM、アニメーションなど、「録画されている動く映像」のことです。
G写真の著作物
写真のアングル、撮り方などに創作性があれば、著作物となります。
Hプログラムの著作物
そのまま、プログラムの著作物です。
ただ、プログラム言語、規約、解法は著作権法上、保護されません。
他に、翻訳や映画化、編曲などのもとある物から新たに創作した著作物(二次的著作物)や、編集自体に独創性がある編集著作物(雑誌、新聞等)、データ―ベースの著作物などがあります。
二人以上の者が、共同で作ったものは「共同著作物」と呼ばれています。
その他、憲法や法律、判例などは著作物ですが、著作権法上保護されないことになっています。
(*2004年8月25日)
第3回目 保護を受ける著作物と著作者
思想又は感情を創作的に表現し、著作物になったとしても、必ずしもそれが著作権法で保護される「著作物」になるとは限りません。なぜなら、著作権法第6条に「著作物は、次の各号のいずれかに該当するものに限り、この法律による保護を受ける」とあるからです。
次の各号―保護を受ける著作物は次の通りです。
@日本国民が創作した著作物(国籍の条件)
A最初に日本国内で発行された著作物(発行地の条件)
(最初に国外において発行されたが、その最初の日から三十日以内に日本において発行されたものも含む)
B条約により我が国が保護の義務を負う著作物(条約の条件)
以上の通りですが、いずれか一つに該当すれば保護を受けます。したがって、日本で保護されない著作物は、条約で保護の義務を負わない外国人が外国で発行した著作物、ということになりますね。日本では実際上、ほとんど見かけることはないと思います。ということは、私たちが日本で見る「著作物」は著作権法の保護を受ける著作物と思っていいでしょうね。
さて、次に著作者についてです。
著作者とは、「著作物を創作する者」のことです。法律でも定義されています。
よくQ&Aで見かけることですが、他人に依頼して(お金を出して)著作物を創らせたときは、依頼した方と、依頼された方とどちらが著作者になると思いますか?
答えは、実際、著作物を創作したほうです。つまり、依頼された方が著作物を創作するわけですから、依頼された方が著作者になります。お金を出した方ではないのです。著作物を実際に創作した人が著作者になるわけです。
著作物を創作した時点では、著作者に著作権があります。実際、創作した方に著作権があるわけで、著作物を別の人に創らせる場合は、著作権の譲渡等、契約を結んでおかないとその後、大変なことになりかねません。お金を払って著作物を創ったのに、相手側に著作権があるため、こちらの自由にその著作物を利用できない、ということが起こり得る訳です。
著作者は、実際、著作物を創作した人であるわけですが、社会上、会社等法人が著作者となったほうが良い場合が考えられます。そのため、著作権法上、一定の条件を満たすと会社などの法人が著作者になります。
その条件とは、「法人の発意に基づき、その法人の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、作成時の契約、就業規則等に別段の定めがない場合」でかつ、「その著作物を公表する場合、法人等の名義で公表されるものであること(プログラム著作は除く)」です。この条件を満たすと、会社等法人が著作者となります。
新聞などが、法人が著作者になる良い例ですね。
次回から、著作者の権利について見ていきます。
少しだけ触れさせてください。
著作者の権利には大きく分けて二つあります。
著作者人格権と、著作(財産)権です。
勝手に公表されない、勝手に改変されないなど、著作者の精神(心)を守るのが著作者人格権。勝手に複製されない、勝手に頒布されないなど、財産的権利を守るのが著作(財産)権です。私たちが日頃言う著作権は、この内、著作(財産)権の方を指しています。複製権、上映権などがそれですよね。
さて、次回は著作者人格権から見ていきたいと思っています。。
(*2004年9月27日)
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第4回目 著作者の権利〜著作者人格権
思想又は感情を創作的に表現した「著作物」を創作した人―「著作者」には、著作物を創作した時点で、著作者の権利が自動的に付与されます。著作権は特許等と違い権利を得るのに何の手続も必要ないのです(「無方式主義」)。
さて、前回の最後に少し触れましたが、著作者の権利には、大きき分けて、二つあります。
「著作者人格権」と財産権としての「著作権(著作財産権)」です。
この内、今回は、「著作者人格権」について見ていきます。
冒頭にもありますが、著作物を創作した時点で、著作者には権利が付与されます。その権利の取得には何の手続も必要ありませんので、自動的に著作者には著作権とそして、今回の著作者人格権を持つことになります。
著作者人格権は、著作者の心、精神的に傷つけられないようにするための権利であり、著作物の創作者としての感情を守るものであるため、財産権である著作権と違い、著作者人格権の譲渡はできません(著作者人格権は一身専属権)。
そして、そういう性質上、著作者人格権は著作者の死亡により消滅します(ただし、著作者の死後においても、生存していたなら著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないことになっています。著作権法60条 但し書き例外規定あり)。
著作者人格権は、著作者の心を守る権利だと言いました、それでは、実際どういった権利があるのでしょうか?
著作者人格権には、次の三つがあります。
@公表権
著作者に無断で公表されない権利です。
一度、公表されたものについては働かない権利ですが、いまだ未公表の著作物を公表するかどうか、いつどういった方法で公表するかどうかを、著作者は決めることができます。
ということは、著作者に無断でその未公表の著作物を公表した人は、罰則の対象になり、また、損害賠償等の責任を負うことになります。
ただし、未公表の著作物でも著作(財産)権を譲渡した場合、美術または写真の著作物(未公表)を譲渡した場合は、著作物の公表に同意したものと推定されます。(推定ということは、反証があれば覆ることもありえます)
著作物を創ったが、公表したくない、時期を選んで公表したいなどの精神的状態を保護するのが、公表権です。
A氏名表示権
著作物を公衆に提供提示するときに、著作者の氏名を表示するかどうか、また、どういった名前で表示するか決めることができる権利です。
ということは、氏名を表示しないで公表してくれと言ったのに、氏名を公表された場合、実名でなくペンネームの方で公表してくれと言ったのに、実名で公表された場合はこの氏名表示権侵害になります。
ただ、公表された著作物にすでに一定の著作者名が表示されているときは、その後の利用の際にその表示どおり表示できることになっています。
また、著作者名の表示は、著作者の利用の目的及び形態に照らして、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略できること(著作権法19条3項)になっています。お店で流れているバックグランドミュージックなどがこの例です。
B同一性保持権
著作者の意に反して、著作物の内容や題号などを勝手に改変されない権利です。
脱字の修正、生徒の発達状態に合わせた用字用語の修正、使用上必要なプログラムのバージョンアップなど、著作物の性質や利用目的等に照らして、やむを得ない場合は無断の改変が許されます。ただし、あくまで例外で、基本的に勝手に改変することは許されません。
無断で小説の一部カット、絵画を勝手に修正する、題名を勝手に変更するなどの行為は同一性保持権侵害になります。
以上三つが、著作者の精神をまもるための著作者人格権の内容です。
著作権は小学生にももちろんあります。せっかく書いた絵が下手だからと言って別の人が勝手に書き換えたりすると・・・同一性保持権侵害にあたることになり、そして・・・・。
恐ろしいことに、普段何気なくしていることが著作権法上違反していることになることがあるのです。
さて、最後に、財産権である著作権は譲渡することが可能です。しかし、著作者人格権は譲渡できません。ということは、著作権を持っている人と契約を結ぶとき、場合によってはその人は著作者人格権を持っていないことも考えられるわけです。著作権を持っているから、著作者人格権もその人にあると思ったら間違いなのです。そして、著作権を譲渡されたとしても、著作者人格権まで譲渡されるわけではありません。ということは、例え著作権があっても、著作者人格権がない以上、勝手に改変などした場合、同一性保持権侵害になるわけで・・・。
契約を結ぶ場合、著作者人格権をどうするか、重要です。
(*2004年10月1日)
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第5回目 著作権と無断で利用できる例外(1)
今回は、著作権(財産権)で最も身近で有名な「複製権」についてと、著作権法で定められている「無断で複製できる例外」の内、最たるものをピックアップして見ていきたいと思います。
著作物を創作した著作者には、著作者の権利というものがあります。
著作者人格権と、著作権(財産権)です。
この内、著作者人格権は、無断で公表されない「公表権」、どういった名前で公表するか決めれる「氏名表示権」、勝手に改変されない「同一性保持権」とがあり、これらは著作物を創作した著作者に与えられ、著作者の心を守るものであるため、譲渡することができません。
これから見ていく、著作権―財産権である著作権は、財産権であるため、譲渡可能です。したがって、著作者=著作権を持っている、とは限らず、著作権は別の人が持っている可能性もあるわけです。許諾を得る場合は、この辺りを確認する必要がでてきます。
さて、著作権(著作財産権―これからは、著作権でいきます)には、複製権・上演権などいくつかの種類があります。(それら一つ一つを支分権と呼んでいます)。その複製権などの支分権の集合体が著作権であるため、著作権は「権利の束」とも呼ばれています。
著作権の内容は、著作権法で定められています。
この内、今回は「複製権」についてです。
複製権とは、無断で複製されない権利で、複製権を持っている者に無断で複製したらいけないというものです。
複製とは、コピー…「形のある物に再製」することで、録画、録音、写真撮影、複写、印刷、ハードディスクやサーバーへの蓄積、はたまた手書きなど、形のある物へと再製(コピー)されれば、すべて複製に該当します。
身近なものでは、テレビのビデオ録画、CD音楽の録音、文書の複写、漫画などを真似て書く、講演会の演説を録音する、などがあるでしょうか。とにかく、他人の物(著作物)を複製(コピー)することには、大部分、この複製権が関わってきます。先ほどいいましたように、コピーされる形は手書きなど、どんなものでもいいわけです。全部だけでなく、一部でも、また多少修正等されていても、複製にあたるわけです。
そして、複製権は、勝手に無断で複製されない権利です。つまり、テレビのビデオ録画や、音楽の録音、本等のコピーだけでなく、講演会の講演や、授業など(これも著作物)を録音する場合も、原則、講演する者、先生の許諾が必要になるわけです。
しかし、私たちは、複製権を持っている人に無断でコピーすることがあります。大丈夫なのでしょうか?
本来なら、複製権侵害に当たり、賠償請求や罰則の対象になるわけですが、著作権法には、無断で複製できる例外が定めれており、その条件に該当する範囲では、複製権保持者に無断でも、コピーできるわけです。
その中で、最も有名なのが、「私的目的の複製」です。
著作権法30条には、「著作者の目的となっている著作物は、個人的に又は家族内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的(私的目的)とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる」とあります。
日頃何気なく、私的目的の複製といってることが多いですが、この私的目的ということを厳格に考える必要があります。私的目的なわけですから、売るため(販売目的)、渡すため(頒布目的)、仕事で使うためなどは、駄目です。個人的に、または家庭内など限られた範囲で使用する場合に限り、この私的目的の複製ができるわけです。
30条には、「次に掲げる場合を除き」とあります。
これにより、誰でも使える状態で設置しているダビング機(コンビニ等の文書複写のコピー機は現在除かれている)を使って複製する場合、コピープロテクションを解除して複製する場合は、著作権法違反になります。
また、政令で定められているデジタル機器(DVD−RW方式DVDレコーダーなど)を用いる場合には、著作権者に「補償金」を支払わなくてはいけません。(ただ、これらの「補償金」は販売価格であらかじめ上乗せされているので、利用者は支払う必要はありません)
軽く考えがちの「私的目的の複製」ですが、きちんと考えないと、知らないうちに著作権法違反になる場合があります。私的目的を逸脱したら駄目なので、コピーするときには、注意が必要です。
もちろん、複製権を持っている著作権者に、コピーしてもいいよ、とお許しを得ている場合は、大丈夫ですが。
著作権の中心ともいえる複製権。私的目的の複製以外にも、著作権者に無断での複製が認められている例外は、他にもありますが、それは次回以降に・・・。
ちなみに、著作権の保護期間は、原則、著作者が著作物を創作したときから始まり、著作者の死後50年で消滅(著作者が無名又は団体の場合は、公表後50年、映画の著作物は公表後70年)します。
(*2004年10月20日)
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第6回目 著作権と無断で利用できる例外(2)
今回は、著作権(財産権)の内、「上演権」「上映権」、「口述権」と無断で利用できる例外の一部のお話です。
著作者の権利には、勝手に改変されないなど著作者の心を守る「著作者人格権」と、財産的利益を守る「著作(財産)権」があります。
著作権の内、「複製権」に関しては前回見ていきましたので、今回は、まず、
「上演権・演奏権」です。
法22条 上演権及び演奏権として、「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という)上演し、又は演奏する権利を専有する。」とあります。
著作者は、作成した脚本で演劇等を公に上演したり、作成した音楽を公に演奏する権利を専有―無断で利用されない権利を持っています。
例えば、作曲家に無断で、その曲を公に演奏することは駄目だ、ということですね。勝手に小説、脚本等の演劇を勝手にするのも駄目だ、ということです。
権利を持つ著作者は、無断で上演、演奏されない権利を持っているわけです。
22条の中に「公衆」とありますが、これは不特定の者、特定多数の者のことで、このことから、特定少数、お母さんが子供に歌を聞かす(演奏ー歌唱も含みます)ことは、著作権法に違反しないことになります。
この、上演・演奏には、CDやDVDなど「録音・録画物を再生すること」や、その上演・演奏をスピーカーやディスプレイなどの電気通信設備を用いて伝達することも含まれています。
ということなので、お店の中で、BGMとして音楽を流すことは、著作権法上に違反することになります。(特にお店などは商業目的のために音楽等を流すことになるので、無断で利用できる例外―営利を目的としない上演等に該当しません)
上映権は法22条の2「著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。」とあります。権利者に無断で上映できない権利ですが、上映は著作物を映写幕その他の物に映写することをいい、動画・静止画を問いません。また、映写することをいうので、現物を直接みせる、例えば絵画を直接見せると言う場合は、この上映権にはあたりません。
パソコンでダウンロードした映画等をディスプレイ上で、公に見せる―例えば友達に見せることは、この上映に当たり、上映権が働きます。
口述権は法24条にあります。「著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。」無断で勝手に口述されない権利のことです。
そして、口述とは、朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものは除く)で、例えば、詩や小説の一部を、公衆の前で朗読することが、この口述にあたり、口述権が働きます。CDなどの口述の録音物を公に再製する場合も口述権が働きます。
無断で利用できる例外の内、今回は、上演・演奏権、上映権、口述権に影響する「営利を目的としない上演等」です。
法38条1項「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、または口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映、口述について実演家または口述を行う者に対して報酬を支払われる場合は、この限りではない。」
権利者に無断で上映等は基本的にできませんが、次の要件、@営利を目的としない A聴衆等客から料金を受けない B上演、演奏を行う実演家、演奏者に報酬を払わない(交通費等の実費は許されるとされています) 場合は、例外的に、権利者に無断で上演等できます。
例としては、文化祭の演劇、演奏がこれにあたります。ただ、料金等を取らない場合です。無料の演劇等でも、演劇者に報酬を支払う場合は、この条文に該当しないので、権利者に無断で行えません。
文化祭で、適法にビデオを借りてきて上映することも、お客からお金を取らない場合は、38条1項により、著作権に反しません。だけど、テレビのをダビングした物を上映した場合は、例え無料でも、複製権侵害(私的目的の複製にあたらない)になりますので、違法になります。
先ほども触れましたが、スーパーなどのお店が、BGMとして曲等を流す場合は、上の要件の@営利を目的としない に反しますので、権利者に無断で勝手に流した場合は、著作権法上違反に該当します。音楽の著作物を管理する「LASRAC(ジャスラック)」等から、使用許諾を得ましょう。
(*2004年11月10日)
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第7回目 著作権と無断で利用できる例外(3)
今回も引き続き、著作権と、著作権者に無断で利用できる例外に関してのお話です。
今回の、著作権―支分権(著作権の中での複製権や上映権などの一つ一つの権利のこと)は、著作権法23条「公衆送信権等」です。
まず、「公衆送信」とは、「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう(例外あり)」と法2条1項7号にあります。ぱっと見た目では、わかりづらいですが、身近な所では、テレビ、ラジオなどの放送・有線放送のことだと思ってくれればいいと思います。
さて、著作権法23条は「著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む)を行う権利を有する」と規定されています。
今までの著作権と同じく、著作権者に無断で、当該著作物を公衆送信等してはいけない、ということですね。最近描いた絵画を放送しようとする場合には、その絵画の著作者に許諾をもらっておく必要がでてきます。
23条には( )の中で自動公衆送信・送信可能化という用語がでてきますが、これが今回の目玉というべき事柄です。用語の意義はそれぞれ著作権法2条に規定されていますが、省かせていただきまして、どういうものか身近な例でいいますと、インターネットです。インターネットのホームページ(HP)がまさしくこれに該当します。
私たちが見たいHPにアクセスしたら、自動的にそのHPが私たちの手元(パソコン等)に送信されてきます。これこそ、公衆の求めに応じ自動的に行う「自動公衆送信」のことで、更に「送信可能化」―受信者からのアクセスがあり次第『送信』され得る状態に置くこと―つまり、作成したHPをみんなに見てもらうために、サーバーにアップロードした段階でも、著作権が関わってくるわけです。
ということは、例えば、HPに他人の写真を掲載したとしましょう。まず、勝手に複製したということで複製権侵害にもあたりますが、HPとしてみんなに見てもらうようにしたということで、今回の「公衆送信権等(送信可能化含む)」にも侵害していることになってしまいます。この「公衆送信権等」には、例外規定―無断で公衆送信してもいいという規定はほとんどありません(一般的に使われるものとしては「引用」ぐらい)。HPとしてみんなに見られる状態にすれば、著作権侵害に関わってきますので、他人の著作物を使うときは、必ず注意しましょう。
さて、無断で利用できる例外規定は、「引用」に関してです。
他人の文章等の著作物を、自分の創作する文章等の著作物の中に取り入れて使う場合を引用といいます。この「引用」に当たる場合は、著作権者に無断で利用できるわけですが、「引用」といえるためには、次の条件に合致している必要があります。
条件
@既に公表されている著作物であること
A「公正な慣行」に合致すること
B報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること
C引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
Dカギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
E引用を行う「必然性」があること
このすべてに合致していなければなりません。ということは、引用する部分がその著作物の中心(主)になっている場合は、Cにより駄目。引用の必要性が全くないのに使っている場合は、BEにより駄目、という考えができますね。
ただし、この「引用」といえるのなら、HPの中で利用することも可能(公衆送信権等に違反しない)なので、うまく利用しましょう。
最後に「引用」する場合は、引用した部分の「出所の明示」が必要です。
例:「引用部分」(著者名・著作物名)
(*2004年11月30日)
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第8回目 著作権と無断で利用できる例外(4)
今回は、美術、写真の著作物に関係する「展示権」とその例外を中心に見ていこうと思います。
早速ですが、「展示権」は著作権法25条にあります。
「著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する」
いつものように、「展示権」を簡単に言うと、著作権者に無断で勝手に展示されない権利、ということになります。
さて、この法25条をじっくり見ていきますと・・・・
「展示権」の対象となる著作物は、美術の著作物と写真の著作物で、それらの原作品と限定されています。さらに写真の著作物に関しては、未発行という条件がついています。原作品とは、美術の著作物は、画家が描いた絵そのもの、写真の著作物に関しては、ネガから印画紙にプリントされたもの、をいいます。
ということは、絵画の複製物に関しては、原作品でないことから、この「展示権」に関係しませんし、発行された(相当部数の複製物が、許諾をえて作成され、頒布されたこと)写真の著作物も、この「展示権」を認めないことになります。(写真の著作物の方にだけ未発行とあるのは、原作品とその複製物の区別が困難であることから。)
更に法25条を読み進めますと、公に―公衆に直接見せ、聞かせることを目的として―とあることから、公にあたらない、例えば、自宅での応接間等の展示・陳列は、この展示権がおよばないことになります。(自宅での展示でも、多数の人が見れる場合は、公に該当し、展示権が関わってくる可能性もあります。公衆とは、不特定又は特定多数のことを著作権法ではいいますので・・・)
以上のように、著作者は・・・著作権を持つ著作者は、無断で展示されない権利を持っています。
さて、この美術の著作物で特に重大なことなのですが、「所有権」と「著作権」は別のものであるということです。例えば、画家Aが自分の描いた絵をBという人に売りました。売買されたということで、通常、「所有権」は売主Aから買主Bに移りますが、「著作権」も「所有権」と同時にAからBに移るわけではないのです。ということは、著作権を持たないBは、展示会などを開いて、Aから買った絵を無断で展示することは、権利侵害にあたります(後で話しますが、例外規定があります)。つまり、Bは、Aから著作権の譲渡等を受けないと、展示等自由にその著作物である絵を利用できないことになります。
しかし、例外規定があります。
法45条に、美術、写真の著作物の原作品の所有者!は(また同意を得た者は)、その原作品を公に展示できる、ことになっているのです。ということは、著作権の譲渡を受けていなくても、所有者であれば、その原作品の著作物を自由に展示できることになります。(ただし、45条2項で、街路・公園、ビルの外壁など一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置する場合でないこと、という条件があります)つまり、上記Bは、自由に展示会を開いて、展示することができるのです。
法45条以外の美術関係で、著作者に無断で利用できる例外を見ておこうと思います。
法46条「美術の著作物でその原作品が45条2項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
<次に掲げる場合>
1.彫刻を複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
2.建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
3.前条(45条)2項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
4.専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合 」
*公園等に置かれている銅像など、自由に見れることができる建築物や美術の著作物は、自由に写真を取ったり、放送できます。が、彫刻の複製、販売目的での複製など<次に掲げる場合>に当てはまるときは、著作権者の許諾が必要になります。
法47条「美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第25条に規定する権利(展示権のこと)を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。」
*展示会に訪れる人への、解説・紹介のための小冊子の中に、美術等の著作物を掲載することができます。したがって、この法の条件に該当しない、例えば、販売用のはがきへの掲載、写真集として販売するための掲載は、この47条に該当せず、著作権者の許諾が必要になります。
今回は、美術の著作物関係についての権利を見ていきました。最後にちょっとした問題です。
美術の原作品の複製物をギャラリーで展示するときは、著作権者の許諾がいるかどうか。
許諾は必要ありません。25条展示権、美術の著作物の原作品
(*2004年12月15日)
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第9回目 著作権と無断で利用できる例外(5)
今回は、映画の著作物に関係する「頒布権」についてです。
映画の著作物は、劇場用上映用映画だけでなく、CM、ドラマ、アニメ、ホームビデオ等、録画されている動く影像(動画)も、含まれています。TVゲームの動画(影像部分)も映画の著作物に含まれているとされています。
さて、映画の著作物の権利として、「頒布権」があります。
著作権法26条
「1項 著作者は、その映画の著作物をその複製物による頒布する権利を専有する。
2項 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。」
法2条1項19号
「頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあっては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。」
映画の著作物を、有償であるか無償であるか問わず、公衆(不特定、特定多数)向けに、「譲渡」「貸与」するには、著作権者の許諾が必要になります。
また、公衆向けの提示(上映)を目的とする場合には、特定少数でも、「頒布」に該当します。ということは、公衆向けの上映を目的としている中では、必ず「頒布」になり、頒布権が関係することになります。
さて、この「頒布権」に関して、DVDソフト等の中古販売に関して問題になりました。次回予定の「譲渡権」では「いったん適法に譲渡されたもの」に関しては権利がなくなる、という規定がありますが、この「頒布権」にはこういう規定はありません。ということは、本や音楽CDなどは「頒布権」でなく「譲渡権」が関わりますので、適法に譲渡されたものはそれ以降譲渡権の権利が影響しませんので、中古販売するのも可能ですが、映画の著作物の複製物であるDVDソフト等は、「頒布権」が関わってきますが、26条条文をみてもらってもわかりますように、「いったん適法に譲渡されたもの」に関しての規定がありません。ということで、そのまま解釈したら、「頒布権」はずっと影響することになりますので、中古として売ったりすること(譲渡)は、勝手にできないことになります。しかし、最高裁の判例(ここでは中古ゲーム販売について争われました)で、「公衆に提示(上映)することを目的としていない映画の著作物(DVDソフトなど)については、いったん適法に譲渡されると、「頒布権」の譲渡に関しての権利は消滅する」という判断が示されました。というわけで、DVDソフト等の中古販売も認められていることになっています。
また、「頒布権」は原則映画の著作物に関して認められる権利ですが、26条2項により、映画の著作物に関係する、原著作物の小説や脚本、使用されている音楽や美術品等の著作物は、当該映画の頒布に当たって、同様に頒布権が関わってくることになります。つまり、映画の著作物を頒布するときには、その映画に含まれている音楽や美術などのの著作権者にも許諾を得る必要がでてくるわけです。
今回の無断で利用できる例外は、以前第6回目の「営利を目的としない上映等」の続きで、以前は38条1項のことでした。38条には、他にも条文が続きますので、それに関して簡単に見ておきます。
38条2項 非営利・無料(聴衆・観衆から一切の対価を徴収しない)の場合の放送番組の有線放送。
「難視聴解消」や「共用アンテナからマンション内への配信」など放送を受信して直ちに有線放送する場合の例外です。
38条3項 非営利、無料の場合の「放送番組等の伝達」。
食堂、喫茶店などに置かれているテレビなどの受信機を用いて、放送・有線放送される著作物を「公に伝達する」場合の例外です。
(*23条2項「公の伝達権」著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。)
38条4項 非営利、無料の場合の本などの貸与(映画の著作物除く)
図書館等における本などの貸し出しなどの例外です。ビデオの貸し出しには該当しません。
38条5項 非営利、無料で著作権者に相当な補償金を支払う場合のビデオなどの貸与
政令で定められている視聴覚教室施設、公共図書館などによるビデオなどの貸し出しの例外です。
次回は、「譲渡権」、「貸与権」について見ていきたいと思っています。
(*2005年1月25日)
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第10回目 著作権と無断で利用できる例外(6)
思想又は感情を創作的に表現した一定の範囲の著作物の創作者である著作者には、著作権法上、創作された時点で著作権―著作者の権利が発生します。
一つは、勝手に公表されない、勝手に改変されない等、著作者の心を守る「著作者人格権」と、譲渡可能な財産的利益を守る「著作(財産)権」です。
さて、今回も、「著作(財産)権」の内、「譲渡権」「貸与権」について、また、無断で利用できる例外では、法31条の図書館等における複製に関して、見ていこうと思います。
著作者は、その原作品又はその複製物に関して(映画の著作物は除く)、譲渡により公衆に提供する権利を専有(つまり、著作権者に無断で勝手に譲渡できない)する、「譲渡権」を持っています。
この「譲渡権」は、平成11年改正により、主に、海賊版対策(海賊版の転売)を阻止するために創設された権利で、そのため、いくつかの制限があります。
まず第一に、「いったん適法に譲渡されたもの」については、権利がなくなります(権利の消尽)。例えば、適法に店頭で売られている本やCDなどを買った場合、その後譲渡権は消えていますから、その本などを転売しても構いません。よくあることの、中古屋に本やCDなどを売っても問題ないということです。
反対に、適法に譲渡されたものでないもの、例えば、海賊版の場合は、譲渡権は消えていませんので、その著作物を転売等したら、違反になります。それに関連する条文として103条、国内で頒布する目的をもって、著作権等を侵害する物を輸入する行為、また、著作権等を侵害することを知って、頒布し、頒布するために所持する行為は、著作権等を侵害する行為とみなされます。
第2として、譲渡権が働くのは、「公衆に対して」なので、公衆に当たらない、特定少数、例えば、個人的に家族にプレゼントするような場合は、譲渡権が働きません。
第3として、文化庁長官の裁定等を受け、公衆に譲渡される場合、また、外国において譲渡権に相当する権利を害することなく譲渡される場合(国際消尽)も、譲渡権が働きません。
また、適法に譲渡されたものでない著作物の原作品やその複製物を他人に譲渡する行為であっても、適法に譲渡されたものでないことについて善意無過失(そのことを知らず、知らないことについて過失がない場合)である場合は、著作権侵害とされません。(法113条の2)
他に、著作権法で規定されている無断で利用できる例外で、例外的にコピーできる場合に、公衆への譲渡が当然に想定されているような場合、例えば、教員による教材のコピー、には譲渡についても例外として、無断でできることとされています。
ちなみに、映画の著作物を除く、とありますが、映画の著作物に関しては、譲渡権より強力な前回見た「頒布権」がありますので、こうなっています(次の「貸与権」も同じ)。
著作者は、その著作物又はその複製物に関して(映画の著作物を除く)、貸与により公衆に提供する権利を専有(つまり、著作権者に無断で勝手に貸し与えたりできない)する、「貸与権」を持っています。
この貸与権は特に、レンタル業の出現により、著作者等の利益が損なわれることから創設された権利で、最近の改正により、書籍や雑誌も含めた、映画の著作物以外の著作物に関して、働いてきます。
ただし、無断で利用できる例外にあたる「非営利・無料における貸与」の場合は、問題ありません。図書館がその良い例ですね。
さて、図書館が出てきたことで・・・
今回の無断で利用できる例外は、法31条「図書館等における複製」です。
法31条をそのまま見てみましょう。
「図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(図書館等)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(図書館資料)を用いて著作物を複製できる。
一 図書館等に利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個個の著作物にあっては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場合
二 図書館資料の保存のため必要がある場合
三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合 」
さて、この条文で注目すべきことは、まず第一に、政令で定める図書館等において、であることです。
つまり、政令で定める図書館―国立図書館又は公共図書館、大学の図書館など―以外の図書館は、この31条における複製が認められません。例えば、小・中学校の図書館(図書室)、会社の図書室などは認められません。
次に、利用者の求めに応じての複製(いわゆるコピーサービス)においては、利用者の調査研究に供するためであること、公表された原則一部分であること、利用者1人つき一部であること、などが注意すべきことです。
また、31条 三 の絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難、については、高価なため購入できないや、外国物であるため入手が難しいなどの理由は当てはまらないことに、注意すべきです。
どちらにせよ、営利目的(用紙代等実費を徴収することは構いませんが)としての複製は認められません。
それは、他の無断で利用できる例外にも言えることです。
(*2005年2月18日)
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第11回目 著作権と無断で利用できる例外(7)
しばらくぶりなので、復習です。
思想または感情を創作的に表現したもの(一定の範囲に属するもの)を著作物といい、著作物を創作した著作者には、著作権法上、著作者の権利が創作した時点で発生します。
著作者の権利には、譲渡できない著作者の心を守る、公表権・氏名表示権・同一性保持権の「著作者人格権」と、譲渡可能な「著作(財産)権」(←一般的に著作権と呼ばれているもの)にわかれます。
基本的に、著作権に該当するものを利用(複製・公衆に譲渡など)する場合は、著作権者(著作権を持っている者)の許諾が必要になります。しかし、それでは、著作権法の目的でもある、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、以下略、もって文化の発展に寄与する」、という趣旨に反することになりかねません。というわけで、一定の場合は、例外的に著作権を制限し、著作権者の許諾なく、利用できる場合が規定されています。
復習がてら、事例を挙げてみたいと思います。
簡単に、小説を作成したとしましょう。小説を書き上げた(創作)した時点で、小説の作者には、その小説という著作物に対する著作者の権利が、何の手続きなく(無方式主義)、発生します。
ということで、他の人が、その小説を複製また、ホームページなどに載せたりする場合には、作者の承諾が必要になってきます。もし、許諾なく、複製したり、ホームページに掲載したりすると、複製権違反、公衆送信権(送信可能化権)等の違反により、罰則、また損害賠償の対象になったりします。ただ、個人的に読む範囲で、その小説を複製するのは、私的目的の複製という、著作物を無断で利用できる例外にあたり、特に作者の承諾は必要ありません。
さて、この小説は面白い!ということで、その小説の翻訳や、映画化などをしようと思いました。
ここが、今回の本題です。
小説の翻訳や映画化を著作者の許諾なく、勝手にはできないことに、著作権法上なっています。
いわゆる「二次的著作物の創作権」というもので、著作権法27条では、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、または脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」とあり、既存の著作物に新たな創作行為を加えて作成する二次的著作をするには、著作者の許諾が必要になります。例えば、先ほどのように、翻訳・映画化、その他、小説を脚本としたり、音楽をアレンジしたり、マンガ等でよくあることですが、同人誌として作成することも、この二次的著作物の創作として、それらの行為をするには、著作権者の許諾が必要になってくるわけです。
また、二次的著作物に関することで、原著作者には他の人が作成した二次的著作物に対する利用権も持つことになります。これは、著作権法28条に、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」というように規定されています。
つまり、既存の著作物に新たな創作行為を加えて創作した二次的著作物には、二次的著作物を創作した人に、著作者の権利が発生するのですが、その二次的著作物を利用する人は、その二次的著作物を創作した著作権者だけでなく、この28条により、もとの原著作者にも、許諾を得なければならなくなります。
例えば、小説が映画化されて、それをDVD化しようといますと、DVD化しようとする者は、映画の著作権者だけでなく、その映画の原作小説の著作権者にも、当該映画の複製の承諾を得なくてはならないことになります。
この「二次的著作物の利用権」は、原著作者に無許可で作成された二次的著作物にも、もちろん影響します。
次に、著作権者に許諾を得ていなくても、無断で利用できる例外についてです。
前回までに幾つか出ていますが、それ以外にもまだ何種類かありますので、簡単にさらっと見ておきましょう。
・教科書への掲載(33条) 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度で、教科用図書に掲載することができます。ただし、掲載する者は、掲載したことを著作者に知らせ、また著作権者に補償金を支払う必要があります。
・拡大教科書作成のための複製(33条2)
・学校教育番組の放送など(34条) 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、著作物を学校向け「放送番組」「優先放送番組」の中で放送することができます。また、その著作物を学校番組用の教材に掲載することもできるようになっています。ただし、この利用をする者は、その旨を著作者に通知し、また著作権者に補償金を支払わなくてはいけません。
・学校その他教育機関における複製(35条) 学校その他教育機関(営利を目的としない)で、教員や授業を受ける者は、その授業の過程で利用するために必要と認められる限度において、著作者の利益に不当に害することのない範囲で、公表された著作物を複製することができます。
・試験問題としての複製(36条) 公表された著作物は、入学試験などにおいて認められる範囲で、当該試験問題として複製可能です。営利目的の場合は、補償金を支払わなくてはなりません。
福祉関係
・点字による複製(37条) 公表された著作物は、点字により複製することができます。
・聴覚障害者のための自動公衆送信(37条の2)
・時事問題に関する論説の転載等(39条) 新聞、雑誌に掲載されて発行された政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するもを除く)は、他の新聞、雑誌に転載、または放送できます。(転載等禁止の表示がないこと)
・政治上の演説等の利用(40条)
・時事の事件の報道ための利用(41条) 写真、映画、放送その他の方法によって時事の事件を報道する場合には、その事件の対象となっている著作物を、報道の目的上正当な範囲内において、利用できます。
・裁判手続等における複製(42条)
・情報公開法等による開示のための利用(42条の2)
・翻訳、翻案等による利用(43条)
・放送事業者による一時固定(44条)
・プログラムの著作物の副生物の所有者による複製(47条の2) プログラムの所有者は、プログラムを利用するために必要な限度内で、プログラムを複製、翻案できます。プログラムのバックアップコピー、バージョンアップのための規定です。
以上、前回までになかった、例外規定について簡単ですが、見ておきました。
今回のポイントは、二次的著作物を創作する、または利用するには、原著作者の許諾が必要になってくるというところです。
では、また次回で・・・。。。
(*2005年5月20日)
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第12回目 お話!?です
前回までで、一通り「著作権」についてのお話が終わりましたので(著作隣接権についてはまた後々の回で)、今回は、気楽(ではないかもしれませんが)に著作権について見てみましょう。
大体の法律に、その法律を考えるにあたっての指針のようなもの―目的というのが、その法律の冒頭にあります。
著作権法にも、第1条にその目的が規定されています。
「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」
これが、著作権法の条文を考えるにあたっての指針になります。
例えば、条文の解釈に疑義があったとき、この目的を指針として、その条文の解釈を考えることになります。
さて、著作権といっても、どういった場合に著作権が付与されるのか、また、どういった場合が著作権の侵害にあたるのかが重要な点でして・・・。これらを考えないと、著作権という権利も単なる机上のものになってしまいかねません。
さてさて、どういった場合に著作権が付与されるか?ですが、簡単に言いますと、著作物等を創作した時点で付与されることになります。特許、商標のような登録を必要とせず、著作物等を創作した時点で著作権は発生するわけです。つまり、なんら登録等必要とせず、作成した時点、実は、私のここの文章も、こうやって書いてる時点で著作権が発生していることになります。
さて、次の問題、どういった場合が著作権の侵害にあたるか、ですが、順序で考えてみましょう。
まず、最初にそのモノに著作物性があるかどうかが考えてみないといけません。
著作物の定義である「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に当てはまらなければ、そもそも著作物でないことになるので、著作権は発生しないことになります。
つまり、著作権の侵害ということも起きません。
著作物であるかどうかの判断は最終的に裁判所が決めることになります。まあ、この著作物の定義に当てはまらないものは、著作物でないことになりますが・・・実際の判断は、具体的事例を考えてみないと難しいですね。ただ、単なる模倣は、創作性、作成者の思想感情のオリジナリティがないので、著作物とはいえません。
次に、その著作者は誰か、そして、著作権者は誰かを考える必要があります。
著作者と著作権者と分けているのは、理由がありまして、
ここで、著作者とは、著作物を創作した者、著作権者とは、その著作権をもっている者、のことです。
分けている理由は、著作権(財産権)は、譲渡できるものであるからです。
つまり、実際の著作権を持っているのは、創作者でなく、権利の譲渡を受けた人ということもありえますので、一応わかりやすく、分けることにします。
著作物を作成したほうは、誰が著作者、また著作権者というのは普通わかっていますが(本人ですし)、知らない相手側からすると、誰が、著作者かまた、実際に権利をもっている著作権者は誰かはわからないことがあります。特に、著作物の侵害とならないように、利用許諾の契約をする場合にとても重要な点になります。
起こりそうなのが、本当の著作者ではない人と契約をする、著作者であるが著作権を持っていない人と著作権についての契約をする、です。
この場合、権利を持っていない人と契約をすることになり、実質上意味がありません。
実際は、著作者(著作権者)側に、自身が権利を持っていることを保証してもらうことになります。(そうしないと、怖くて契約できない!)
さて、最後に、どの権利に違反しているかを考えてみないといけません。
公表権侵害、同一性保持権侵害といった著作者人格権の侵害もありますし、複製権、また、公衆送信権といった著作権(財産権)の侵害かもしれません。ここで、考えるべきことに、自由に利用できる例外規定にあてはまるかどうかでしょう。複製権侵害!といっても、私的目的の複製なら例外的に許されるので侵害とはいえません。
・・・といったように、権利を主張する方、利用しようとする方は、以上のようなことを考えて、著作権というものを利用することになります。
あまり、気楽な内容ではなかったですね・・・。でも基本的なことです。
今回はこの程度で。さて、次回はどうしようかな?
次回もお楽しみに!・・・・・・?
(*2005年7月20日 )
第13回目 お話part2
誰もが知らないうちに、著作権と関わってます。
とにかく、日常には、著作権に関わる事柄が多数存在しています。知らないうちに、というより、著作権を意識しなくても、著作権が発生していたり、知らないうちに、というより、意識しないところで、著作権の侵害をしていたりすることも多々あることだろうと思います。
私も、著作権法をきちんと学ぶ前は、著作権という名前ぐらいしか知りませんでした。著作権がどういったものなのか、あまり良く分かっていなく、まあ、映画のビデオ等で、最後に、「この作品を勝手に複製などすると権利者に多大な損害を与えることになりますので、絶対にしないでください」というような画面が出てきますが、著作権についての認識は、その程度のものでしたね。
あと、私的目的での複製は許される、ことぐらいが、著作権についての知識だったと思います。
とにかく、あまり考えたこともなく、深く考えるものでもありませんでした。
その後、勉強等しまして、実感したことが、本当に著作権というものは、身近なもの―身近に多数あるんだなぁということです。
こういうホームページ自体、著作権がありますし、日常の、本や新聞、テレビ、はたまた、学校で作る絵画や、また、教科書、他に、建築の設計図や、建築物なども著作権というものが関わっています。
日常のほとんどに著作権に関わるものがあるわけでして・・・何か考えるとすごいなという気持ちになってきます。
これだけ日常に著作権に関わるものがあるということは、知らないうちに、誰もが著作権と関わっているわけで、知らないうちに、場合により著作権の侵害をしていることもあることになります。
日常の行為のあんなことやこんなことが、著作権法違反になっているのかもしれません。著作権法による著作権の侵害行為の罰則は、かなり重いので、気をつけましょう。。
気をつけるといっても、知らなければ自分で注意もできません。権利というものばかりに捕われるのはよくありませんが、知っておいて損はありません。
・・・義務教育の中で、著作権についての科目あってもいいじゃないか、と思うぐらい、とにかく著作権は身近です。
さてさて、日常のあんなことやこんなことが著作権を侵害するのだろうか?少しだけ、見てみましょう。
まずはじめに、よくあるビデオの録画。
録画の対象となる、テレビの番組は著作権があります。それを、ビデオという物に「複製」するわけで・・・。いちいち、権利者に断って録画する人はほぼいないと思いますので、無断での「複製」ということで、著作権に違反するんじゃないかということになります。が、皆さんご存知のとおり、「無断で利用できる例外」として、私的目的の複製、というのがあります。
ということで、「私的目的の範囲」での複製―ビデオの録画は、著作権法に違反しないことになります。
ここで注意すべきなのは、あくまで、「私的目的の範囲」だということです。
個人や家庭内などごく親しい中で楽しむために複製(録画等)するのはいいのですが、複製物を誰かにあげたり、売ったりするために複製したりしたら、アウトになります。その他、厳格に考えると違反になることがよくあるわけで、私的目的、という範囲をしっかり実感することが大切でしょう。
次に、最近持っている人が増えた、ホームページやブログの中で、他人のHP等の写真等を自分のHP内で無断で使う行為。
分かる人が多いと思いますが、この行為は違反しています。
自分のHP内、「私的目的」の複製で許されるのではないのか。と思う人もいるかもしれませんが、このHP等を公表しないのなら、自分が楽しむ範囲での複製ということで許されるのですが、HP等を公表しない人はまずいません。公表することになると、基本的に誰もが見れることになりますので、「自動公衆送信(送信可能化)権」が関わってきて、無断なら、その「送信可能化権等」を侵していることになります。無断で送信可能化や送信しても良い、という規定はありませんので、通常(引用等除く)、HPやブログで勝手に他人の写真等を使うと、著作権法違反に該当します。
この写真良いな、や、この絵使いたい!と思って、他の人の物を、自分のHP等に載せたりすると・・・・損害賠償、罰則等があるかもしれません。十分注意しましょう・・・。
上記二つの例は、前回までのお話の中でも出てきてることですが、よくありそうなことなので、もう一度ピックアップしました。
身近にある著作権。本当に身近にありますので、一度、意識してみるのもいいのかもしれませんね。それで、興味を持ったら、著作権法にぜひ触れてみてください。
(*2005年10月25日 )
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